高齢者に脱水が起こりやすくなる要因はどれか。2つ選べ。
公式正答:2・3
解説
高齢者に脱水が起こりやすくなる要因を2つ選ぶ。筋肉量の減少、および細胞内液量の減少である。
この問題で問われていること
体液の分布と、加齢による変化を結びつけられるか。
しくみから理解する
体内の水分は、細胞内液と細胞外液に分かれる。成人では体重のおよそ60%が水分で、そのうち約3分の2が細胞内液になる。細胞内液の多くは筋肉に含まれるため、筋肉量が多いほど体内の水分量も多くなる。加齢により筋肉量が減ると、それに伴って細胞内液量も減り、体内の水分の総量が減少する(高齢者では体重の約50%)。水分の貯蔵が少ないということは、少しの喪失で脱水に陥りやすいことを意味する。この2つは連動した変化であり、高齢者が脱水になりやすい最も基本的な理由になる。
選択肢ごとの確認
骨量の減少は、骨粗鬆症と骨折のリスクに関わるが、体液量には直接影響しない。骨の中の水分は限られており、脱水の要因にはならない。
渇中枢の感受性は亢進ではなく低下する。体液が減って血漿浸透圧が上がっても、口渇を感じにくくなるため、自分から水分を摂ろうとしない。これも脱水の要因の一つだが、選択肢の記述は方向が逆になっている。
抗利尿ホルモンの反応性も亢進ではなく低下する。腎の集合管がこのホルモンに反応しにくくなり、尿を濃縮する力が落ちる。そのため、水分が不足していても尿量が減りにくく、水分がさらに失われる。この選択肢も方向が逆になっている。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち2つ(渇中枢、抗利尿ホルモン)は、実際には脱水の要因になるものを、方向を逆にして置いている。感受性と反応性は「低下」するのであって「亢進」ではない。この向きを読み違えると、4つとも正しく見えてしまう。設問文の語尾(亢進か低下か)を必ず確認する。骨量だけが、体液と関係のない要素になる。
理解を深める
高齢者の脱水の要因と対応を整理する。要因=①体内水分量の減少(筋肉量と細胞内液量の減少)、②口渇感の低下(渇中枢の感受性の低下)、③腎の尿濃縮力の低下(抗利尿ホルモンへの反応性の低下、糸球体濾過量の低下)、④意図的な水分制限(夜間のトイレを避ける、失禁を心配する、飲み込みにくい)、⑤嚥下障害と食事摂取量の低下(食事からの水分も大きい)、⑥薬剤(利尿薬、下剤)、⑦発熱、下痢、嘔吐、高温環境。症状=口腔粘膜の乾燥、皮膚の緊張(ツルゴール)の低下、腋窩の乾燥、頻脈、血圧の低下、起立性低血圧、尿量の減少と濃縮、体重の減少、そして意識の変容(せん妄、傾眠)。高齢者では、症状が非特異的で、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「転倒した」という形で現れることが多い。評価=体重の変化が最も鋭敏な指標になる。皮膚の緊張は、加齢そのものでも低下するため、前胸部や前額部で確認する方が正確になる。血液検査では、尿素窒素とクレアチニンの比、ヘマトクリット、血清ナトリウム、そして血漿浸透圧を用いる。対応=経口補水(少量を頻回に、好みに合わせて、ゼリーや汁物も活用する)、食事の工夫、環境の調整(室温、湿度)、そして必要に応じた輸液。予防としては、決まった時間に水分を勧める、目に見える場所に飲み物を置く、そして水分の摂取量を記録することが有効になる。
間違えやすい考え方
要因を2つ選ぶ型で、誤肢に方向を逆にした記述が混ぜられている。語尾(亢進か低下か)を確認して切る。
5分で振り返る
①体内の水分は細胞内液(約3分の2)と細胞外液に分かれ、細胞内液の多くは筋肉に含まれる。②加齢で筋肉量が減ると細胞内液量も減り、体内水分量は成人の約60%から約50%へ下がる。③貯蔵が少ないため、少しの喪失で脱水になる。④渇中枢の感受性は低下する(口渇を感じにくい)。⑤抗利尿ホルモンへの反応性も低下し、尿を濃縮できない。⑥症状は非特異的(元気がない、食欲不振、転倒、せん妄)。評価は体重の変化が最も鋭敏。⑦皮膚の緊張は加齢でも低下するため、前胸部や前額部で確認する。
1分チェック
- 高齢者が脱水になりやすいのは。→ 筋肉量の減少と細胞内液量の減少(体内の水分の総量が少ない)。
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