次の文を読み、問いに答えよ。A君(男児)は3歳の誕生日を迎えた。生後8か月のときに鶏卵の摂取でアナフィラキシーを起こしたため、かかりつけ医を受診した。それ以降、現在までA君は鶏卵の摂取を禁止するよう説明されている。鶏卵以外の食物は摂取して問題がない。今回、A君は保育所の入所にあたり、かかりつけ医からアレルギー外来のあるB病院を紹介され受診した。3歳児健康診査が今後予定されている。A君は身長95cm(50パーセンタイル)、体重15kg(75パーセンタイル)、自分の名前と年齢を答えることができる。階段を1人で昇ることができるが、スキップはできない。排泄はオムツにしている。
B 病院の医師から母親に、アドレナリン自己注射薬を処方のうえ鶏卵の摂取制限 を継続することと、近日中に鶏卵を用いた食物経口負荷試験を計画することが説明 された。母親から看護師に「A の保育所での生活や将来のことが心配です」と訴え があった。 看護師の母親への説明で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
鶏卵アレルギーがあり、アドレナリン自己注射薬を処方され、食物経口負荷試験が計画されている3歳男児について、「保育所での生活や将来のことが心配」と訴える母親への説明を問う。「成長とともに卵を食べられるようになる子どもは多いです」である。
この問題で問われていること
食物アレルギーの自然経過を、正しく伝えられるか。
しくみから理解する
乳幼児期に発症する鶏卵、牛乳、そして小麦のアレルギーは、腸管の機能と免疫の成熟に伴い、成長とともに食べられるようになること(耐性の獲得)が多い。鶏卵では、3歳までにおよそ3割、6歳までにおよそ7割が食べられるようになるとされる。したがって、「将来のことが心配」という母親の訴えに対して、この見通しを伝えることは、正確であり、かつ支えになる。加えて、食物経口負荷試験が計画されていること自体が、耐性の獲得を確かめ、不要な除去をやめていく過程であることを説明する。
選択肢ごとの確認
「保育所でアレルギー疾患用生活管理指導表を作成します」は誤りになる。この指導表は、医師が記載するものになる。保護者が保育所へ提出し、それにもとづいて保育所が対応を決める。保育所が作成するものではない。
「保育所でのアドレナリン自己注射薬は保護者が投与します」も誤りになる。アナフィラキシーが起きた場合、その場に居合わせた保育所の職員が投与できる。医師法上、本人と保護者以外の者が注射することは医行為に当たりうるが、緊急やむを得ない場合の対応として、人命救助の観点から違法性はないと考えられている。保護者の到着を待っていては間に合わない。
「給食の際は別室に移動して食べさせましょう」も適切でない。誤食を防ぐ工夫は必要だが、別室に隔離することは、子どもを集団から切り離し、疎外感を与える。対応は、①除去食または代替食を提供する、②配膳のトレイと食器を分ける、③名前を明記する、④席の配置を工夫する、⑤職員が声をかけ確認する、といった方法で行い、同じ場で一緒に食べられるようにする。
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混同しやすいポイント
誤肢は、①指導表を作る主体、②注射する者、③隔離という3点になる。食物アレルギーへの対応の原則は、①必要最小限の除去(正しい診断にもとづき、食べられるものは食べる)、②誤食の防止(仕組みで防ぐ)、③緊急時の対応(誰でも動けるように、あらかじめ決めておく)、④生活を狭めない(行事、給食、外出への参加を保障する)になる。
理解を深める
食物アレルギーを整理する。原因食物=鶏卵、牛乳、小麦が上位を占める(乳幼児)。学童以降は、甲殻類、木の実類、果物、そば、落花生が増える。近年、木の実類(くるみ、カシューナッツ)の増加が著しい。表示=特定原材料(表示が義務づけられているもの)と、表示が推奨されるものがある。症状=皮膚(蕁麻疹、紅斑、掻痒)、粘膜(眼瞼と口唇の腫脹、口腔内の違和感)、呼吸器(咳嗽、喘鳴、呼吸困難)、消化器(腹痛、嘔吐、下痢)、循環器(血圧低下、意識の低下)。アナフィラキシー=複数の臓器に症状が及ぶ、あるいは血圧低下と意識障害を伴う重篤な反応。診断と管理=①問診、②特異的免疫グロブリンEの測定と皮膚テスト(これらだけでは診断が確定しない。感作があっても食べられる場合がある)、③食物経口負荷試験(診断の確定と、耐性の獲得の確認。医療機関で慎重に行う)、④必要最小限の除去(「念のため」の除去はしない。栄養と生活の質を損ない、また耐性の獲得を妨げる可能性がある)、⑤定期的な再評価。緊急時の対応=①症状の観察と重症度の判断、②アドレナリン自己注射薬(アナフィラキシーの徴候があれば、迷わず大腿部の前外側に筋肉内注射する。使用後は必ず救急要請する)、③体位は症状による。原則は仰臥位で下肢を挙上するが、呼吸困難が強ければ坐位または半坐位、意識がない場合や嘔吐がある場合は回復体位、妊婦は左側臥位とする。いずれの場合も急に立ち上がらせない、④救急要請、⑤その場に居合わせた者が投与できる。保育所と学校での対応=①生活管理指導表(医師が記載)にもとづく、②除去食の提供、③誤食の防止(配膳、食器、表示、職員の確認)、④行事(調理実習、遠足、宿泊)での配慮、⑤緊急時の対応の手順を全職員で共有し、訓練する、⑥薬の保管場所を全員が知っている、⑦本人と周囲の子どもへの説明。
間違えやすい考え方
説明の正誤を問う型で、誤肢が主体・投与者・隔離を誤る。自然経過と、生活を狭めない原則で切る。
5分で振り返る
①乳幼児期に発症する鶏卵、牛乳、小麦のアレルギーは、成長とともに食べられるようになること(耐性の獲得)が多い。鶏卵では3歳までに約3割、6歳までに約7割。②食物経口負荷試験は、耐性の獲得を確かめ、不要な除去をやめていく過程になる。③アレルギー疾患用生活管理指導表は医師が記載する。保護者が保育所へ提出する。④アナフィラキシーの際、アドレナリン自己注射薬は、その場に居合わせた保育所の職員が投与できる。保護者の到着を待たない。⑤別室での隔離は疎外感を与える。除去食、配膳と食器の区別、表示、職員の確認で誤食を防ぎ、同じ場で食べられるようにする。⑥必要最小限の除去が原則。「念のため」の除去はしない。⑦アドレナリンは大腿部の前外側に筋肉内注射し、使用後は必ず救急要請する。
1分チェック
- 鶏卵アレルギーの見通しは。→ 成長とともに食べられるようになる子が多い。
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