高齢者の身体拘束に関する説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
高齢者の身体拘束に関する説明で適切なものを問う。切迫性、非代替性および一時性の全てを満たしている場合に検討される、である。
この問題で問われていること
身体拘束が例外的に許される条件を、正確に言えるか。
しくみから理解する
身体拘束は、原則として禁止される。介護保険の指定基準では、「利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合」を除いて、身体的拘束その他行動を制限する行為を行ってはならないと定められている。この「緊急やむを得ない場合」の判断には、3つの要件をすべて満たすことが必要になる。切迫性=生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。非代替性=身体拘束以外に代わる方法がないこと。一時性=身体拘束が一時的なものであること。3つのうち1つでも欠ければ、拘束は許されない。
選択肢ごとの確認
実施の決定は、担当看護師が単独で行うものではない。組織として、複数の職種で構成されるチームで検討し、施設の管理者を含めて判断する。手続きの面でも、本人と家族への説明と同意、記録(拘束の態様、時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由)、そして解除に向けた継続的な検討が求められる。
ミトン型の手袋の使用は、身体拘束にあたる。厚生労働省の示す身体拘束の具体例には、①ベッドに体幹や四肢を縛る、②柵(サイドレール)で囲む、③ミトン型の手袋等をつける、④車椅子や椅子に縛る、⑤立ち上がりを妨げる椅子を使う、⑥介護衣(つなぎ服)を着せる、⑦四肢を縛る、⑧向精神薬を過剰に服用させる、⑨自分の意思で開けられない部屋に隔離する、などが挙げられる。
本人が同意していても、家族への説明が不要になることはない。手続きとして、本人と家族の双方への説明と同意が求められる。また、認知機能が低下している場合、本人の同意の有効性そのものを慎重に判断する必要がある。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
3要件は「切迫性・非代替性・一時性」と、順に覚える。誤肢は、決定の主体(個人か組織か)、拘束にあたる行為の範囲、そして手続きの省略という3点で誤っている。いずれも、身体拘束を「例外中の例外」として厳格に扱うという原則に反する。実務では、拘束をするかどうかの前に、なぜその行動が起きているのかを考えることが先になる。
理解を深める
身体拘束を減らすための考え方を整理する。まず、拘束が検討される場面(点滴やチューブの自己抜去、転倒・転落、徘徊、他者への迷惑行為)の背景を探る。痛み、かゆみ、便意・尿意、口渇、不安、不眠、せん妄、薬剤の影響、環境の不適合(明るさ、音、位置)などが、行動の引き金になっていることが多い。それらを取り除けば、行動そのものが減る。次に、代替の方法を検討する。点滴=日中に短時間で済ませる、刺入部を見えにくくする、点滴の必要性そのものを見直す。転倒=ベッドを低くする、離床センサー、床にマットを敷く、トイレへの誘導の時間を調整する、履物と環境を整える。徘徊=歩ける環境をつくる、一緒に歩く、日中の活動を増やす。そして、やむを得ず拘束する場合も、最小限の態様と最短の時間にとどめ、頻回に観察し、解除の条件を明確にして継続的に検討する。拘束による弊害は大きく、身体面(関節拘縮、筋力低下、褥瘡、深部静脈血栓症、誤嚥、食欲の低下)、精神面(不安、怒り、屈辱、あきらめ、認知機能の低下、せん妄の悪化)、そして社会面(家族の苦痛、施設への不信、職員の士気の低下)に及ぶ。拘束をしないことが、結果として回復と安全につながるという理解が土台になる。
間違えやすい考え方
要件を問う型で、誤肢が決定の主体・行為の範囲・手続きで誤っている。3要件を正確に覚えて切る。
5分で振り返る
①身体拘束は原則禁止。例外は「緊急やむを得ない場合」に限られる。②3要件=切迫性(生命・身体の危険が著しく高い)、非代替性(他に代わる方法がない)、一時性(一時的である)。1つでも欠ければ許されない。③決定は担当者個人ではなく、組織として複数の職種で行う。④ミトン型の手袋、サイドレールで囲むこと、つなぎ服、向精神薬の過剰投与も身体拘束にあたる。⑤拘束を正当化するのは3要件の充足と組織としての判断であって、家族の同意ではない。そのうえで、本人と家族の双方への説明、記録、解除に向けた継続的な検討が必要になる。⑥拘束の前に、行動の背景(痛み、便意、不安、せん妄、薬剤、環境)を探る。⑦弊害は身体・精神・社会の各面に及ぶ。
1分チェック
- 身体拘束が例外的に検討されるのは。→ 切迫性・非代替性・一時性の3つをすべて満たす場合。
この問題に対応する教材の確認中です。