次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病〈depression〉と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。
看護師のA さんへの対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
「薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と相談してきた患者への対応を問う。薬を飲みたくない理由を尋ねることである。
この問題で問われていること
服薬の中断の背景を探る姿勢を持てるか。
しくみから理解する
服薬を拒む理由は一つではない。①副作用(眠気、体重の増加、性機能の障害、口渇、便秘、手のふるえ、だるさ)、②効いている実感がない、③飲むこと自体が「病気である」ことの確認となりつらい、④薬に頼りたくない、依存が心配、⑤飲み方が複雑、回数が多い、⑥費用、⑦周囲に知られたくない、⑧よくなったのでもう不要だと感じる、⑨医療者への不信、といった理由がありうる。理由によって対応はまったく異なるため、まず尋ねることが出発点になる。加えて、この患者は自ら相談を持ちかけており、正直に打ち明けてくれたこと自体を尊重する必要がある。
選択肢ごとの確認
薬を飲むことを約束してもらうことは適切でない。理由を確かめないまま約束させても、飲めない事情があれば守られず、次からは正直に話せなくなる。約束は、関係を取引に変えてしまう。
自己判断で薬をやめたことへの反省を促すことも適切でない。責められれば、正直に話したことを後悔し、以後は隠すようになる。服薬の中断は、多くの患者が経験することであり、責める対象ではなく、理解して支える対象になる。
薬の管理を妻にしてもらうよう勧めることも、この段階では適切でない。本人の意思を飛び越えて、管理する人を立てることは、①自己管理の力を育てない、②本人の主体性を損なう、③夫婦の関係に管理と被管理の構図を持ち込む、という問題を生む。必要になれば検討するが、まず本人の理由を聴くことが先になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①約束させる、②責める、③他者に管理させる、の3つになる。いずれも、本人の主体性を尊重せず、また理由を明らかにしていない。服薬支援の原則は、「なぜ飲めないのか」を一緒に探り、その理由に応じた解決策を、本人と共に考えることになる。飲ませることが目的ではなく、その人が治療を続けられることが目的になる。
理解を深める
服薬アドヒアランスを整理する。用語=①コンプライアンス(指示に従うこと。医療者が主体)、②アドヒアランス(本人が納得して治療に参加すること。本人が主体)、③コンコーダンス(本人と医療者が対等に話し合い、合意して決めること)。近年は、後者2つの考え方が重視される。中断の要因=①副作用、②効果の実感の乏しさ、③病識の乏しさ、④服薬の煩雑さ、⑤費用、⑥スティグマ(薬を飲むことへの否定的な感情、周囲の目)、⑦生活のリズムに合わない、⑧医療者との関係、⑨症状(意欲の低下、認知機能)。対応=①理由を聴く、②副作用を評価し、医師と共有して調整する(薬剤の変更、減量、対処法)、③効果を可視化する(症状の記録、本人が実感できる変化)、④飲み方を簡素にする(回数を減らす、一包化。なお持効性注射剤は抗精神病薬にあるもので、抗うつ薬にはないため、うつ病の薬物療法では選択肢にならない)、⑤本人が納得できる説明(なぜ必要か、いつまで、やめるとどうなるか)、⑥自己決定を尊重する(「飲まない」という選択も含めて話し合う。ただし、危険が大きい場合は、そのことも率直に伝える)、⑦生活に組み込む工夫(幼児等の手と目の届かない施錠場所または高所に保管し、歯磨きとの関連付け、アラーム、カレンダー等、薬へアクセスさせない方法を用いる)、⑧経済的な支援(自立支援医療により、精神科の通院医療費の自己負担が原則1割になる)、⑨再発の徴候と、そのときの対処を共有する。うつ病の薬物療法=①効果が現れるまで2〜4週間かかることを、あらかじめ伝える、②副作用は先に出て、効果は後から出るため、初期に中断しやすい、③症状が改善した後も、再発を防ぐため6か月以上の継続が推奨される、④自己判断で急に中止すると、中断症状(めまい、悪心、しびれ、不安、不眠)が現れることがある、⑤中止する場合も、医師と相談して段階的に減らす。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が約束させる・責める・他者に管理させるものである。理由を探る姿勢で切る。
5分で振り返る
①服薬を拒む理由は一つではない。副作用、効果の実感のなさ、病気であることの確認がつらい、依存への心配、飲み方の煩雑さ、費用、周囲の目、よくなったので不要と感じる、医療者への不信。②理由によって対応が異なるため、まず尋ねる。③自ら正直に相談してくれたこと自体を尊重する。④約束させても、飲めない事情があれば守られず、次から正直に話せなくなる。⑤責めれば隠すようになる。服薬の中断は多くの患者が経験することで、責める対象ではない。⑥家族に管理させることは、自己管理の力を育てず、主体性を損ない、夫婦に管理の構図を持ち込む。⑦うつ病の薬は効果が出るまで2〜4週間かかり、副作用が先に出るため初期に中断しやすい。⑧改善後も再発予防のため6か月以上の継続が推奨される。急な中止は中断症状を招く。
1分チェック
- 「薬を飲みたくない」には。→ まず理由を尋ねる。
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