次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(75歳、男性)は妻(75歳)と2人暮らしで、15年前にParkinson〈パーキンソン〉病Parkinsondiseaseと診断された。7年前よりレボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn&Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージⅣで、要介護2である。妻は腰痛のため毎日リハビリテーション目的で通院中である。妻の介護負担を軽減するため、Aさんは毎月10日間、介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。今回は妻の腰痛が増強したため、Aさんは予定を早めて入所した。Aさんは握力が低下しているが、スプーンを使用し自力で食事を摂取している。食事中に姿勢が崩れることが多く、むせや食べこぼしがある。
看護師のA さんへの食事援助で正しいのはどれか。
公式正答:2
解説
パーキンソン病のホーエン・ヤール重症度分類ステージⅣで、食事中に姿勢が崩れ、むせと食べこぼしがある75歳男性への食事援助を問う。座位時の体幹を安定させることである。
この問題で問われていること
姿勢と嚥下の関係を説明できるか。
しくみから理解する
安全な嚥下には、安定した姿勢が土台になる。体幹が傾いたり崩れたりすると、頸部の位置が変わり、嚥下に関わる筋の働きが乱れ、また食物が口腔内で偏って送り込みにくくなる。パーキンソン病では、姿勢反射の障害と前傾姿勢のため、座位を保つことが難しい。したがって、椅子の背もたれ、肘掛け、クッション、足底の接地、そしてテーブルの高さを調整して、体幹を安定させることが、むせと食べこぼしの両方に対する最も基本的な援助になる。姿勢が安定して初めて、上肢も使いやすくなる。
選択肢ごとの確認
頸部を後屈した体位は危険になる。後屈すると気道が直線的に開き、食物が気管へ流れ込みやすくなる。嚥下では、軽く頸部を前屈させる(顎を引く)姿勢が基本になり、これにより気道が狭まり、食道が開きやすくなる。
嚥下体操は食後ではなく食前に行う。嚥下に関わる筋を動かし、唾液の分泌を促し、覚醒を高めることで、嚥下の準備を整える目的になる。食後に行っても、その食事の安全には寄与しない。
全介助にすることは適切でない。この患者は、握力が低下しているものの、スプーンを使って自力で食事を摂れている。自力で食べることは、食事の楽しみ、上肢の機能の維持、そして自尊心に関わる。こぼすことを理由に全介助にすれば、その機会を奪うことになる。太柄のスプーン、滑り止めマット、縁の高い皿、そしてエプロンの使用といった工夫で、自力での摂取を支えるのが適切な援助になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、頸部の向き(後屈は逆)、体操の時期(食後は無意味)、そして介助の程度(全介助は過剰)という3点で誤っている。摂食嚥下の援助では、「姿勢を整える」「顎を引く」「本人の力を活かす」の3つが原則になる。パーキンソン病では、動作が遅く、また食事に時間がかかるため、急がせないことも重要になる。
理解を深める
パーキンソン病の食事の援助を整理する。姿勢=椅子に深く腰かけ、背もたれと肘掛けで体幹を支える。足底を床につける(届かなければ足台)。頸部を軽く前屈させる。テーブルの高さは肘が90度程度になるように。車椅子で食べる場合も、クッションで姿勢を整える。食形態=嚥下の状態に応じて、刻み、軟菜、ゼリー、そしてとろみを用いる。ただし、刻み食は口腔内でまとまりにくく、かえって誤嚥を招くことがあるため、まとまりやすい形態を選ぶ。水分の粘度は嚥下評価に基づいて個別に決める。とろみは一部の患者で誤嚥を減らしうるが、咽頭残留、脱水、服薬への影響も確認する。方法=一口量を少なくする、次の一口を急がない、飲み込んだことを確認してから次を勧める、交互嚥下(固形と液体を交互に)、そして食後は座位を30分程度保つ。薬=レボドパの効果が出ている時間帯(オン)に食事をとると、動作がしやすくなる。薬の効果が切れると動きにくくなる(ウェアリングオフ)ため、服薬の時間と食事の時間の関係を調整する。また、高蛋白の食事はレボドパの吸収を妨げることがあるため、蛋白質を夕食に寄せる工夫が用いられることもある。観察=むせ、湿性嗄声、食事中と食後の咳、食事に要する時間、摂取量、体重、そして発熱(誤嚥性肺炎)。口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防に最も有効な手段の一つになる。
間違えやすい考え方
食事援助を問う型で、誤肢が頸部の向き・体操の時期・介助の程度で誤っている。姿勢を整えるが土台になる。
5分で振り返る
①安全な嚥下には安定した姿勢が土台。背もたれ、肘掛け、クッション、足底の接地、テーブルの高さを調整する。②頸部は軽く前屈させる(顎を引く)。後屈は気道が直線的に開き誤嚥しやすい。③嚥下体操は食前に行う(筋を動かし唾液を促し覚醒を高める)。④自力で食べられる人を全介助にしない。太柄のスプーン、滑り止めマット、縁の高い皿で支える。⑤水分のとろみは一律に付けず、嚥下評価に基づく粘度とし、摂取量や残留も確認する。刻み食はまとまりにくく誤嚥を招くことがある。⑥一口量を少なく、急がせない、飲み込みを確認してから次を勧める。食後は座位を30分程度保つ。⑦レボドパの効果が出ている時間帯に食事をとると動作がしやすい。
1分チェック
- 食事中に姿勢が崩れる患者には。→ 座位時の体幹を安定させる(姿勢が嚥下の土台)。
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