次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(81歳、女性)は夫(86歳)と2人で暮らしている。高血圧症〈hypertension〉で内服治療をしているが、血圧のコントロールはできている。両眼に老人性白内障senilecataractがあり、老人性難聴presbyacusisのために補聴器を使用している。認知機能は問題なく、日常生活動作〈ADL〉はほぼ自立している。1年前から両眼の羞明、霧視が強くなり、視力が低下して趣味の編み物ができなくなってきた。また、家の中を移動するときに小さな段差につまずいたりドアにぶつかるなど、歩行時の転倒の危険性が増えた。Aさんは自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたいという希望があり、10日間程度の入院で両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行うことになった。
A さんの手術は局所麻酔下で行われ、10 分程度で終了した。手術中および手術 直後のバイタルサインに問題はなく、病室に戻ってきた。A さんは眼痛や頭痛、 気分不快などの症状はなく、「無事に終わって良かった」と話している。 手術後のA さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
局所麻酔下で白内障手術を受けた81歳女性への、手術後の説明を問う。医師の許可があるまでは頭を振る動作をしない、である。
この問題で問われていること
術後の眼を保護する理由と、制限の範囲を説明できるか。
しくみから理解する
超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術では、水晶体を包む囊を残し、その中へ眼内レンズを固定する。術直後は、この固定が安定しておらず、また創(切開部)も塞がりきっていない。頭を強く振る、前かがみになる、重い物を持つ、いきむといった動作は、眼圧を上げ、眼内レンズの位置のずれ、創からの漏れ、そして出血や感染の危険を高める。したがって、医師の許可が出るまで、これらの動作は避けるよう指導する。目をこすらないこと、保護用の眼帯や眼鏡を用いることも同じ目的になる。
選択肢ごとの確認
手術直後から点眼するわけではない。点眼の開始の時期は、術式と施設の方針によるが、通常は手術の翌日、診察を受けてから開始することが多い。指示に従って開始する。点眼薬は、抗菌薬と抗炎症薬を併用することが一般的で、種類と回数、そして5分以上あけるといった手技の指導が必要になる。
洗顔は手術の翌日からではない。創が安定するまで、通常は1週間程度、洗顔と洗髪に制限がある(首から下のシャワーは翌日から可能なことが多い)。この期間は、清拭やタオルで拭く方法をとり、洗髪は美容室での仰向けの洗髪や、他者による介助で、水と石けんが目に入らないようにする。時期は施設の指示による。
手術後24時間のベッド上の安静も不要になる。この術式は侵襲が小さく、局所麻酔で10分程度で終わるため、術直後から歩行できることが多い。むしろ、高齢者では長時間の臥床が廃用と転倒のリスクを高めるため、早期に離床する。ただし、片眼が眼帯で覆われていると距離感がつかみにくく、転倒しやすいため、初回の歩行は付き添う。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも時期が実際と異なる(点眼は早すぎる、洗顔は早すぎる、安静は長すぎる)。この術式は低侵襲であり、活動の制限は最小限にとどめる一方で、眼を圧迫し眼圧を上げる動作だけは厳しく制限する、という区別が要点になる。「何をしてよいか」と「何をしてはいけないか」を、根拠とともに整理する。
理解を深める
白内障手術後の指導を整理する。制限=目をこすらない、押さえない、頭を強く振らない、前かがみを避ける、重い物を持たない、いきまない(便秘を防ぐ)、洗顔と洗髪は指示があるまで控える、化粧は1週間程度控える、プールと温泉は1か月程度控える、埃の多い場所と草むしりを避ける。可能なこと=歩行、食事、テレビ、読書(疲れない範囲で)、そして首から下のシャワー。点眼=手を洗ってから、下眼瞼を軽く引いて、まつ毛や眼に容器の先を触れさせずに1滴。点眼後は目頭を押さえて1〜5分閉眼する。複数の薬は5分以上あける。回数と期間を守り、症状がなくても続ける。観察=眼痛、急な視力の低下、充血の増強、眼脂の増加、そして飛蚊症や光視症の出現があれば、直ちに受診する(眼内炎、眼圧の上昇、網膜剝離の可能性)。生活=術後は見え方が変わるため、眼鏡の調整が必要になることが多い(術後1か月程度で処方する)。また、これまで見えにくかった段差や物がはっきり見えるようになる一方、距離感が変わることで転倒することもある。この患者は歩行時の転倒の危険が増していると記されているため、環境の整備とあわせて注意を促す。趣味の編み物については、術後の経過を見ながら、明るさと姿勢を工夫して再開できることを伝えると、意欲につながる。
間違えやすい考え方
術後の指導を問う型で、誤肢がすべて時期の誤りである。低侵襲だが眼圧を上げる動作は制限するで切る。
5分で振り返る
①術直後は眼内レンズの固定と創が安定していない。頭を振る、前かがみ、重い物、いきむ動作は眼圧を上げ危険。②目をこすらない、保護用の眼帯や眼鏡を用いる。③点眼は通常、手術の翌日、診察を受けてから開始する。④洗顔と洗髪は1週間程度制限する(首から下のシャワーは翌日から可能なことが多い)。⑤24時間の臥床は不要。早期に離床する(片眼の眼帯で距離感がつかみにくく転倒しやすいので初回は付き添う)。⑥点眼は1滴、目頭を押さえて閉眼、複数の薬は5分以上あける。⑦眼痛、急な視力低下、充血の増強、眼脂の増加、飛蚊症の出現は直ちに受診する。
1分チェック
- 白内障手術後は。→ 医師の許可があるまで頭を振らない(眼圧の上昇と眼内レンズのずれを防ぐ)。
この問題に対応する教材の確認中です。