次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(2歳、男児)は両親、兄(5歳)の4人家族である。3日前から発熱が続くため、母親と一緒に外来を受診した。診察の結果、川崎病〈Kawasakidisease〉と診断され、個室に入院となり左手背に点滴静脈内留置針が挿入された。入院中は母親が希望し、Aちゃんに付き添っている。Aちゃんにγ-グロブリン療法とアスピリンの内服が開始されることになった。看護師がγ-グロブリン療法の開始のために訪室すると、Aちゃんは不機嫌にぐずって泣いている。
入院4日、A ちゃんは解熱し活気が出てきた。翌日、看護師がA ちゃんを観察 すると、手指の先端から皮膚が膜のように薄くむけていた。 この所見に対する看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
川崎病で入院した2歳男児が、解熱し活気が出た翌日に、手指の先端から皮膚が膜のようにむけている所見のアセスメントを問う。川崎病の回復期の症状である。
この問題で問われていること
疾患の経過の中で、所見の意味を判断できるか。
しくみから理解する
指先からの膜様落屑は、川崎病の主要症状の一つである「四肢末端の変化」の、回復期に現れる所見になる。急性期には手足の硬性浮腫と掌蹠の紅斑がみられ、発症から10日から2週間ほど経った回復期に、指先(爪と皮膚の境目)から膜のように皮膚がむけてくる。これは疾患の自然な経過であり、異常ではない。診断の根拠にもなる所見であり、発熱の時期を過ぎてから受診した患児では、この落屑が診断の手がかりになることもある。
選択肢ごとの確認
免疫グロブリン療法の副作用ではない。この製剤の主な有害事象は、投与中の発熱、悪寒、頭痛、悪心、血圧の変動、そしてまれにアナフィラキシーと血栓症になる。数日後の指先の落屑は、これらに当たらない。
皮膚のツルゴールの低下ではない。ツルゴールは皮膚の張りを指し、脱水の評価に用いる。皮膚をつまんで戻る速さで判定するもので、指先の膜様落屑とは所見が異なる。この患児は解熱し活気も出ており、脱水を示す所見ではない。
皮膚科の受診は必要ない。疾患の経過として予測される所見であり、特別な処置を要しない。乾燥する場合に保湿する程度で、自然に治まる。むしろ、この所見を異常と受け取って不安になる家族に、経過の一部であることを説明することが看護になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、副作用、脱水、そして別の疾患という3つの誤った解釈になっている。いずれも「異常が起きている」という方向であり、経過を知らなければそう見えてしまう。疾患の自然な経過を知っていることで、正常を正常と判断でき、不要な検査と家族の不安を避けられる。アセスメントを問う設問では、「何が起きているか」を、経過と時期に照らして判断する。
理解を深める
川崎病の経過を時期ごとに整理する。急性期(第1〜10病日頃)=発熱、眼球結膜の充血、口唇の紅潮といちご舌、不定形発疹、手足の硬性浮腫と掌蹠の紅斑、頸部リンパ節腫脹、そしてBCG接種部位の発赤(乳児で特徴的な所見になる)。血液検査では、白血球と好中球の増加、C反応性蛋白質の上昇、そして低アルブミン血症。治療は免疫グロブリンとアスピリン。亜急性期(第11〜21病日頃)=解熱し、症状が改善する。指先からの膜様落屑が現れる。血小板が著しく増加する(100万/μLを超えることもある)。この時期は冠動脈瘤が最も形成されやすく、心エコーによる評価が重要になる。血栓の予防のため、アスピリンを低用量で継続する。回復期(第22〜60病日頃)=検査値が正常化する。冠動脈の病変がなければ、アスピリンを中止し、経過観察へ移る。遠隔期=冠動脈瘤が残った場合は、抗血小板薬または抗凝固薬を継続し、長期の経過観察を行う。運動の制限が必要になることもある。家族への説明では、①ほとんどの子どもは後遺症なく回復すること、②冠動脈の評価のために受診を続ける必要があること、③アスピリン内服中に水痘とインフルエンザにかかった場合は直ちに受診すること(ライ症候群)、④免疫グロブリン投与後に生ワクチンをあける期間は、ワクチンの種類と免疫グロブリンの用量による。川崎病に用いる大量投与の後、麻疹風疹混合と水痘については6か月程度の間隔が示される。一方、経口の生ワクチン(ロタウイルス)やBCGは扱いが異なる。接種の予定は、用いた製剤の量と地域の接種基準に照らして主治医と確認する。
間違えやすい考え方
アセスメントを問う型で、誤肢がすべて「異常が起きている」という解釈である。経過と時期に照らして切る。
5分で振り返る
①指先からの膜様落屑は、川崎病の「四肢末端の変化」の回復期の所見。発症から10日〜2週間頃に現れる。②急性期には手足の硬性浮腫と掌蹠の紅斑がみられる。③自然な経過であり、特別な処置は要らない。乾燥すれば保湿する。④免疫グロブリンの有害事象=投与中の発熱、悪寒、血圧変動、まれにアナフィラキシーと血栓症。⑤ツルゴールは皮膚の張りで脱水の評価に用いる。⑥亜急性期(第11〜21病日)は冠動脈瘤が最も形成されやすく、心エコーの評価が重要。血小板が著しく増加する。⑦乳児ではBCG接種部位の発赤が特徴的な所見になる。
1分チェック
- 指先の膜様落屑は。→ 川崎病の回復期の症状(自然な経過)。
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