右肺尖部の肺癌〈lung cancer〉の胸 壁への浸潤による症状はどれか。
公式正答:4
解説
右肺尖部の肺癌の胸壁への浸潤による症状を問う。上肢の疼痛である。
この問題で問われていること
腫瘍の位置から、浸潤を受ける構造を推定できるか。
しくみから理解する
肺尖部は胸郭の最上部にあり、その周囲には腕神経叢、交感神経の星状神経節、鎖骨下動静脈、そして第1肋骨と胸椎がある。ここに発生した肺癌が胸壁へ浸潤すると、これらの構造が障害される。腕神経叢が侵されると、肩から上肢にかけての疼痛、しびれ、そして手の筋の萎縮と筋力低下が生じる。この一連の症候をパンコースト症候群という。星状神経節が侵されるとホルネル症候群(患側の縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、顔面の発汗の減少)を伴う。したがって、この設問の答えは上肢の疼痛になる。
選択肢ごとの確認
散瞳は生じない。交感神経が障害されると、瞳孔を散大させる働きが失われるため、むしろ縮瞳になる。ホルネル症候群の一徴として現れる。
構音障害は、脳血管障害、脳神経の障害、神経筋疾患などで生じる。肺尖部の腫瘍による直接の浸潤では説明できない。ただし、縦隔への進展で反回神経が侵されれば嗄声を生じる(構音障害とは区別される)。
閉眼困難は、顔面神経の麻痺で生じる。肺尖部の腫瘍とは関係しない。ホルネル症候群の眼瞼下垂は、交感神経が支配する平滑筋であるミュラー筋(上瞼板筋)の機能低下によるもので、動眼神経が支配する横紋筋である上眼瞼挙筋とは別の構造になる。下垂は軽度で、閉眼はできる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、散瞳と閉眼困難は、正しい所見(縮瞳、眼瞼下垂)とわずかに違う形で置かれている。ホルネル症候群を「縮瞳・眼瞼下垂・眼球陥凹・発汗減少」と正確に覚えていないと、散瞳を選んでしまう。交感神経が働くと瞳孔は開く(散瞳)ので、その働きが失われれば縮瞳になる、という機序から導ける。
理解を深める
肺癌の症状は、原発巣によるもの、局所への進展によるもの、遠隔転移によるもの、そして腫瘍随伴症候群に分けられる。原発巣=咳嗽、血痰、喘鳴、呼吸困難、閉塞性肺炎。局所への進展=胸痛(胸膜浸潤)、嗄声(反回神経麻痺)、嚥下困難(食道の圧迫)、上大静脈症候群(顔面と上肢の浮腫、頸静脈の怒張)、心タンポナーデ、パンコースト症候群とホルネル症候群(肺尖部)、横隔神経麻痺。遠隔転移=脳(頭痛、嘔吐、麻痺、けいれん)、骨(疼痛、病的骨折、高カルシウム血症)、肝、副腎。腫瘍随伴症候群=抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(低ナトリウム血症。小細胞癌に多い)、高カルシウム血症(副甲状腺ホルモン関連蛋白。扁平上皮癌に多い)、ランバート・イートン筋無力症候群、クッシング症候群、ばち指。組織型では、腺癌が最も多く、次いで扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌になる。小細胞癌は進行が速く、早期に転移するが、化学療法と放射線療法への感受性が高い。喫煙との関連は扁平上皮癌と小細胞癌で強い。看護では、症状の緩和、治療に伴う有害事象への対応、そして病期に応じた意思決定の支援が中心になる。
間違えやすい考え方
症状を問う型で、誤肢が正しい所見とわずかに違う形(散瞳/縮瞳)で置かれている。機序から導いて切る。
5分で振り返る
①肺尖部の周囲には腕神経叢、星状神経節、鎖骨下動静脈、第1肋骨がある。②腕神経叢の浸潤で肩と上肢の疼痛、しびれ、手の筋萎縮=パンコースト症候群。③星状神経節の浸潤でホルネル症候群=縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、発汗の減少。散瞳ではない。④閉眼困難は顔面神経麻痺によるもので、ホルネル症候群では閉眼できる。⑤縦隔への進展で反回神経が侵されれば嗄声を生じる。⑥腫瘍随伴症候群=抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(小細胞癌)、高カルシウム血症(扁平上皮癌)。⑦組織型は腺癌が最多。小細胞癌は進行が速いが化学療法と放射線療法に感受性が高い。
1分チェック
- 肺尖部肺癌の胸壁浸潤で生じるのは。→ 上肢の疼痛(パンコースト症候群)。
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