次の文を読み、問いに答えよ。午前9時頃、震度5強の地震が発生した。二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。
発災から3時間後、地震後に発生した火災現場付近から救出されたA 君(6歳) と母親のB さん(32 歳)の2人が搬送されてきた。A 君は避難時に転倒し、左肘関 節付近の腫脹と疼痛を訴えていた。バイタルサインに異常はない。B さんは避難す る際にA 君が煙に巻き込まれそうになるところをかばい、髪の一部と鼻毛の一部 が焦げていた。右頰部に2cm ×2cm、右上肢に5cm ×10 cm の紅斑と水疱を認 める熱傷〈burn〉 を負っていた。バイタルサインに異常はないが、熱傷〈burn〉部位の疼痛を訴えていた。 トリアージの結果、看護師の初期対応として優先されるのはどれか。
公式正答:3
解説
火災現場付近から救出された6歳男児(左肘関節付近の腫脹と疼痛)と、髪と鼻毛の一部が焦げ、顔面と上肢に紅斑と水疱を認める32歳女性について、看護師の初期対応で優先されるものを問う。女性の気道確保の準備である。
この問題で問われていること
気道熱傷を疑う所見を挙げられるか。
しくみから理解する
鼻毛が焦げていること、顔面の熱傷、そして火災現場からの救出という状況は、いずれも気道熱傷を強く疑わせる所見になる。気道熱傷では、熱と煙により気道の粘膜が傷害され、数時間のうちに浮腫が進行して、気道が閉塞する。いったん閉塞すると、挿管そのものが困難になり、救命できなくなる。したがって、現時点でバイタルサインに異常がなくても、気道の状態を繰り返し評価し、気道確保の器材と人員をすぐ使える状態にしておくことが最優先になる。ただし、鼻毛の焼失と小範囲の顔面熱傷だけで気管挿管の適応が決まるわけではない。早期の確実な気道確保を要するのは、嗄声、喘鳴、口腔咽頭のすす、深い顔面熱傷、広範囲熱傷、意識障害といった所見がある場合で、疑いと挿管の適応は区別する。
選択肢ごとの確認
男児の既往歴の聴取は必要だが、緊急性はない。バイタルサインに異常はなく、肘関節付近の腫脹と疼痛は、骨折または脱臼が疑われるものの、生命には直結しない。
男児への鎮痛薬の準備も、優先されない。疼痛の緩和は重要だが、生命の危険がある処置が先になる。
女性の熱傷部位の冷却も、必要な処置ではあるが、気道確保より優先されない。加えて、広範囲の冷却は低体温を招くため、範囲と時間を限って行う(一般に、成人では体表面積の10%を超える熱傷では、冷却は短時間にとどめる)。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「必要だが、いまではない」ものになる。判断の基準は、気道、呼吸、循環の順になる。この設問の鍵は、「髪の一部と鼻毛の一部が焦げていた」という記述であり、これが気道熱傷を示す典型的な所見になる。所見が事例文に置かれているときは、それが判断の根拠になる。
理解を深める
熱傷を整理する。気道熱傷を疑う所見=①顔面と頸部の熱傷、②鼻毛と眉毛の焼失、③口腔と鼻腔内のすすと発赤、④嗄声と嚥下痛、⑤咳嗽と喘鳴、⑥呼吸困難、⑦意識障害、⑧閉鎖空間での受傷、⑨煤を含む痰。対応=早期の気管挿管(浮腫が進むと挿管が困難になる)、酸素投与、一酸化炭素中毒の評価(経皮的酸素飽和度は正常値を示すため当てにならない。血液ガスで一酸化炭素ヘモグロビンを測る。高濃度酸素の投与)、シアン化物中毒の可能性。熱傷の深度=①Ⅰ度(表皮まで。発赤、疼痛。瘢痕を残さない)、②浅達性Ⅱ度(真皮浅層まで。水疱、強い疼痛、水疱底は赤色。瘢痕を残しにくい)、③深達性Ⅱ度(真皮深層まで。水疱、疼痛は鈍い、水疱底は白色。瘢痕を残す)、④Ⅲ度(皮膚全層。白色または褐色、乾燥、疼痛なし。植皮を要する)。範囲=9の法則(成人。頭部9%、上肢各9%、体幹前面18%、後面18%、下肢各18%、陰部1%)、5の法則(小児と乳児では、頭部の割合が大きい)、手掌法(本人の手掌が体表面積の約1%)。重症度=熱傷指数、熱傷予後指数、そしてアルツの基準。輸液=広範囲の熱傷では、受傷後の血管透過性の亢進により大量の体液が失われる。パークランドの公式(4mL×体重kg×熱傷面積%)により、最初の24時間の輸液量を計算し、うち半量を最初の8時間で投与する(受傷時刻から起算する)。看護=①気道、②輸液と尿量(時間尿0.5〜1mL/kgを目安)、③創の管理と感染の予防、④疼痛の管理、⑤体温の管理(体温を失いやすい)、⑥栄養(代謝が著しく亢進する)、⑦拘縮の予防と、リハビリテーション、⑧瘢痕への対応、⑨心理的な支援(外見の変化、受傷時の記憶)。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢が必要だが緊急でないものである。事例文の「鼻毛が焦げていた」で切る。
5分で振り返る
①鼻毛の焼失、顔面の熱傷、火災現場からの救出は、いずれも気道熱傷を疑わせる。②気道熱傷では、数時間のうちに浮腫が進行して気道が閉塞し、いったん閉塞すると挿管も困難になる。③バイタルサインが正常でも、気道の状態を繰り返し評価し、気道確保の器材と人員を整えておく。早期の確実な気道確保を要するのは、嗄声、喘鳴、口腔咽頭のすす、深い顔面熱傷、広範囲熱傷、意識障害がある場合で、疑いだけで挿管の適応が決まるわけではない。④気道熱傷を疑う所見=顔面と頸部の熱傷、鼻毛と眉毛の焼失、口腔内のすす、嗄声、喘鳴、閉鎖空間での受傷、煤を含む痰。⑤一酸化炭素中毒では、経皮的酸素飽和度が正常値を示すため当てにならない。血液ガスで測り、高濃度酸素を投与する。⑥熱傷の深度=Ⅰ度(発赤)、浅達性Ⅱ度(水疱、強い疼痛、水疱底は赤)、深達性Ⅱ度(水疱、疼痛は鈍い、水疱底は白)、Ⅲ度(白色または褐色、疼痛なし)。⑦広範囲の冷却は低体温を招く。⑧手掌法=本人の手掌が体表面積の約1%。
1分チェック
- 鼻毛が焦げている熱傷では。→ 気道熱傷を疑い、気道確保を準備する。
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