A さん(70 歳、男性、要介護1)は脳梗塞〈cerebral infarction〉の後遺 症で左不全麻痺がある。家屋内は杖を使用して移動が可能である。A さんから「入浴が不安なので安全な方法を教 えてほしい」と訪問看護師に相談があった。 A さんへの助言で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
左不全麻痺があり杖を使って移動できる70歳男性への、入浴に関する助言で適切なものを問う。浴槽から出るときは入浴台(バスボード)を使う、である。
この問題で問われていること
麻痺のある人の動作の原則を、入浴の場面に当てはめられるか。
しくみから理解する
浴槽をまたぐ動作は、片足立ちになる瞬間があり、転倒の危険が最も高い場面になる。入浴台(バスボード)は、浴槽の縁に渡して座面をつくる用具で、そこに腰かけたまま足を一本ずつ浴槽へ入れられる。片足立ちを避けられるため、麻痺のある人には有効な方法になる。浴槽から出るときも同様に、いったん座ってから足を出せる。加えて、浴槽内には浴槽用の椅子や滑り止めマットを、洗い場にはシャワーチェアを用いると、動作の安全性が高まる。
選択肢ごとの確認
手すりは健側である右手で持つ。左不全麻痺であるため、左手では十分に体を支えられない。動作の原則として、力を出すのは健側になる。
浴槽には健側の右足から入る。またぐ動作では、先に入れた足に体重を乗せることになるため、支えられる側を先にする。逆に、浴槽から出るときも健側から出る。「またぐときは健側から」と覚える。
浴室内を杖で移動することは、勧められない。浴室の床は濡れて滑りやすく、杖の先も滑る。手すりを伝って移動するか、シャワーチェアを用いて座位で移動する方が安全になる。杖は脱衣所までとし、浴室内では別の方法をとる。
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混同しやすいポイント
「健側で支える」「またぐときは健側から」「浴室では杖を使わない」の3点が要点になる。誤肢はこの3つに正確に対応している。なお、更衣では「脱健着患」(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)となり、方向が逆になる。場面ごとに、なぜその順序になるのかを考えると混同しない。更衣は、動かしやすい側を先に脱ぎ、動かしにくい側を先に着せる方が楽だからになる。
理解を深める
在宅の入浴の支援を整理する。環境の整備=手すり(浴槽の縁、洗い場、脱衣所)、滑り止めマット、シャワーチェア、入浴台(バスボード)、浴槽内椅子、すのこによる段差の解消。これらの多くは介護保険の特定福祉用具販売または住宅改修の対象になる(手すりの取り付けと段差の解消は住宅改修、入浴補助用具は特定福祉用具販売)。安全の確保=浴室と脱衣所を暖める(温度差によるヒートショックを防ぐ)、湯温は38〜41℃程度、湯につかるのは10分程度まで、入浴の前後に水分を摂る、食後すぐと飲酒後は避ける、そして一人で入るときは家族に声をかけてから入る。体調の確認=血圧、脈拍、体温、そして本人の自覚。発熱時や体調が悪いときは、清拭や部分浴に切り替える。動作の工夫=立ち上がりと座り込みをゆっくり行う(起立性低血圧の予防)、急がない、疲れたら休む。看護師は、実際に浴室を見て、その人の動作を確認したうえで助言する。図面や口頭の説明だけでは、実際の動線と高さに合わない提案になりかねない。福祉用具の選定は、作業療法士や福祉用具専門相談員と連携して行う。
間違えやすい考え方
動作の助言を問う型で、誤肢が健側・患側の取り違えと、環境に合わない用具の使用である。健側で支えるで切る。
5分で振り返る
①浴槽をまたぐ動作は片足立ちになり転倒の危険が最も高い。入浴台(バスボード)に座ったまま足を一本ずつ入れる。②手すりは健側で持つ(力を出すのは健側)。③またぐときは健側から入り、健側から出る。④浴室内は濡れて滑るため杖を使わない。手すりを伝うかシャワーチェアで座位移動する。⑤更衣は脱健着患(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)で方向が逆。⑥浴室と脱衣所を暖めてヒートショックを防ぐ。湯温38〜41℃、10分程度まで。⑦手すりと段差の解消は住宅改修、入浴補助用具は特定福祉用具販売の対象。
1分チェック
- 浴槽の出入りには。→ 入浴台(バスボード)を使う(片足立ちを避ける)。またぐのは健側から。
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