僧帽弁狭窄症 mitral stenosis について正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
僧帽弁狭窄症について正しいものを問う。左心房内圧が上昇する、である。
この問題で問われていること
弁膜症の血行動態を、血液の流れに沿って追えるか。
しくみから理解する
僧帽弁は左心房と左心室の間にある。この弁が狭くなると、拡張期に左心房から左心室へ血液が流れにくくなり、左心房内に血液が滞って左心房内圧が上昇する。その結果、左心房は拡大し、心房細動を合併しやすくなる。さらに上流の肺静脈と肺毛細血管の圧も上がり、肺うっ血(労作時呼吸困難、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、血痰)を生じる。進行すれば肺高血圧から右心不全(頸静脈の怒張、肝腫大、下腿の浮腫)に至る。左心房内で血流がよどむため血栓ができやすく、脳塞栓症の原因になる。
選択肢ごとの確認
弁口面積は縮小する。正常では4〜6平方センチメートル程度あるが、狭窄が進むと1.5平方センチメートル未満で症状が出やすくなり、1.0平方センチメートル未満は重症とされる。
狭心痛の合併は多くない。狭心痛を合併しやすいのは大動脈弁狭窄症で、左心室の肥大による酸素需要の増加と、冠血流の低下が重なるためになる。大動脈弁狭窄症の三徴は、狭心痛、失神、心不全になる。
弁尖の先天的な3尖化は原因にならない。大動脈弁は正常が3尖で、先天的に2尖(二尖弁)であることが、大動脈弁狭窄症の原因になる。僧帽弁狭窄症の原因は、その大半がリウマチ熱の後遺症(A群β溶血性レンサ球菌の感染後に生じる自己免疫的な弁の障害)になる。
心雑音は、胸骨右縁第2肋間ではなく、心尖部(第5肋間左鎖骨中線)で聴取する。僧帽弁の音が最もよく伝わる部位になる。拡張中期のランブル(遠雷様の低い雑音)と、Ⅰ音の亢進、そして僧帽弁開放音が特徴になる。胸骨右縁第2肋間は大動脈弁領域で、大動脈弁狭窄症の収縮期雑音を聴く部位になる。
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混同しやすいポイント
誤肢の多くが、大動脈弁狭窄症の特徴を僧帽弁狭窄症に当てはめたものになっている。狭心痛と胸骨右縁第2肋間は、いずれも大動脈弁の話になる。なお大動脈弁は正常で3尖であり、3尖であること自体は病的な特徴ではない。大動脈弁狭窄症の危険因子となる先天性の変異は2尖弁になる。2つの狭窄症を対比して覚えることが、この設問への最短の備えになる。血液の流れに沿って、どこが詰まればどこの圧が上がるかを追えば、血行動態は自力で導ける。
理解を深める
主な弁膜症を整理する。僧帽弁狭窄症=原因の大半はリウマチ熱。左心房圧の上昇→肺うっ血→肺高血圧→右心不全。心房細動と左房内血栓による塞栓症。心尖部で拡張期のランブル。治療は、心房細動への抗凝固療法、心拍数の管理、そして経皮的僧帽弁交連切開術または弁置換術。僧帽弁閉鎖不全症=収縮期に左心室から左心房へ逆流する。原因は、僧帽弁逸脱、腱索の断裂、虚血、感染性心内膜炎など。心尖部で全収縮期の雑音、左腋窩へ放散する。大動脈弁狭窄症=原因は加齢による石灰化、二尖弁、リウマチ熱。左心室の肥大。三徴は狭心痛、失神、心不全。第2肋間右胸骨縁で収縮期の駆出性雑音、頸部へ放散。症状が出れば予後が悪く、手術または経カテーテル的大動脈弁置換術の適応になる。大動脈弁閉鎖不全症=拡張期に大動脈から左心室へ逆流する。脈圧の増大と、それによる特徴的な所見(水衝脈)。看護では、心不全の徴候(呼吸困難、浮腫、体重の増加、易疲労感)の観察、活動と休息の調整、塩分と水分の管理、服薬の支援、そして感染性心内膜炎の予防(歯科処置の前の抗菌薬、口腔の清潔)が要点になる。
間違えやすい考え方
疾患の特徴を問う型で、誤肢の多くが大動脈弁狭窄症の特徴である。血液の流れで血行動態を導く。
5分で振り返る
①僧帽弁は左心房と左心室の間にある。狭窄すると左心房内圧が上昇する。②左心房の拡大→心房細動→左房内血栓→脳塞栓症。③上流の肺静脈と肺毛細血管の圧が上がり肺うっ血、進行して肺高血圧と右心不全。④弁口面積は縮小する(1.5平方センチメートル未満で症状、1.0未満で重症)。⑤原因の大半はリウマチ熱の後遺症。⑥心雑音は心尖部で聴く(拡張中期のランブル、Ⅰ音の亢進、僧帽弁開放音)。⑦狭心痛・失神・心不全の三徴、二尖弁が原因、胸骨右縁第2肋間の雑音は、いずれも大動脈弁狭窄症。
1分チェック
- 僧帽弁狭窄症では。→ 左心房内圧が上昇する(肺うっ血、心房細動、左房内血栓)。
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