次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(2歳、男児)は両親、兄(5歳)の4人家族である。3日前から発熱が続くため、母親と一緒に外来を受診した。診察の結果、川崎病〈Kawasakidisease〉と診断され、個室に入院となり左手背に点滴静脈内留置針が挿入された。入院中は母親が希望し、Aちゃんに付き添っている。Aちゃんにγ-グロブリン療法とアスピリンの内服が開始されることになった。看護師がγ-グロブリン療法の開始のために訪室すると、Aちゃんは不機嫌にぐずって泣いている。
γ-グロブリン療法の開始に伴う看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
公式正答:4・5
解説
川崎病でγ-グロブリン療法を開始する2歳男児への看護師の対応で適切なものを2つ選ぶ。心電図モニターの装着を確認すること、および留置針の刺入部を観察することである。
この問題で問われていること
治療に伴うリスクから、必要な観察を導けるか。
しくみから理解する
免疫グロブリン製剤の大量投与では、急速な投与により循環血液量が増え、心臓への負担が大きくなる。川崎病では冠動脈の病変と心筋炎を生じうるため、心負荷への注意がとくに必要になる。したがって、心電図モニターを装着し、心拍数とリズム、そしてバイタルサインを継続して観察する。また、投与に伴うインフュージョンリアクション(発熱、悪寒、頭痛、悪心、血圧の変動、まれにアナフィラキシー)にも備える。加えて、留置針の刺入部の観察は、血管外漏出、静脈炎、そして自己抜去を早期に捉えるために欠かせない。2歳の子どもは、点滴を気にして触ったり動いたりするため、観察の頻度を高める必要がある。
選択肢ごとの確認
投与中に売店へ行くことはできない。免疫グロブリン製剤は数時間から半日以上かけて持続投与され、その間は心電図モニターとバイタルサインの観察が必要になる。病室から離れることは適切でない。
留置針の自己抜去を防ぐために抑制帯を使うことは、最初に選ぶ方法ではない。抑制は、他に代わる方法がなく、やむを得ない場合に、必要最小限で行うものになる。まず、シーネによる固定、包帯やチューブ型の被覆材で刺入部を見えにくくする、母親に抱いてもらう、遊びや絵本で気をそらす、そして観察の頻度を上げるといった方法をとる。また、右肘関節を抑制するという記述も、留置針が左手背にあることと合わない。
心負荷の軽減のために経口水分摂取を制限することは適切でない。川崎病では発熱が続いており、脱水になりやすい。また、免疫グロブリンの投与により血液の粘稠度が上がるため、十分な水分が必要になる。制限ではなく、水分出納の管理を行う。
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混同しやすいポイント
誤肢は、投与中の行動の制限を軽く見たもの、抑制を安易に選んだもの、そして水分制限という誤った対応で構成されている。治療のリスク(心負荷、過敏反応、血管の問題)から、必要な観察を導くという考え方が要点になる。抑制については、子どもであっても、身体拘束の3要件(切迫性、非代替性、一時性)に照らして判断する。
理解を深める
川崎病の理解を整理する。診断=主要症状6つのうち5つ以上、または4つで冠動脈の病変を認める場合。主要症状が4つ以下で他の疾患が否定されるものを不全型といい、これも川崎病として治療の対象になる。①発熱(改訂第6版〈2019年〉で「5日以上」という期間の要件は削除された。この事例も発熱3日で診断されている)、②両側眼球結膜の充血、③口唇の紅潮・いちご舌・口腔咽頭粘膜のびまん性発赤、④不定形発疹、⑤四肢末端の変化(急性期=手足の硬性浮腫と掌蹠の紅斑、回復期=指先からの膜様落屑)、⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹。最も重要な合併症は冠動脈瘤で、心筋梗塞と突然死の原因になるため、心エコーによる評価を繰り返す。治療=免疫グロブリン大量療法とアスピリン。免疫グロブリンが無効な場合は、追加投与、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤が用いられる。アスピリンは、急性期には抗炎症を目的に高用量、解熱後は抗血小板を目的に低用量で継続する。看護=発熱と苦痛の緩和、皮膚と口腔粘膜のケア(保湿、刺激の少ない食事、口唇の亀裂への軟膏)、水分と栄養の管理、心電図モニターとバイタルサインの観察、そして家族への説明と支援。免疫グロブリンの投与後は、生ワクチンの接種を6か月程度あける必要があるため、退院時に説明する。アスピリンを内服している間の水痘とインフルエンザの罹患は、ライ症候群のリスクがあるため、発症時は直ちに受診するよう伝える。
間違えやすい考え方
対応を2つ選ぶ型で、誤肢が行動制限の軽視・安易な抑制・水分制限である。治療のリスクから観察を導く。
5分で振り返る
①免疫グロブリンの大量投与は循環血液量を増やし心負荷になる。川崎病では冠動脈病変と心筋炎があるため心電図モニターで観察する。②インフュージョンリアクション(発熱、悪寒、血圧変動、まれにアナフィラキシー)に備える。③刺入部の観察で血管外漏出、静脈炎、自己抜去を早期に捉える。④抑制は最後の手段。シーネ固定、刺入部を見えにくくする、母親に抱いてもらう、遊びで気をそらすが先。⑤発熱と免疫グロブリンによる血液粘稠度の上昇のため水分は制限しない。⑥主要症状6つ=発熱、眼球結膜の充血、口唇と口腔の変化、発疹、四肢末端の変化、頸部リンパ節腫脹。⑦免疫グロブリン投与後は生ワクチンを6か月程度あける。
1分チェック
- 免疫グロブリン投与時は。→ 心電図モニターの装着を確認する/刺入部を観察する。
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