ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っている。 この処理に使用する消毒薬で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
ノロウイルス感染症の患者の嘔吐物が床に飛び散っている場合の処理に使用する消毒薬を問う。次亜塩素酸ナトリウムである。
この問題で問われていること
病原体の性質に応じて消毒薬を選べるか。
しくみから理解する
ノロウイルスはエンベロープ(脂質の膜)を持たないウイルスで、アルコールによる消毒が効きにくい。有効なのは次亜塩素酸ナトリウムで、嘔吐物や便で汚染された場所の消毒には0.1%(1,000ppm)、器具や環境の消毒には0.02%(200ppm)程度を用いる。処理の手順は、まず個人防護具(使い捨て手袋、マスク、エプロン)を着用し、ペーパータオル等で嘔吐物を外側から内側へ静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、10分程度置いてから水拭きする。拭き取ったものはビニール袋へ入れて密閉して廃棄する。処理の間は換気を行う。乾燥した嘔吐物が空中に舞い上がって感染することがあるため、速やかな処理と、こすらないことが重要になる。
選択肢ごとの確認
70%エタノールは、エンベロープを持つウイルス(インフルエンザ、新型コロナウイルスなど)や多くの細菌には有効だが、エンベロープを持たないノロウイルスには効きにくい。手指衛生としては、流水と石けんによる物理的な洗い流しが基本になる。
ポビドンヨードは、創部や皮膚、粘膜の消毒に用いる中水準消毒薬になる。着色し、金属を腐食させ、広い床面の処理には向かない。ノロウイルスに対する効果も次亜塩素酸ナトリウムに劣る。
塩化ベンザルコニウム(第四級アンモニウム塩)は低水準消毒薬で、一般細菌には有効だが、ノロウイルス、結核菌、芽胞には効果が乏しい。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
「アルコールが効かない病原体」を覚えておくことが要点になる。エンベロープを持たないウイルスと、クロストリディオイデス・ディフィシルやバチルス属の芽胞になる。ただしエンベロープを持たないウイルスの間でも抵抗性は一様ではなく、ノロウイルスで顕著な一方、ロタウイルスとアデノウイルスは70%エタノールに対して比較的感受性がある。効くかどうかは、病原体、アルコールの濃度、剤形、接触時間による。これらには次亜塩素酸ナトリウムを用いる。逆に、次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食し、有機物があると効果が落ち、酸性の洗剤と混ぜると有毒な塩素ガスが発生するため、取り扱いに注意が要る。
理解を深める
ノロウイルス感染症の特徴と対策を整理する。潜伏期は24〜48時間、症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱で、通常1〜3日で軽快する。感染力が非常に強く、10〜100個程度のウイルス粒子で感染が成立する。感染経路は、汚染された食品(二枚貝など)、患者の嘔吐物や便からの接触感染、そして乾燥した嘔吐物が舞い上がることによる飛沫・塵埃感染になる。症状が消えた後も1〜2週間、長い場合は1か月程度、便中にウイルスが排出されるため、手洗いの徹底を続ける。予防は、流水と石けんによる手洗い(アルコールでは不十分)、食品の十分な加熱(85〜90℃で90秒以上)、調理器具の消毒、そして調理従事者の健康管理になる。集団発生時には、感染者の隔離、環境の消毒、そして保健所への報告が必要になる。医療機関や高齢者施設では、嘔吐と下痢の症例が複数出た時点で早期に対応を始めることが、拡大の防止につながる。看護では、患者の脱水の評価(口渇、皮膚の緊張、尿量、血圧、頻脈)と、経口補水または輸液による補正も重要になる。止瀉薬は、ウイルスの排出を遅らせるため原則として用いない。
間違えやすい考え方
消毒薬の選択を問う型で、誤肢がアルコール・ヨード・第四級アンモニウム塩である。アルコールが効かない病原体で切る。
5分で振り返る
①ノロウイルスはエンベロープを持たず、アルコールが効きにくい。②有効なのは次亜塩素酸ナトリウム。嘔吐物や便の汚染は0.1%(1,000ppm)、環境は0.02%(200ppm)程度。③処理=防護具を着け、外側から内側へ静かに拭き取り、消毒し、10分置いて水拭き。密閉して廃棄し、換気する。④アルコールが効きにくいのはエンベロープを持たないウイルスと芽胞(クロストリディオイデス・ディフィシル)。ただしノロウイルスで顕著な一方、ロタウイルスとアデノウイルスは70%エタノールに比較的感受性がある。濃度、剤形、接触時間にもよる。⑤次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食し、有機物で効果が落ち、酸性洗剤と混ぜると塩素ガスが出る。⑥手指衛生は流水と石けんによる洗い流しが基本。⑦症状消失後も1〜2週間は便中に排出される。止瀉薬は原則用いない。
1分チェック
- ノロウイルスの嘔吐物の消毒は。→ 次亜塩素酸ナトリウム(0.1%=1,000ppm)。
この問題に対応する教材の確認中です。