母乳栄養の児に不足しやすいのはどれか。
公式正答:5
解説
母乳栄養の児に不足しやすいものを問う。ビタミンKである。
この問題で問われていること
母乳の栄養学的な特徴と、その補い方を知っているか。
しくみから理解する
母乳はビタミンKの含有量が少なく、また新生児は腸内細菌叢が未熟でビタミンKの産生も乏しい。加えて、胎盤を通過するビタミンKも少ないため、出生時の貯蔵量が限られる。ビタミンKは、血液凝固因子(第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)の合成に必要であり、不足すると出血をきたす。これがビタミンK欠乏性出血症で、消化管出血(新生児メレナ)や、生後2週から2か月頃に起こる頭蓋内出血として現れる。予防のため、日本ではビタミンK2シロップを、出生後、生後1週(または産科退院時)、そして生後1か月に投与する方式が広く行われてきたが、現在は生後3か月まで週1回投与する方式が推奨されている。
選択肢ごとの確認
ビタミンAは母乳に十分に含まれる。とくに初乳には多く含まれ、上皮の維持と免疫にはたらく。
ビタミンBも、母親の栄養状態が良好であれば母乳から供給される。ただし、母親が完全菜食を続けている場合には、ビタミンB12が不足しうるため注意が要る。
ビタミンCも母乳に含まれる。
ビタミンEも母乳に含まれ、とくに初乳に多い。抗酸化作用をもち、新生児の溶血の予防にはたらく。
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混同しやすいポイント
母乳栄養で不足しやすいものは、ビタミンKと鉄が代表になる。ビタミンKは出生直後から補い、鉄は生後6か月頃から離乳食で補う(それまでは胎児期に蓄えた貯蔵鉄でまかなわれる)。加えて、日照の少ない環境ではビタミンDの不足も問題になる。母乳の利点(免疫グロブリンAとラクトフェリンによる感染防御、消化吸収のよさ、母子相互作用、経済性、母体の子宮復古の促進)と、補うべき点を、対にして覚えると整理しやすい。
理解を深める
母乳と人工乳の違いを整理する。母乳の特徴=蛋白質は乳清蛋白が多く消化がよい、乳糖が多い、脂肪の消化を助けるリパーゼを含む、免疫グロブリンAとラクトフェリン、リゾチーム、そしてオリゴ糖(腸内のビフィズス菌を増やす)を含む。人工乳は母乳に近づけて調製されているが、免疫成分は含まれない。母親がヒトT細胞白血病ウイルス1型のキャリアである場合は、母子感染予防対策として完全人工栄養が第一に勧められる。ただし禁忌ではなく、短期母乳栄養や凍結解凍母乳という選択肢が、説明のうえで示される。授乳の禁忌にあたるのは、ヒト免疫不全ウイルス感染がある場合、そして特定の薬物(抗癌薬、放射性医薬品など)を使用している場合になる。児側では、ガラクトース血症が禁忌になる。授乳の支援としては、出生直後からの早期母子接触、児の欲求に応じた授乳(自律授乳)、正しい吸着、そして母親の不安への対応が挙げられる。乳児のビタミンK欠乏性出血症の予防は、母子健康手帳にも記載される重要な項目であり、退院後の投与を家族が確実に行えるよう説明することが看護の役割になる。
間違えやすい考え方
母乳の不足成分を問う型で、誤肢がすべて母乳に十分含まれるビタミンである。ビタミンKと鉄が代表と覚える。
5分で振り返る
①母乳はビタミンKが少なく、新生児は腸内細菌によるビタミンKの産生も乏しい。②不足すると血液凝固因子(第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子)の合成が滞り、ビタミンK欠乏性出血症をきたす。③新生児メレナ(消化管出血)と、生後2週〜2か月の頭蓋内出血として現れる。④予防はビタミンK2シロップの投与(現在は生後3か月まで週1回が推奨)。⑤母乳栄養で不足しやすいのはビタミンKと鉄。鉄は生後6か月頃から離乳食で補う。⑥母乳の利点=免疫グロブリンA、ラクトフェリン、消化吸収のよさ、母子相互作用。⑦授乳の禁忌=母親のHIV感染、特定の薬物、児のガラクトース血症。母親がHTLV-1キャリアの場合は完全人工栄養が第一に勧められるが禁忌ではなく、短期母乳栄養や凍結解凍母乳という選択肢が説明のうえで示される。
1分チェック
- 母乳栄養で不足しやすいのは。→ ビタミンK(血液凝固因子の合成に必要)。
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