次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(28歳、女性、美容師)はゴルフが趣味である。同居しているパートナーと1週前にゴルフに行った後から、顔面の紅斑、微熱、全身倦怠感および手指の関節痛が現れた。病院を受診したところ、全身性エリテマトーデスsystemiclupuserythematosus〈SLE〉と診断され入院した。Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話した。バイタルサイン:体温37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。血液所見:赤血球260万/μL、Hb9.0g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性。尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。神経学的検査:異常所見なし。12誘導心電図:異常所見なし。胸部エックス線写真:異常所見なし。
A さんはステロイドパルス療法の後、副腎皮質ステロイド薬の内服治療が開始 された。入院3週ころから満月様顔貌がみられたため、外見の変化に気持ちが落ち 込むようになった。 A さんへの対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
副腎皮質ステロイド薬の内服により満月様顔貌がみられ、外見の変化に落ち込んでいる28歳女性への対応を問う。薬の量が減れば満月様顔貌は軽減すると説明することである。
この問題で問われていること
副作用の可逆性を、正確な情報として伝えられるか。
しくみから理解する
満月様顔貌は、副腎皮質ステロイドの作用により、脂肪が顔面、頸部、体幹へ再分布することで生じる。用量に依存して現れ、減量に伴って軽減し、中止すれば元に戻る、可逆的な変化になる。したがって、「薬の量が減れば軽減する」という説明は、事実にもとづく正確な情報であり、患者の落ち込みに対して見通しを与える。根拠のない励ましでも、気持ちの否定でもなく、いま起きていることの意味と、これからどうなるかを伝えることが、この場面で最も有効な支援になる。
選択肢ごとの確認
「気にする必要はない」と励ますことは、患者の気持ちを否定することになる。28歳の女性、しかも美容師という職業にとって、外見の変化は仕事にも自己像にも関わる重大な問題であり、軽く扱ってはならない。
パートナーの面会を制限することは、患者の意思を無視した対応になる。誰に会うかは本人が決めることであり、また支えとなる人との関わりを断つことは、孤立を深める。もし患者自身が「会いたくない」と言うのであれば、その気持ちを受け止めたうえで、理由と本人の希望を確認する。
「外見よりも病気の治療を優先する」と説明することは、二者択一を迫る形になり、患者の悩みを軽視することになる。治療の継続と、外見への苦痛への対応は、両立させるべきものになる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、否定、制限、そして優先順位の押しつけという、いずれも患者の気持ちを扱わない対応になっている。この設問の要点は、「気持ちに応える」ことと「正確な情報を伝える」ことが両立しうる、という点にある。可逆的な変化であることを知っていれば、慰めではなく事実として伝えられる。逆に、可逆性を知らなければ、根拠のない励ましか、話題の回避しかできない。
理解を深める
副腎皮質ステロイドの副作用と支援を整理する。外見に関わるもの=満月様顔貌、中心性肥満、野牛肩、ざ瘡、多毛、皮膚の菲薄化と皮膚線条、そして紫斑。これらの多くは減量と中止により軽減するが、皮膚線条は残ることがある。代謝=高血糖、脂質異常、電解質の異常(低カリウム血症)、体重の増加。骨=骨粗鬆症(予防にビスホスホネート製剤とカルシウム、ビタミンD)、大腿骨頭壊死。感染=易感染性、結核の再燃、日和見感染。消化管=消化性潰瘍。精神=不眠、気分の変動、多幸感、抑うつ、まれに精神病症状。眼=白内障、緑内障。副腎=長期使用による副腎皮質機能の抑制。急に中止すると離脱症状(倦怠感、悪心、低血圧、ショック)を生じるため、必ず漸減する。看護=これらを一度に伝えると不安を招くため、優先度と時期に応じて説明する。外見の変化については、①可逆的であることを伝える、②化粧、髪型、服装などの工夫を一緒に考える、③同じ経験をした人の話を紹介する、④気持ちを話せる場をつくる、といった支援がある。医療者が外見の変化を「よくあること」として流さない姿勢が、患者が悩みを話せるかどうかを左右する。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が否定・制限・優先順位の押しつけである。気持ちに応えつつ正確な情報を伝えるで切る。
5分で振り返る
①満月様顔貌はステロイドによる脂肪の再分布で生じ、用量に依存する。減量・中止により軽減する可逆的な変化。②「気にしなくていい」は気持ちの否定、「治療を優先」は二者択一の押しつけになる。③外見の副作用=満月様顔貌、中心性肥満、野牛肩、ざ瘡、多毛、皮膚の菲薄化、皮膚線条、紫斑。④他の副作用=高血糖、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死、易感染性、消化性潰瘍、不眠と気分の変動、白内障と緑内障。⑤長期使用後に急に中止すると離脱症状を招くため必ず漸減する。⑥支援=可逆性を伝える、工夫を一緒に考える、気持ちを話せる場をつくる。⑦医療者が「よくあること」として流さないことが、患者が悩みを話せるかを左右する。
1分チェック
- 満月様顔貌に落ち込む患者には。→ 薬の量が減れば軽減すると説明する(可逆的な変化)。
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