次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(81歳、女性)は夫(86歳)と2人で暮らしている。高血圧症〈hypertension〉で内服治療をしているが、血圧のコントロールはできている。両眼に老人性白内障senilecataractがあり、老人性難聴presbyacusisのために補聴器を使用している。認知機能は問題なく、日常生活動作〈ADL〉はほぼ自立している。1年前から両眼の羞明、霧視が強くなり、視力が低下して趣味の編み物ができなくなってきた。また、家の中を移動するときに小さな段差につまずいたりドアにぶつかるなど、歩行時の転倒の危険性が増えた。Aさんは自宅での生活を安全に送りたい、趣味を続けたいという希望があり、10日間程度の入院で両眼の超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行うことになった。
手術後2日、A さんは日中はベッドに横になって過ごしている時間が多い。夜 間にA さんから看護師に「手術後はゆっくり眠れていません。どうしたらよいで しょうか」という訴えがあった。 A さんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
手術後2日、日中はベッドで過ごすことが多く、夜間に眠れないと訴える81歳女性への対応を問う。日中はベッドから離れて過ごすことを促すことである。
この問題で問われていること
睡眠と覚醒のリズムから、対応を導けるか。
しくみから理解する
睡眠と覚醒のリズムは、日中の活動と光の刺激によって整えられる。日中にベッドで横になって過ごしていると、活動量が減り、日光を浴びる機会も減るため、夜間の睡眠への圧力が下がり、リズムも乱れる。加えて、日中のうたた寝が夜の眠りをさらに浅くする。したがって、日中に離床して活動することが、夜間の睡眠を改善する最も基本的な対応になる。加えて、この患者は手術後2日で、術式も低侵襲であり、離床を制限する理由がない。離床は、廃用症候群と転倒の予防にもつながる。
選択肢ごとの確認
寝る前に温かい緑茶を飲むことは適切でない。緑茶にはカフェインが含まれ、覚醒作用がある。温かい飲み物という点では入眠を助けるが、カフェインを含まないもの(白湯、麦茶、カフェインを含まないハーブティー、温めた牛乳)を選ぶ。
眠れなくてもベッドに横になっていることを勧めることは、かえって不眠を強める。ベッドで眠れない時間を過ごすと、「ベッド=眠れない場所」という結びつきが生じ、緊張が高まる。眠れないときは、いったんベッドから離れて、静かに過ごし、眠気が来てから戻るという方法(刺激制御法)が有効になる。
「夜はよく眠っている」と伝えることは、患者の訴えを否定することになる。看護師が巡回した時点で目を閉じていても、本人の実感としては眠れていないことがある。訴えを事実として受け止め、その内容(入眠が困難か、途中で目が覚めるか、早く目覚めるか、熟眠感がないか)を具体的に聞き取ることから始める。
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混同しやすいポイント
誤肢は、カフェインの見落とし、ベッドでの滞在の延長、そして訴えの否定という3点になる。とくに、「よく眠っているように見える」という観察と、本人の訴えが食い違うことはよくあり、その場合に本人の訴えを軽視しないことが重要になる。不眠は主観的な体験であり、本人の実感が判断の基準になる。
理解を深める
高齢者の不眠への対応を整理する。まず原因を探る=身体的要因(疼痛、掻痒、呼吸困難、頻尿、こむら返り、むずむず脚症候群、睡眠時無呼吸)、精神的要因(不安、抑うつ、せん妄)、環境(音、光、温度、同室者、ナースコールの音、頻回の巡回)、薬剤(利尿薬の投与時間、ステロイド、一部の降圧薬)、そして生活のリズム(日中の臥床、うたた寝、活動量の不足)。非薬物的な対応=日中の離床と活動、日光を浴びる(午前中が有効)、規則的な生活(起床の時間を一定に)、就寝前のカフェインとアルコールを避ける、就寝前の入浴(就寝の1〜2時間前)、環境の調整(消灯、静けさ、適温)、そして寝る直前の水分の摂りすぎを避ける。加齢による生理的な変化=深い睡眠が減り、中途覚醒が増え、早朝に目覚めやすくなる。総睡眠時間も短くなる。これは正常な変化であり、「若い頃と同じように眠れないこと」を過度に問題としないことも大切になる。薬物療法=高齢者では、ふらつき、転倒、日中の眠気、認知機能への影響、そして依存のリスクがあるため、非薬物的な対応を先に行い、必要な場合も最小限の量と期間にとどめる。とくにベンゾジアゼピン系は転倒の危険を高めるため慎重に用いる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢がカフェイン・ベッドでの滞在・訴えの否定である。睡眠と覚醒のリズムで切る。
5分で振り返る
①睡眠と覚醒のリズムは、日中の活動と光の刺激で整う。日中の臥床は夜間の睡眠を妨げる。②緑茶にはカフェインが含まれる。就寝前は白湯、麦茶、温めた牛乳などを選ぶ。③眠れないままベッドにいると「眠れない場所」という結びつきが生じる。いったん離れて眠気が来てから戻る。④「よく眠っている」と訴えを否定しない。不眠は主観的な体験。⑤原因を探る=疼痛、頻尿、掻痒、不安、せん妄、環境、薬剤、生活のリズム。⑥加齢では深い睡眠が減り、中途覚醒と早朝覚醒が増える。これは正常な変化。⑦睡眠薬は転倒とふらつきのリスクがあり、非薬物的な対応を先に行う。
1分チェック
- 夜間の不眠には。→ 日中に離床して活動することを促す(リズムを整える)。
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