次の文を読み、問いに答えよ。午前9時頃、震度5強の地震が発生した。二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。
A 君とB さんはともに入院して治療が始まった。発災から10 日後、A 君、B さ んの治療経過は良好で合併症もなくバイタルサインは安定していた。B さんから看 護師に「A は好きなお菓子を食べず、私のそばからずっと離れず甘えてきます。昨 夜はおねしょをしていたようで、びっくりしました。どうしたらよいのかわかりま せん」と相談があった。 看護師の対応として適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
発災から10日後、好きな菓子を食べず、母親から離れず甘え、夜尿がみられる6歳男児について、母親への対応を問う。「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」である。
この問題で問われていること
被災した子どもの反応を、正常な反応として理解できるか。
しくみから理解する
災害という強い体験の後、子どもには、①退行(できていたことができなくなる。夜尿、指しゃぶり、赤ちゃん言葉、甘え)、②分離不安(保護者から離れられない)、③食欲の低下、④睡眠の障害(悪夢、寝つけない、夜驚)、⑤遊びの中での再現、⑥身体症状(腹痛、頭痛)、⑦興奮と落ち着きのなさ、あるいは逆に無口になること、が現れる。これらは、異常な出来事に対する正常な反応であり、多くは時間とともに軽快する。対応の基本は、安心感を与えることになる。抱きしめること、そばにいること、そして甘えを受け止めることが、最も直接的な安心の提供になる。
選択肢ごとの確認
「お母さんがしっかりしましょう」は適切でない。母親自身も被災し、子どもをかばって熱傷を負い、入院している。既に十分に努力しており、さらに求めることは負担を増やす。加えて、この言葉は、母親の対応が不十分だという評価を含んでおり、罪責感を強める。
「A君が1人になる時間をつくりましょう」も適切でない。この時期に必要なのは、分離ではなく、そばにいることになる。無理に離せば、不安がさらに強まる。
「A君に水分を控えるよう声をかけましょう」も適切でない。夜尿は、水分の問題ではなく、心理的な反応として生じている。水分を制限しても改善せず、加えて脱水を招く。夜尿を責めたり、本人に対処を求めたりすることは、自尊心を傷つけ、症状を長引かせる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①母親を責める、②分離を促す、③症状を誤って捉える、の3つになる。子どもの退行への対応の原則は、①正常な反応であると理解する、②責めない、③安心感を与える(そばにいる、抱きしめる、話を聴く)、④生活のリズムを整える、⑤遊びの機会を作る、⑥保護者を支える(保護者が落ち着いていることが、子どもの安心につながる)、になる。
理解を深める
災害時の心のケアを整理する。子どもの反応(年齢別)=①乳幼児=退行、分離不安、夜泣き、食欲の変化、遊びの中での再現、②学童=身体症状、集中力の低下、学習への影響、いらだち、罪責感(「自分のせいで」)、③思春期=抑うつ、無気力、危険な行動、大人びた振る舞い(我慢して助けようとする)。対応=①安全と安心の確保(食事、睡眠、居場所、なじみの物)、②日常のリズムを取り戻す(起床、食事、遊び、就寝)、③正確な情報を、年齢に応じた形で伝える(不確かな情報と、繰り返される映像は避ける)、④話したいときに聴く(無理に話させない)、⑤遊びを保障する、⑥保護者を支える、⑦学校と保育の再開、⑧特別扱いも、無視もしない。専門的な支援が必要な場合=①症状が1か月以上続き、生活に支障がある、②自傷、③強い抑うつ、④著しい興奮と暴力、⑤現実感の喪失。心的外傷後ストレス障害=再体験(フラッシュバック、悪夢)、回避、認知と気分の陰性の変化、そして過覚醒が、1か月以上続き、生活に支障をきたすもの。急性ストレス障害は、3日から1か月以内のもの。支援者への配慮=災害の支援にあたる者も、強いストレスにさらされる。二次的外傷性ストレス、燃え尽き、そして罪責感(「もっとできたのでは」)に注意し、休息、交代、そして語り合う場を確保する。「心のケア」は特別な技法だけを指すのではなく、生活を整え、安心できる関係を保つことが土台になる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が母親を責める・分離を促す・症状を誤解するものである。正常な反応と理解して安心を与える方向で切る。
5分で振り返る
①災害後の子どもの反応=退行(夜尿、指しゃぶり、甘え)、分離不安、食欲の低下、睡眠の障害、遊びの中での再現、身体症状。②これらは異常な出来事に対する正常な反応で、多くは時間とともに軽快する。③対応の基本は安心感を与えること。抱きしめる、そばにいる、甘えを受け止める。④母親も被災し、子どもをかばって熱傷を負っている。「しっかりしましょう」は負担と罪責感を増やす。⑤この時期に必要なのは分離ではなく、そばにいること。⑥夜尿は水分の問題ではない。制限しても改善せず、脱水を招く。責めることは自尊心を傷つけ症状を長引かせる。⑦保護者が落ち着いていることが子どもの安心につながる。保護者を支えることが、子どもの支援になる。⑧症状が1か月以上続き生活に支障があれば専門的な支援を検討する。
1分チェック
- 被災後の子どもの退行には。→ 甘えを受け止め、抱きしめる。
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