次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(75歳、男性)は妻(75歳)と2人暮らしで、15年前にParkinson〈パーキンソン〉病Parkinsondiseaseと診断された。7年前よりレボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn&Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージⅣで、要介護2である。妻は腰痛のため毎日リハビリテーション目的で通院中である。妻の介護負担を軽減するため、Aさんは毎月10日間、介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。今回は妻の腰痛が増強したため、Aさんは予定を早めて入所した。Aさんは握力が低下しているが、スプーンを使用し自力で食事を摂取している。食事中に姿勢が崩れることが多く、むせや食べこぼしがある。
妻の腰痛が改善したため、A さんは自宅に戻ることになった。A さんは「妻に負 担をかけないように自分で動けるようになりたい。自宅でできる運動や注意するこ とを教えてください」と看護師に話した。 A さんへの指導で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
自宅で自分で動けるようになりたいと希望するパーキンソン病の75歳男性への指導を問う。「歩行時に腕を大きく振りましょう」である。
この問題で問われていること
疾患の運動症状に対して、何を意識的に補うかを説明できるか。
しくみから理解する
パーキンソン病では、無動・寡動により、動作が小さく、少なくなる。歩行では、腕の振りが減り、歩幅が小さくなり(小刻み歩行)、そして最初の一歩が出にくくなる(すくみ足)。これに対しては、意識的に大きく動かすことが有効になる。腕を大きく振ると、体幹の回旋が生まれ、歩幅も自然に大きくなり、バランスも保ちやすくなる。「大きく」「意識して」動くという運動療法の考え方は、日常の動作全般に応用できる。あわせて、リズムをとる(号令、メトロノーム、音楽)、視覚的な手がかりを使う(床のテープをまたぐ)といった方法も、すくみ足に有効になる。
選択肢ごとの確認
毎日30分間の階段昇降は、この患者には負担が大きく、危険でもある。ホーエン・ヤール重症度分類ステージⅣで姿勢反射障害があり、階段は転倒と転落のリスクが高い。運動は必要だが、安全な内容と量を選ぶ。
小刻みに歩くことは、症状をそのまま強める方向になる。小刻み歩行は、この疾患の症状であり、それを助長すれば、すくみ足と突進現象が起こりやすくなる。意識して歩幅を大きくとることが指導になる。
毎日1kmという距離の目標も、この患者には適さない。距離を決めて課すと、疲労と転倒を招く。また、薬効の変動(ウェアリングオフ)があるため、日や時間帯によって動きやすさが変わる。体調と薬効に合わせて、無理のない範囲で行うことが原則になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、負荷が過大なもの(階段、距離)と、症状を助長するもの(小刻み)で構成されている。「大きく動く」という方向が、この疾患の運動療法の核心になる。逆に、「小さく」「速く」「たくさん」は、いずれもこの疾患には合わない。安全性と、症状に対する方向性の2点で判断する。
理解を深める
パーキンソン病の在宅での運動と生活の工夫を整理する。運動=大きくゆっくりとした動作を意識する(歩幅を広く、腕を大きく振る、方向転換は大回りで)、ストレッチ(前傾姿勢と筋強剛に対して、胸を開き、体幹を伸ばす)、体幹の回旋、バランス訓練、そして音楽やリズムに合わせた運動。すくみ足への対応=床のテープや目印をまたぐ、「イチ、ニ」と声を出す、その場で足踏みしてから歩き出す、歩き出す前に一歩下がる。方向転換で起きやすいため、大きく回る。転倒の予防=家の中の段差の解消、じゅうたんの端の固定、手すり、明るい照明、履物(かかとを覆い、滑りにくく、脱げにくいもの)、そして急な方向転換と後ろ向きの動作を避ける。日常生活=服薬の時間に合わせて活動を計画する、時間に余裕をもつ、疲れたら休む、便秘の予防(水分、食物繊維、運動)、起立時はゆっくり(起立性低血圧)。介護者の支援=この事例では妻に腰痛があり、介護の負担が大きい。短期入所の継続、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、そして福祉用具の活用により、双方の生活を支える。介護者自身の健康も、在宅の継続を左右する重要な要素になる。
間違えやすい考え方
運動の指導を問う型で、誤肢が過大な負荷と症状の助長である。「大きく動く」という方向で切る。
5分で振り返る
①パーキンソン病では動作が小さく少なくなる。腕の振りの減少、小刻み歩行、すくみ足。②対応は「大きく」「意識して」動くこと。腕を大きく振ると体幹が回旋し歩幅も広がる。③すくみ足には、リズム(号令、音楽)と視覚的な手がかり(床のテープ)が有効。④小刻みに歩くことは症状を助長し、すくみ足と突進現象を招く。⑤ステージⅣでは階段昇降は転倒と転落の危険が高い。⑥距離や時間を課すと疲労と転倒を招く。薬効の変動に合わせて無理のない範囲で行う。⑦方向転換は大回りで。急な方向転換と後ろ向きの動作を避ける。
1分チェック
- パーキンソン病の歩行では。→ 腕を大きく振る(大きく意識して動く)。
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