次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(65歳、女性、要支援1)は1人暮らし。慢性心不全〈chronicheartfailure〉で定期的に外来受診していた。下肢の浮腫と息切れを自覚し、心不全の増悪があると診断されて入院となった。入院治療によって、両下肢に軽度の浮腫はあるが歩行による息切れは消失し、退院することになった。Aさんは退院後の生活について「近くのスーパーに歩いて買い物に行くのが楽しみですが、息切れが心配です。何に気をつけたらよいですか」と病棟看護師に話した。
退院後、心不全〈heart failure〉の 増悪を予防する目的で訪問看護を週に1回利用することになった。A さんは夕方に下肢の浮腫が悪化するのを気にしており、訪問看護師に助言 を求めた。 訪問看護師のA さんへの助言で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
夕方に下肢の浮腫が悪化するのを気にしている慢性心不全の65歳女性への助言を問う。「外出時は弾性ストッキングを履きましょう」である。
この問題で問われていること
重力による浮腫を減らす手立てを選べるか。
しくみから理解する
立位と座位が続くと、重力により下肢の静脈に血液がうっ滞し、毛細血管から水分が組織へ漏れ出て浮腫が強まる。夕方に悪化するのは、この機序による。弾性ストッキングは、足首側の圧を最も高く、中枢へ向かって段階的に低くすることで、静脈の還流を助け、うっ滞と浮腫を軽減する。外出時のように、立っている時間が長い場面でとくに有効になる。装着は、浮腫が最も少ない朝の起床時に行い、しわを作らず、折り返さない(折り返すと局所の圧が高くなり、かえって循環を妨げる)。
選択肢ごとの確認
「靴は大きめのサイズを選びましょう」は適切でない。大きすぎる靴は、足が中で動いて不安定になり、転倒を招く。浮腫があっても、足に合った、調整できる(面ファスナーや紐で幅を変えられる)靴を選ぶ。加えて、履き口が広く、脱ぎ履きしやすいものが望ましい。
「下肢の中枢から末梢にマッサージしましょう」も誤りになる。方向が逆になる。浮腫を軽減するマッサージは、末梢から中枢へ向かって、静脈とリンパの流れに沿って行う。中枢から末梢へ向かうと、うっ滞を強める。加えて、強く揉まず、優しくさするように行う。なお、心不全による浮腫では、マッサージにより静脈還流が急に増えると心臓の負担が増すため、実施の可否と方法は医師の指示を確認する。
「就寝時には湯たんぽを身体から2、3cm離して置きましょう」は適切でない。距離を広げれば就寝中も安全という扱いにはしない。低温熱傷は比較的低い温度でも長時間接触して生じ、浮腫・循環不良・感覚低下では危険が高い。使用するなら就寝前に寝具を温め、就寝時には取り出すことを基本とする。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①転倒を招く、②方向が逆、③熱傷を招く、の3つになる。浮腫のケアの原則は、①重力を利用する(挙上)、②静脈還流を助ける(弾性着衣、筋ポンプ作用を使う運動)、③皮膚を守る(保湿、保護、外傷と熱傷の予防)、④原因への対応(心不全の管理、塩分と水分、薬剤)になる。誤肢はいずれも、この原則から外れている。
理解を深める
浮腫のケアを整理する。原因=①心性(心不全。両側性、下腿と足背、圧痕を残す。夕方に悪化)、②腎性(低アルブミン血症、ナトリウムの貯留。眼瞼から始まることがある)、③肝性(低アルブミン血症、腹水)、④栄養性(低アルブミン血症)、⑤リンパ性(リンパ節郭清、放射線療法の後。片側性、圧痕を残しにくい)、⑥静脈性(深部静脈血栓症、静脈瘤。片側性のこともある)、⑦薬剤性(カルシウム拮抗薬、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイド薬)、⑧廃用(長時間の座位、不動)。観察=①部位と左右差、②程度(圧痕の深さと戻る時間)、③日内の変動、④体重、⑤皮膚の状態(乾燥、菲薄化、光沢、傷、感染)、⑥随伴する症状(息切れ、尿量、腹部の張り)。ケア=①下肢の挙上(心臓より高く。ただし心不全では、急に大量の静脈還流が増えると負担になるため、程度を医師と相談する)、②弾性ストッキング(朝、起床時に装着。しわと折り返しを作らない。動脈の血流障害がある場合は禁忌になりうるため、末梢の拍動を確認する)、③足関節の底背屈運動(筋ポンプ作用)、④長時間の同一姿勢を避ける、⑤皮膚のケア(保湿、清潔、外傷と熱傷の予防、爪の手入れ)、⑥塩分と水分の管理、⑦体重の測定、⑧薬剤(利尿薬。効果と、脱水・電解質異常の観察)。心不全による浮腫では、浮腫そのものへの対応と同時に、心不全の管理(塩分、水分、服薬、活動)が本質的な対応になる。
間違えやすい考え方
助言を問う型で、誤肢が転倒を招く・方向が逆・熱傷を招くものである。浮腫のケアの原則で切る。
5分で振り返る
①立位と座位が続くと、重力により下肢の静脈にうっ滞が生じ、夕方に浮腫が強まる。②弾性ストッキングは、足首側の圧を最も高く、中枢へ向かって段階的に低くして静脈還流を助ける。③装着は浮腫が最も少ない朝の起床時。しわを作らず、折り返さない(局所の圧が高まる)。④大きすぎる靴は足が中で動いて転倒を招く。足に合い、幅を調整できる靴を選ぶ。⑤マッサージは末梢から中枢へ。中枢から末梢では、うっ滞を強める。⑥浮腫・循環不良・感覚低下では低温熱傷を起こしやすい。湯たんぽは距離だけで安全とせず、就寝前に寝具を温め、就寝時には取り出すことを基本とする。⑦浮腫のケアの原則=挙上、静脈還流を助ける、皮膚を守る、原因への対応。⑧弾性ストッキングは、動脈の血流障害がある場合は禁忌になりうる。
1分チェック
- 夕方に強まる下肢の浮腫には。→ 弾性ストッキング(朝、起床時に装着)。
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