骨格筋の細胞膜には( )に対する受容体がある。自己抗体がこの受容体の働 きを阻害すると骨格筋は収縮できなくなる。 ( )に入る神経伝達物質として正しいのはどれか。
公式正答:1
解説
骨格筋の細胞膜にある受容体に対応する神経伝達物質を問う。アセチルコリンである。自己抗体がこの受容体の働きを阻害する疾患は重症筋無力症になる。
この問題で問われていること
神経筋接合部の伝達物質と、その障害による疾患を結びつけられるか。
しくみから理解する
運動神経の終末から放出される伝達物質はアセチルコリンになる。骨格筋の細胞膜(終板)にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合すると、ナトリウムが流入して脱分極が起こり、活動電位が筋線維を伝わって収縮が生じる。重症筋無力症では、この受容体に対する自己抗体が産生され、受容体の数と機能が低下する。その結果、繰り返し使うほど伝達が続かなくなり、筋力が低下する。特徴は、日内変動(朝は軽く夕方に悪化する)と易疲労性であり、眼瞼下垂と複視で発症することが多い。
選択肢ごとの確認
アドレナリンは副腎髄質から分泌されるホルモンで、交感神経の作用を全身へ及ぼす。骨格筋の神経筋接合部の伝達物質ではない。
ドパミンは中枢神経の伝達物質で、黒質線条体系の障害がパーキンソン病を、中脳辺縁系の過剰が統合失調症の一部の症状に関わるとされる。神経筋接合部の伝達物質ではない。
ノルアドレナリンは交感神経の節後線維から放出される伝達物質になる。心拍数の増加、血管の収縮などに関わるが、骨格筋の収縮を直接起こす伝達物質ではない。
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混同しやすいポイント
自律神経と体性神経で伝達物質が異なる点を整理する。体性運動神経=神経筋接合部でアセチルコリン(ニコチン性受容体)。交感神経=節前線維はアセチルコリン(ニコチン性)、節後線維はノルアドレナリン(アドレナリン受容体)。ただし汗腺への交感神経の節後線維はアセチルコリン(ムスカリン性)になる。副交感神経=節前・節後ともアセチルコリン(節前はニコチン性、節後はムスカリン性)。「骨格筋を動かすのはアセチルコリン」という一点で、この設問は判断できる。
理解を深める
重症筋無力症の理解を深める。診断には、抗アセチルコリン受容体抗体(陰性の場合は抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体)、反復刺激試験(低頻度刺激で振幅が漸減する)、そしてエドロホニウム試験が用いられる。胸腺腫または胸腺過形成を伴うことが多く、胸腺摘除術が治療の選択肢になる。薬物療法は、コリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリンの分解を抑えて伝達を助ける)、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、そして重症例では血漿交換や免疫グロブリン大量療法になる。危機として、筋無力症クリーゼ(症状の急激な悪化により呼吸筋が麻痺する)と、コリン作動性クリーゼ(コリンエステラーゼ阻害薬の過量により、縮瞳、発汗、流涎、徐脈、筋線維束攣縮を伴って筋力が低下する)があり、両者の鑑別が重要になる。看護では、易疲労性に合わせた活動と休息の配分、症状の日内変動を踏まえた生活の組み立て、嚥下障害による誤嚥の予防、呼吸状態の観察、そして服薬の時間の厳守(食事の30分前に内服して食事時に効果が最大になるようにする、など)が求められる。感染、過労、ストレス、そして特定の薬剤(アミノグリコシド系抗菌薬、筋弛緩薬など)が症状を悪化させることも、患者と家族への説明に含める。
間違えやすい考え方
伝達物質を問う型で、誤肢がすべて自律神経・中枢神経の伝達物質である。骨格筋=アセチルコリンで切る。
5分で振り返る
①運動神経終末からアセチルコリンが放出され、骨格筋のニコチン性受容体に結合して収縮が起こる。②重症筋無力症=この受容体に対する自己抗体により受容体の数と機能が低下する。③特徴は日内変動(朝は軽く夕方に悪化)と易疲労性。眼瞼下垂と複視で発症することが多い。④胸腺腫・胸腺過形成を伴うことが多く、胸腺摘除術が選択肢になる。⑤治療=コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換、免疫グロブリン大量療法。⑥筋無力症クリーゼとコリン作動性クリーゼの鑑別が重要。⑦交感神経の節後線維はノルアドレナリン、副交感神経は節前・節後ともアセチルコリン。
1分チェック
- 骨格筋を収縮させる伝達物質は。→ アセチルコリン(受容体への自己抗体で重症筋無力症)。
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