次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産〈threatenedprematuredelivery〉と診断された。子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。
点滴を開始して30 分後に看護師が訪室すると、A さんはFowler〈ファウラー〉 位で休んでいた。 このときのA さんの状態で看護師が注意して観察すべき項目はどれか。
公式正答:4
解説
切迫早産に対して子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射を開始して30分後の妊婦について、注意して観察すべき項目を問う。脈拍である。
この問題で問われていること
薬理作用から、現れる副作用を導けるか。
しくみから理解する
リトドリン塩酸塩は、β2受容体を刺激して子宮の平滑筋を弛緩させ、子宮収縮を抑える。しかし、β受容体への選択性は完全ではなく、心臓のβ1受容体も刺激するため、母体に頻脈と動悸が生じる。これは最も高頻度にみられる副作用で、投与の開始直後から現れる。したがって、脈拍の観察が優先される。頻脈が著しい場合(母体の心拍数が120回/分を超える場合など)は、投与速度の調整または中止を検討する。胎児にも移行するため、胎児の頻脈も生じうる。
選択肢ごとの確認
経皮的動脈血酸素飽和度も観察の対象になる。まれに肺水腫という重篤な副作用が生じ、その場合は呼吸困難と酸素飽和度の低下をきたす。ただし、投与開始30分の時点で最も高頻度に現れるのは頻脈であり、優先度は脈拍が上になる。
血圧も変化しうる(末梢血管の拡張により拡張期血圧が下がる)。ただし、頻脈ほど顕著ではなく、優先度は下がる。
呼吸数も、肺水腫の徴候として重要になる。ただし同様に、この時点での優先度は脈拍に劣る。
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混同しやすいポイント
「β2刺激薬=心拍数が上がる」という薬理から一意に導ける。誤肢はいずれも観察すべき項目だが、最も高頻度で、最も早く現れる副作用は頻脈になる。優先度を問う設問では、「頻度」と「出現の早さ」の2つで並べる。なお、肺水腫は頻度は低いが重篤であり、長期投与、多胎、輸液量の多さ、副腎皮質ステロイドの併用でリスクが高まるため、あわせて観察する。
理解を深める
切迫早産の管理と看護を整理する。診断=規則的な子宮収縮と、子宮頸管の熟化(開大、展退)を認める状態。経腟超音波による頸管長の測定が予測に有用になる。治療=安静、子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩、硫酸マグネシウム)、感染がある場合の抗菌薬、そして妊娠34週未満では胎児の肺の成熟を促す副腎皮質ステロイドの母体への投与。リトドリンの副作用=母体では頻脈、動悸、手指の振戦、悪心、頭痛、高血糖、低カリウム血症、そしてまれに肺水腫と横紋筋融解症。胎児では頻脈、新生児では母体高血糖に関連した低血糖などに注意する。低カリウム血症は主に母体側の副作用として区別する。硫酸マグネシウムの副作用=熱感、倦怠感、呼吸抑制、腱反射の消失、そして中毒(血中濃度の測定と、深部腱反射・呼吸数・尿量の観察が必要になる)。看護=バイタルサインの継続的な観察、点滴の管理(速度の厳守)、子宮収縮と胎児心拍のモニタリング、性器出血と破水の有無、そして安静に伴う問題(腰背部痛、便秘、深部静脈血栓症、筋力低下、そして精神的な負担)への対応。長期の入院と安静は、妊婦にとって身体的にも心理的にも大きな負担になる。この事例のように働いている女性では、仕事の調整と経済的な不安も生じる。話を聞き、必要な情報(傷病手当金、出産手当金、育児休業)を提供することも支援になる。
間違えやすい考え方
副作用を問う型で、誤肢がいずれも観察すべき項目である。頻度と出現の早さで並べて切る。
5分で振り返る
①リトドリン塩酸塩はβ2受容体を刺激して子宮平滑筋を弛緩させる。②心臓のβ1受容体も刺激するため、母体に頻脈と動悸が生じる。最も高頻度で、投与直後から現れる。③母体の心拍数が120回/分を超える場合は速度の調整または中止を検討する。④胎児にも移行し、胎児頻脈を生じる。⑤まれに肺水腫(呼吸困難、酸素飽和度の低下)が生じる。長期投与、多胎、輸液量、ステロイドの併用でリスクが上がる。⑥他の副作用=手指の振戦、悪心、頭痛、高血糖、低カリウム血症。⑦硫酸マグネシウムでは深部腱反射、呼吸数、尿量を観察する。
1分チェック
- リトドリン投与の直後に最も注意するのは。→ 脈拍(β刺激による頻脈)。
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