次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(33歳、初産婦、会社員)は夫と2人で暮らしている。妊娠28週5日、夕方から下腹部に生理痛のような痛みを感じ、少量の性器出血があったため来院した。来院時、子宮口2cm開大、未破水、8分おきに20秒持続する子宮収縮があり、切迫早産〈threatenedprematuredelivery〉と診断された。子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩)の点滴静脈内注射と安静による治療が開始された。
切迫早産〈threatened premature delivery〉の症状がなくなり、A さんは妊娠35 週0日で退院した。妊娠36 週0 日に妊婦健康診査のために来院した。ノンストレステスト〈NST〉を実施中に、「気 分が悪い」とナースコールがあり看護師が訪れると、A さんは仰臥位になってい た。 A さんへの対応で看護師が最初に行うのはどれか。
公式正答:3
解説
妊娠36週0日の妊婦が、ノンストレステストの実施中に仰臥位で気分不良を訴えた際、最初に行う対応を問う。左側臥位にすることである。
この問題で問われていること
妊娠末期の仰臥位で何が起こるかを説明できるか。
しくみから理解する
妊娠末期には、増大した子宮が仰臥位で下大静脈を圧迫する。下大静脈は脊柱のやや右側を走るため、圧迫を受けると静脈還流が減り、心拍出量が低下して、血圧の低下、悪心、冷汗、めまい、そして意識の低下をきたす。これが仰臥位低血圧症候群になる。子宮胎盤の血流も減るため、胎児の状態も悪化しうる。対応は、子宮を下大静脈から外すことであり、左側臥位にすることで直ちに改善する。原因を取り除く行動が最優先になり、これは器具も指示も要らず、その場で実施できる。
選択肢ごとの確認
医師への報告は必要だが、最初ではない。まず体位を変えて症状を改善させ、その後に報告する。体位変換は数秒で行え、効果も速やかに現れる。
血圧測定も必要だが、最初ではない。原因が明らかで、対応も分かっている状況では、測定より先に体位を変える。改善を確認するために、その後に測定する。
酸素吸入も、この時点での最初の対応ではない。低酸素が原因ではなく、静脈還流の障害が原因であるため、体位を変えなければ改善しない。
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混同しやすいポイント
「原因が分かっていて、その場で取り除けるなら、まずそれを行う」という原則になる。誤肢のうち、胎児心拍数の確認と医師への報告は、体位を変えた後に行う再評価と報告にあたる。一方、酸素投与は、母体の酸素化が保たれていれば必要でなく、胎児機能不全が疑われる場面でも母体への一律の投与は推奨されていない。体位を変えることで症状は改善する。妊婦の仰臥位という条件が示された時点で、この症候群を想起できるかどうかが分かれ目になる。予防としては、妊娠中期以降の検査と処置では、最初から左側臥位またはくさび状のクッションで右腰部を挙上した体位をとる。
理解を深める
妊娠に伴う母体の変化を整理する。循環=循環血液量が約1.5倍に増える(血漿の増加が赤血球の増加を上回るため、見かけ上のヘモグロビン値が下がる=水血症)。心拍出量の増加、心拍数の増加、そして末梢血管抵抗の低下により、妊娠中期には血圧がやや下がる。仰臥位低血圧症候群は妊娠20週頃以降に起こりうる。呼吸=子宮の増大により横隔膜が挙上し、1回換気量が増え、機能的残気量が減る。息切れを感じやすい。消化=プロゲステロンの作用で平滑筋が弛緩し、胃食道逆流と便秘が起こりやすい。腎=腎血流と糸球体濾過量が増え、尿糖が出やすくなる。頻尿。血液=凝固能が亢進し、血栓ができやすい(深部静脈血栓症と肺塞栓症のリスク)。骨格=腰椎の前弯が強まり、腰痛を生じる。ノンストレステストの実施では、母体を半坐位または左側臥位とし、20〜40分程度、胎児心拍と子宮収縮を記録する。判定は、胎児心拍数基線(110〜160回/分)、基線細変動、一過性頻脈の有無、そして一過性徐脈の有無で行う。妊娠32週以降では、20分間に15拍以上・15秒以上の一過性頻脈が2回以上あれば、胎児の状態が良好(リアクティブ)と判定される。
間違えやすい考え方
最初の行動を問う型で、原因をその場で取り除けるかで切る。誤肢には、後に行う再評価や報告と、条件が整わなければ必要でない処置(酸素投与)が混ざっている。
5分で振り返る
①妊娠末期の仰臥位では、増大した子宮が下大静脈を圧迫し、静脈還流と心拍出量が減る。②症状=血圧の低下、悪心、冷汗、めまい、意識の低下。子宮胎盤の血流も減る。③下大静脈は脊柱のやや右側を走るため、左側臥位で圧迫が外れる。④原因が分かっていて、その場で取り除けるなら、まずそれを行う。⑤予防として、妊娠中期以降は最初から左側臥位か右腰部の挙上をとる。⑥妊娠では循環血液量が約1.5倍になり、見かけ上のヘモグロビンが下がる(水血症)。⑦凝固能が亢進し、深部静脈血栓症と肺塞栓症のリスクが上がる。
1分チェック
- 妊娠末期に仰臥位で気分不良なら。→ まず左側臥位にする(下大静脈の圧迫を外す)。
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