ムーア, F. D. Moore, F. D. が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれ か。
公式正答:2
解説
ムーアが提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいものを問う。転換期では循環血液量が増加する、である。
この問題で問われていること
術後の回復の4相を、内分泌と代謝の変化とともに説明できるか。
しくみから理解する
ムーアは、外科的侵襲からの回復を4つの相に分けた。第Ⅰ相(傷害期、術後〜2〜4日)=交感神経と副腎皮質の反応が高まり、抗利尿ホルモンとアルドステロンの分泌が増える。その結果、尿量は減少し、ナトリウムと水が体内に保たれる。異化が亢進し、体温上昇、頻脈、腸蠕動の低下がみられる。第Ⅱ相(転換期、術後3日頃から1〜2日間)=ホルモンの分泌が正常へ戻り、体内に保たれていた水とナトリウムが血管内へ戻って尿として排泄される。この時期に循環血液量が増加し、利尿がつく(リフィリング)。心機能が低下している患者では、この時期に心不全や肺水腫を起こしやすい。第Ⅲ相(筋力回復期、術後1週頃から数週間)=同化に転じ、蛋白の合成が進み、筋力と体力が回復する。第Ⅳ相(脂肪蓄積期、数か月)=脂肪が蓄積し、体重が戻る。活動性は高まる。
選択肢ごとの確認
傷害期では尿量は減少する。抗利尿ホルモンとアルドステロンの分泌が増え、水とナトリウムが体内に保たれるためになる。増加するのは転換期になる。
筋力回復期では蛋白の合成が進む。分解(異化)が進むのは傷害期になる。この相では同化に転じ、窒素バランスが正に傾く。
脂肪蓄積期では活動性は高まる。体力が戻り、日常生活と社会生活へ復帰していく時期になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「相」と「変化の向き」の組み合わせを入れ替えている。傷害期=尿量減少・異化、転換期=利尿・循環血液量の増加、筋力回復期=同化・蛋白合成、脂肪蓄積期=脂肪の蓄積・活動性の回復、という対応を正確に持つ必要がある。とくに「傷害期は尿が減り、転換期に出る」という水分の動きが、輸液管理と観察に直結する。
理解を深める
ムーアの分類は、術後の観察と管理の指針になる。傷害期=出血、循環動態、呼吸、疼痛、悪心、尿量(時間尿0.5mL/kg/時以上を目安)、創部、ドレーンの排液を観察する。輸液は、水とナトリウムが体内に保たれることを踏まえて量を決める。疼痛管理を十分に行い、早期離床を進める。転換期=利尿がつくことを確認する。水分出納と体重、そして心不全の徴候(呼吸困難、頸静脈の怒張、湿性ラ音、酸素飽和度の低下)を観察する。とくに高齢者や心疾患のある患者では注意が要る。筋力回復期=栄養の摂取(蛋白質とエネルギー)、活動の拡大、リハビリテーション、そして退院に向けた生活の調整を支援する。脂肪蓄積期=体重の回復、社会復帰、そして再発や合併症の経過観察になる。手術侵襲による生体反応は、外科的侵襲の大きさ、患者の年齢、栄養状態、併存疾患によって程度が変わる。低侵襲手術(腹腔鏡下、胸腔鏡下、ロボット支援下)では、この反応が小さく、回復も速い。近年は、術後回復を促進するための一連の取り組み(術前の説明と準備、絶食時間の短縮、早期の経口摂取と離床、適切な疼痛管理、輸液の適正化)が広く行われ、回復の経過そのものが変わりつつある。
間違えやすい考え方
相と変化の組合せを問う型で、誤肢が相と向きを入れ替えている。傷害期=尿量減少、転換期=利尿で切る。
5分で振り返る
①第Ⅰ相 傷害期(術後〜2〜4日)=抗利尿ホルモンとアルドステロンが増え、尿量減少、水とナトリウムの貯留、異化の亢進。②第Ⅱ相 転換期(術後3日頃から1〜2日)=ホルモンが正常化し、貯留した水が血管内へ戻る。循環血液量が増加し利尿がつく。③この時期は心不全と肺水腫に注意する。④第Ⅲ相 筋力回復期(術後1週から数週)=同化に転じ蛋白合成が進む。⑤第Ⅳ相 脂肪蓄積期(数か月)=脂肪が蓄積し体重が戻る。活動性は高まる。⑥傷害期の尿量は時間尿0.5mL/kg/時以上が目安。⑦低侵襲手術と術後回復促進の取り組みにより、この反応は小さくなりつつある。
1分チェック
- 転換期に起こるのは。→ 循環血液量の増加(体内に保たれた水が血管内へ戻り利尿がつく)。
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