重度の肝硬変〈cirrhosis〉 で基準値よりも低い値を示す血液検査項目はどれか。
公式正答:1
解説
重度の肝硬変で基準値よりも低い値を示す血液検査項目を問う。血清アルブミンである。
この問題で問われていること
肝臓の機能が落ちると、どの値が上がり、どの値が下がるかを整理できているか。
しくみから理解する
肝臓は多くの蛋白質を合成する。アルブミンはその代表で、血漿の膠質浸透圧を保つ役割を担う。肝硬変で肝細胞の機能が失われると、アルブミンの合成が減り、血清アルブミン値は低下する。その結果、膠質浸透圧が下がって血管内から間質へ水が移動し、浮腫と腹水を生じる。同時に、門脈圧の亢進も腹水の形成に関わる。低アルブミン血症は、肝の合成能を反映する指標として、肝硬変の重症度分類(チャイルド・ピュー分類)にも組み込まれている。
選択肢ごとの確認
血清ビリルビンは上昇する。肝細胞での処理と胆汁への排泄が障害されるためで、黄疸として現れる。重症度分類の項目の一つになる。
血中アンモニアも上昇する。腸で産生されたアンモニアを肝臓で尿素へ変える働きが落ち、また門脈大循環シャントによって肝を迂回するためになる。肝性脳症の原因になる。
プロトロンビン時間は延長する。凝固因子(第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子など)の多くが肝臓で合成されるため、その合成が減ると凝固が遅れる。数値としては「時間」が延び、活性(%)は低下する。この設問は「低い値を示す項目」を問うており、プロトロンビン時間は延長する(高くなる)ため当てはまらない。
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混同しやすいポイント
「肝臓が作るものは下がり、肝臓が処理するものは上がる」と整理する。作るもの=アルブミン、凝固因子、コリンエステラーゼ、コレステロール。処理するもの=ビリルビン、アンモニア。ただし、プロトロンビンは「作るもの」だが、検査値としては時間で表されるため延長する(数値は大きくなる)。この表現の向きが、この設問の落とし穴になる。活性(%)で表せば低下する。
理解を深める
肝硬変の病態と看護を整理する。病態=慢性の炎症により肝細胞が壊れ、線維化と再生結節が形成される。結果として、①肝細胞機能の低下(低アルブミン血症、凝固異常、黄疸、薬物代謝の低下)と、②門脈圧亢進(食道・胃静脈瘤、腹水、脾腫と血小板減少、腹壁静脈の怒張)が生じる。原因は、ウイルス性肝炎(B型、C型)、アルコール性、非アルコール性脂肪肝炎、自己免疫性など。合併症=食道静脈瘤の破裂(大量吐血。緊急内視鏡的止血)、肝性脳症(羽ばたき振戦、意識障害。誘因は便秘、消化管出血、蛋白の過剰摂取、脱水、感染、利尿薬)、腹水と特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、そして肝細胞癌。看護=安静と栄養(十分なエネルギー、分割食、就寝前の軽食で夜間の低血糖と異化を防ぐ)、塩分は腹水の程度に応じて調整し、水分制限は希釈性低ナトリウム血症など適応がある場合に限る。肝性脳症でも蛋白質を漫然と制限せず、必要量を確保しながら個別に調整し、必要に応じて分岐鎖アミノ酸製剤を用いる。便通の管理(ラクツロースでアンモニアの産生と吸収を減らす)、出血の予防(皮膚を傷つけない、歯磨きはやわらかいブラシで、便の性状の観察)、腹囲と体重の測定、そして肝細胞癌の早期発見のための定期的な画像検査と腫瘍マーカーの確認になる。
間違えやすい考え方
検査値の向きを問う型で、誤肢がすべて上昇する項目である。作るものは下がり、処理するものは上がると整理する。
5分で振り返る
①肝臓が合成するもの=アルブミン、凝固因子、コリンエステラーゼ、コレステロール。肝硬変では低下する。②肝臓が処理するもの=ビリルビン、アンモニア。肝硬変では上昇する。③プロトロンビンは肝臓が作るが、検査値は「時間」で表すため延長する(活性%では低下)。④低アルブミン血症は膠質浸透圧の低下を招き、浮腫と腹水を生じる。⑤肝硬変は肝細胞機能の低下と門脈圧亢進の2つに整理する。⑥合併症=食道静脈瘤の破裂、肝性脳症、腹水と特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝細胞癌。⑦肝性脳症の誘因=便秘、消化管出血、蛋白の過剰摂取、脱水、感染、利尿薬。
1分チェック
- 肝硬変で低下するのは。→ 血清アルブミン(肝臓が合成する)。
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