次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(75歳、男性)は妻(75歳)と2人暮らしで、15年前にParkinson〈パーキンソン〉病Parkinsondiseaseと診断された。7年前よりレボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn&Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージⅣで、要介護2である。妻は腰痛のため毎日リハビリテーション目的で通院中である。妻の介護負担を軽減するため、Aさんは毎月10日間、介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。今回は妻の腰痛が増強したため、Aさんは予定を早めて入所した。Aさんは握力が低下しているが、スプーンを使用し自力で食事を摂取している。食事中に姿勢が崩れることが多く、むせや食べこぼしがある。
A さんは社交的で短期入所中はいつも介護老人保健施設の利用者や職員と笑顔 で会話していたが、今回は、会話中に急に表情がなくなり声が聞きとれないほど小 さくなったり、手足の震えが出現することがあった。食後に薬を内服すると症状は 改善するが、内服して2時間後には同じような症状が現れることがあった。 A さんの症状はどれか。
公式正答:4
解説
レボドパを内服中のパーキンソン病患者で、内服すると症状が改善し、2時間後に同じ症状が現れる状態を問う。ウェアリングオフ現象である。
この問題で問われていること
薬効の変動を、時間との関係で区別できるか。
しくみから理解する
ウェアリングオフ現象は、レボドパの効果が持続する時間が短くなり、次の内服の前に薬効が切れて症状が悪化する状態を指す。病期が進むと、ドパミンを貯えて放出する神経終末が減り、血中濃度の変動がそのまま症状に反映されるようになるため生じる。特徴は、服薬の時刻と症状の変動が対応することにある。この事例では、内服後に改善し、2時間後に再び症状が現れており、薬効の持続時間が短くなっていることが分かる。対応は、レボドパの分割回数を増やす、他の薬剤(ドパミンアゴニスト、モノアミン酸化酵素B阻害薬、カテコール-O-メチル基転移酵素阻害薬)を併用する、そして進行例では持続的な投与法や外科的治療を検討することになる。
選択肢ごとの確認
オンオフ現象は、服薬の時刻とは無関係に、突然症状が良くなったり悪くなったりする状態を指す。スイッチが切り替わるように急激に変動する点が特徴で、予測が難しい。この事例では、服薬との対応が明確であるため該当しない。
ジスキネジアは、自分の意思とは関係なく、身体が勝手に動いてしまう不随意運動を指す。レボドパの血中濃度が高い時間帯に生じることが多く、口をもぐもぐさせる、首や体幹をくねらせるといった動きになる。この事例で述べられている症状(表情の消失、声が小さくなる、手足の震え)は、むしろパーキンソン病の症状そのものであり、ジスキネジアではない。
アナフィラキシー反応は、急速に生じる全身性の過敏反応で、皮疹、掻痒、呼吸困難、喘鳴、血圧の低下、意識障害などをきたす。7年間内服を続けている薬に対して、この形で生じることは考えにくく、症状も合わない。
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混同しやすいポイント
「服薬の時刻と対応するか」が、ウェアリングオフとオンオフを分ける鍵になる。対応するのがウェアリングオフ、対応しないのがオンオフになる。また、症状の内容も手がかりで、パーキンソン病の症状が現れる(動けなくなる)のがオフの状態、余計な動きが出るのがジスキネジアになる。ただしジスキネジアは、血中濃度が高い時間帯に生じるピーク時の型が最も多いものの、濃度の上昇期と下降期に現れる二相性ジスキネジアや、濃度が低い時間帯に生じるオフ期ジストニア(早朝の足のジストニアなど)もある。不随意運動があれば薬が効きすぎている、と一律には言えない。
理解を深める
パーキンソン病の症状と治療を整理する。四大症状=安静時振戦、筋強剛(固縮)、無動・寡動、姿勢反射障害。加えて、仮面様顔貌、小声、小刻み歩行、すくみ足、突進現象、そして前傾前屈姿勢がみられる。非運動症状も重要で、便秘、起立性低血圧、排尿障害、発汗の異常、嗅覚の低下、睡眠の障害(レム睡眠行動障害)、抑うつ、そして認知機能の低下がある。便秘と嗅覚の低下は、運動症状より何年も前に現れることがある。ホーエン・ヤール重症度分類=Ⅰ(一側のみ)、Ⅱ(両側だが姿勢反射障害なし)、Ⅲ(姿勢反射障害あり、日常生活は自立)、Ⅳ(介助が必要だが歩行は可能)、Ⅴ(車椅子または寝たきり)。この事例はステージⅣになる。治療=レボドパ(最も効果が高いが、長期使用で運動合併症を生じる)、ドパミンアゴニスト、モノアミン酸化酵素B阻害薬、アマンタジン、抗コリン薬、そして進行例では脳深部刺激療法やレボドパの持続経腸投与。看護=服薬の時間の厳守(食事、活動、リハビリテーションの時間を薬効に合わせる)、転倒の予防(すくみ足への対応:床のテープ、号令、リズム、視覚的な手がかり)、便秘の管理、起立性低血圧への注意、そして日常生活動作の維持になる。
間違えやすい考え方
現象を問う型で、誤肢が別の運動合併症とアレルギー反応である。服薬の時刻と対応するかで切る。
5分で振り返る
①ウェアリングオフ現象=レボドパの効果の持続時間が短くなり、次の内服の前に症状が悪化する。服薬の時刻と対応する。②オンオフ現象=服薬の時刻と無関係に、突然症状が変動する。③ジスキネジア=レボドパに関連する不随意運動。血中濃度が高い時間帯に生じるピーク時の型が最も多いが、濃度の上昇期と下降期に現れる二相性ジスキネジアや、濃度が低い時間帯に生じるオフ期ジストニア(早朝の足のジストニアなど)もある。④対応=分割回数を増やす、他剤の併用、進行例では持続投与や外科的治療。⑤四大症状=安静時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害。⑥非運動症状=便秘、起立性低血圧、嗅覚の低下、レム睡眠行動障害、抑うつ。⑦ホーエン・ヤールⅣ=介助が必要だが歩行は可能。
1分チェック
- 内服の2時間後に症状が戻るのは。→ ウェアリングオフ現象(薬効の持続時間の短縮)。
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