インスリンを過剰に投与したときに現れる症候で正しいのはどれか。
公式正答:5
解説
インスリンを過剰に投与したときに現れる症候で正しいものを問う。手足のふるえである。
この問題で問われていること
低血糖の症状を、機序ごとに区別できるか。
しくみから理解する
インスリンの過剰投与により血糖が下がると、体はそれを補おうとして、拮抗ホルモン(アドレナリン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモン)を分泌する。とくにアドレナリンの作用により、交感神経症状が現れる。発汗、動悸、頻脈、手指のふるえ、不安、顔面蒼白、空腹感がこれにあたり、血糖がおよそ70mg/dLを下回る頃から出現する。さらに下がって50mg/dL程度になると、脳へのブドウ糖の供給が不足し、中枢神経症状(頭痛、集中力の低下、眠気、異常行動、けいれん、意識障害、昏睡)が現れる。
選択肢ごとの確認
発熱は低血糖の症候ではない。感染症、炎症、悪性腫瘍、薬剤などで生じる。
浮腫も低血糖の症候ではない。心不全、腎疾患、低アルブミン血症などで生じる。ただし、著しい高血糖が急速に改善する過程で、一過性の浮腫(インスリン浮腫)を生じることはある。
口渇感は高血糖の症候になる。血糖が高いと浸透圧利尿により多尿となり、脱水から口渇と多飲が生じる。低血糖とは逆の方向になる。
顔面紅潮も低血糖の症候ではない。低血糖では、アドレナリンの作用による末梢血管の収縮で、むしろ顔面蒼白になる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、口渇感と顔面紅潮は、低血糖と逆の所見になっている。口渇は高血糖の症状であり、顔面は蒼白になる。この2つを取り違えないことが要点になる。低血糖の症状は、「交感神経が働く」ことによるものと、「脳が糖不足になる」ことによるものの2群に分けて覚えると整理しやすい。血糖の値と対応づけると、順序も理解できる。
理解を深める
低血糖の対応と予防を整理する。対応=意識があり経口摂取が可能なら、ブドウ糖10g、または砂糖20g、あるいはブドウ糖を含む清涼飲料水150〜200mLを摂取する。15分後に血糖を再測定し、改善しなければ繰り返す。改善したら、次の食事までに時間があれば、炭水化物を含む軽食を摂る。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合は、砂糖では吸収が遅れるため、必ずブドウ糖を用いる。意識がない、または経口摂取ができない場合は、50%ブドウ糖液20mLを静脈内注射する。家庭では、グルカゴンの点鼻または注射を用いる方法もある。予防=食事の時間と量を守る、運動の前後の補食、シックデイの対応、飲酒の注意(肝の糖新生を抑えるため、遅れて低血糖が起こる)、そして血糖の自己測定。無自覚性低血糖=低血糖を繰り返すと、交感神経症状が現れないまま中枢神経症状に至ることがあり、危険になる。この場合は、血糖の目標をやや高めに設定し、しばらく低血糖を避けることで、警告症状が戻ることがある。患者には、常にブドウ糖を携帯すること、糖尿病であることを示すカードを持つこと、そして運転前に血糖を確認することを指導する。
間違えやすい考え方
症候を問う型で、誤肢に逆の所見(口渇、顔面紅潮)が混ぜられている。交感神経症状と中枢神経症状の2群で切る。
5分で振り返る
①インスリンの過剰投与で血糖が下がると、アドレナリンなどの拮抗ホルモンが分泌される。②交感神経症状(70mg/dL前後から)=発汗、動悸、頻脈、手指のふるえ、不安、顔面蒼白、空腹感。③中枢神経症状(50mg/dL程度から)=頭痛、集中力の低下、眠気、異常行動、けいれん、意識障害。④口渇は高血糖の症状で、低血糖とは逆。顔面は蒼白になる。⑤対応=ブドウ糖10gまたは砂糖20g。α-グルコシダーゼ阻害薬の服用中は必ずブドウ糖。⑥意識がなければ50%ブドウ糖液20mLを静脈内注射。⑦低血糖を繰り返すと無自覚性低血糖になり危険。
1分チェック
- 低血糖の症候は。→ 手足のふるえ(交感神経症状)。顔面は紅潮でなく蒼白になる。
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