次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日に3,200gの男児を経腟分娩で出産した。分娩時に会陰切開縫合術を受けた。児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後9点、5分後10点であった。分娩時の出血量200mL、分娩所要時間12時間30分であった。分娩室から病室に帰室する前に尿意を自覚したためトイレまで歩行し、排尿があった。
産褥2日、A さんは、体温37.2 ℃、脈拍76/分、血圧112/80 mmHg、子宮底を 臍下2横指に硬く触れ、悪露は赤褐色で少量。会陰縫合部の発赤なし、腫脹なし。 下肢の浮腫は認めない。乳房緊満があり、左右の乳頭に2本ずつ乳管が開通してお り、初乳がにじむ程度に分泌している。A さんは、看護師に会陰縫合部が痛くて 歩きにくいと話している。 A さんのアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
産褥2日、子宮底を臍下2横指に硬く触れ、悪露は赤褐色で少量、会陰縫合部に発赤と腫脹なし、下肢の浮腫なし、乳房緊満があり左右の乳頭に2本ずつ乳管が開通し初乳がにじむ程度に分泌している産婦のアセスメントを問う。乳房の変化は産褥日数相当である。
この問題で問われていること
産褥の日数ごとの正常な経過を覚えているか。
しくみから理解する
産褥2〜3日は、乳房が緊満し始め、乳管の開通が進み、初乳が分泌される時期になる。初乳は、黄色みを帯びた粘稠な乳汁で、免疫グロブリンAとラクトフェリン、そしてタンパク質に富む。量はまだ少なく、にじむ程度であることが正常になる。乳管の開通は、左右に数本ずつから始まり、授乳を重ねることで増えていく。したがって、この所見は産褥日数に相当する正常な変化になる。
選択肢ごとの確認
会陰縫合部の感染を起こしているとはいえない。発赤なし、腫脹なしと記されており、感染の所見はない。加えて、体温37.2℃は産褥期の生理的な範囲内になる(産褥1〜2日は、脱水と乳房の緊満により、38℃未満の一過性の体温上昇がみられることがある)。感染を疑うのは、38℃以上の発熱が2日以上続く場合、そして局所の発赤、腫脹、熱感、疼痛、膿性の分泌がある場合になる。
深部静脈血栓症の疑いもない。下肢の浮腫は認めないと記されている。疑う契機になるのは、片側性の下肢の腫脹、疼痛、熱感、発赤である。ホーマンズ徴候(足関節を背屈させたときの腓腹部の疼痛)は古くから知られるが、感度も特異度も低く、陰性であることを除外の根拠にしてはならない。診断は、臨床的確率の評価、必要に応じたDダイマー、超音波検査によって進める。
子宮復古が遅れているともいえない。産褥2日の子宮底の高さは、臍下1〜2横指が正常になる。硬く触れることは、子宮が良好に収縮していることを示す。悪露も、赤色から赤褐色へ移行し、量が減っており、経過どおりになる。復古が遅れている場合は、子宮底が高い位置にとどまり、柔らかく、悪露が多く、赤色が持続する。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも事例文に「所見なし」と明記されている事柄を、あるものとして述べている。事例文を丁寧に読めば消去できる。そのうえで、乳房の所見が産褥日数に相当するかを判断するには、産褥の経過の知識が必要になる。事例文の数値と所見を、正常な経過の基準と一つずつ照合する読み方が身につくと、この型の設問は確実になる。
理解を深める
産褥の経過を整理する。子宮底の高さ=①分娩直後=臍下2〜3横指、②産褥1日=臍高または臍下1横指、③産褥2日=臍下1〜2横指、④産褥3日=臍下2〜3横指、⑤産褥5日=臍と恥骨結合の中間、⑥産褥7日=恥骨結合上3横指、⑦産褥10日以降=腹壁から触れない。子宮は産褥6〜8週で妊娠前の大きさに戻る。悪露=①赤色悪露(産褥1〜3日。血液が主)、②褐色悪露(産褥4〜9日。赤褐色から褐色へ)、③黄色悪露(産褥10日〜3週。白血球が主)、④白色悪露(産褥3〜6週)。異常=量が多い、悪臭がある、赤色が持続する、凝血が続く。乳汁=①初乳(産褥1〜5日頃。黄色みを帯び粘稠。免疫グロブリンAとラクトフェリンに富む)、②移行乳(産褥5〜10日)、③成乳(産褥10日以降。白色でさらりとしている)。乳房の変化=産褥2〜3日に緊満が強まる。分泌が確立するまで、頻回の授乳と、正しい吸着が重要になる。体温=産褥1〜2日に38℃未満の一過性の上昇がみられることがある。38℃以上が2日以上続く場合は産褥熱を疑う。脈拍=徐脈傾向(50〜70)になることがあり、これは生理的な変化になる。その他=①後陣痛(子宮の収縮による痛み。経産婦と授乳時に強い)、②発汗(産褥期は発汗が多い)、③体重の減少、④排尿(膀胱の充満に注意)、⑤便秘、⑥マタニティブルーズ(産褥3〜10日頃に、涙もろさ、不安、いらだちが現れる一過性のもの。多くは2週間以内に軽快する。2週間を超えて続く、あるいは重い場合は産後うつ病を疑う)。
間違えやすい考え方
アセスメントを問う型で、誤肢が事例文に「なし」と書かれた所見である。正常な経過との照合で切る。
5分で振り返る
①産褥2〜3日は乳房が緊満し始め、乳管の開通が進み、初乳がにじむ程度に分泌される。正常な経過。②初乳は黄色みを帯びた粘稠な乳汁で、免疫グロブリンAとラクトフェリンに富む。③子宮底の高さ=分娩直後は臍下2〜3横指、産褥1日は臍高〜臍下1横指、産褥2日は臍下1〜2横指、産褥3日は臍下2〜3横指、産褥10日以降は触れない。④悪露=赤色(1〜3日)→褐色(4〜9日)→黄色(10日〜3週)→白色(3〜6週)。⑤産褥1〜2日に38℃未満の一過性の体温上昇がみられることがある。38℃以上が2日以上続けば産褥熱を疑う。⑥深部静脈血栓症を疑う契機は、片側性の下肢の腫脹、疼痛、熱感、発赤。ホーマンズ徴候は感度も特異度も低く、陰性でも除外できない。診断は臨床的確率の評価、Dダイマー、超音波検査で進める。⑦マタニティブルーズは産褥3〜10日頃の一過性のもので、2週間を超えれば産後うつ病を疑う。
1分チェック
- 産褥2日の乳房は。→ 緊満があり、初乳がにじむ程度で正常。
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