次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(34歳、初産婦)は妊娠39週6日に3,000gの女児を出産した。分娩後の母児の経過は順調である。出生後12時間、看護師がAさんの児の観察を行った。児は活気がありバイタルサインは安定しており、排便が認められた。直接授乳を開始している。出生後の排尿回数は4回、排便回数は3回である。
日齢2。A さんの児の胎外生活への適応は順調に経過している。哺乳回数は1 日8回。A さんは母乳育児を希望しているが、児に乳頭を吸われると痛いと話し ており、左右の乳頭に軽度の発赤が認められる。 このとき看護師が観察する項目で優先度が高いのはどれか。
公式正答:4
解説
日齢2、児に乳頭を吸われると痛く、左右の乳頭に軽度の発赤がある褥婦について、優先度の高い観察項目を問う。ラッチオンの状態である。
この問題で問われていること
乳頭のトラブルの原因を、機序から特定できるか。
しくみから理解する
ラッチオン(吸着)とは、児が乳頭と乳輪をどのようにくわえているかを指す。正しくくわえられていれば、乳頭は児の口腔の奥(硬口蓋と軟口蓋の境目付近)に位置する。乳汁の移送を主に担うのは口腔内に生じる陰圧で、乳輪部を圧迫して乳管洞から絞り出すという古い説明は、超音波による計測では支持されていない。深い吸着でも乳頭には陰圧がかかるが、歯茎に挟まれてこすられることがないため、痛みと損傷が生じにくい。逆に、乳頭だけを浅くくわえると、乳頭が歯茎に挟まれ、舌でこすられて、痛みと発赤、そして亀裂を生じる。したがって、乳頭痛と発赤がある場合、最初に確認すべきはラッチオンの状態になる。原因を直せば、症状は改善し、乳汁の出も良くなる。
選択肢ごとの確認
児の体重減少率も日々の観察項目になる。ただし、この事例で問題として挙げられているのは乳頭痛であり、その原因を特定するための観察が優先される。なお、ラッチオンが不良であれば哺乳量も不足しやすいため、体重減少率は関連する指標として併せて確認する。
乳汁の分泌状態も観察するが、乳頭痛の直接の原因ではない。日齢2では、まだ分泌が本格化していない時期になる。
乳房の緊満状態も、乳頭痛に関わることがある(緊満により乳輪が硬くなり、深くくわえられなくなる)。ただし、日齢2では緊満はまだ強くないことが多く、また緊満があってもラッチオンを確認しなければ対応を決められない。
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混同しやすいポイント
「症状の原因を直接に説明するもの」を選ぶ、という考え方になる。誤肢はいずれも観察項目だが、乳頭痛と発赤の原因を直接には説明しない。乳頭のトラブルは、その大半が吸着の問題によるものであり、まずそこを見る、というのが母乳育児支援の基本になる。
理解を深める
正しいラッチオンの確認項目を整理する。①児の口が大きく開いている(120度以上)。②下唇が外向きにめくれている。③顎が乳房に密着している。④鼻はふさがれていない(呼吸ができる)。⑤乳輪が、上より下側で多く口に入っている(非対称のくわえ方)。⑥頬にえくぼができていない(できていれば浅い吸着を示す)。⑦チュパチュパという音がしない(音がすれば空気を吸っている)。⑧ゆっくりと大きく吸う動きと、嚥下の音が聞こえる。⑨授乳の後、乳頭がつぶれたり、斜めになったりしていない。姿勢の要点=母親が楽な姿勢をとる、児の耳・肩・腰が一直線、児の体を母親に向ける、児を乳房へ近づける(母親が前かがみにならない)、そして児の頭ではなく肩と背中を支える。乳頭のトラブルへの対応=ラッチオンの修正が第一。加えて、授乳前に乳輪を柔らかくする、授乳姿勢を変える、痛みの少ない側から始める、授乳後に乳汁を乳頭に塗って自然乾燥させる、そして必要に応じて保護器や軟膏を用いる。亀裂が深い場合や、乳頭に白斑・水疱がある場合、そして痛みが強い場合は、専門的な支援(助産師、母乳外来)につなぐ。乳頭痛は母乳育児を中断する大きな理由の一つであり、早期に対応することが継続を支える。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢がいずれも観察項目だが原因を直接説明しない。症状の原因を説明するもので切る。
5分で振り返る
①乳頭痛と発赤の大半は、浅い吸着(ラッチオン不良)による。②正しい吸着では、乳頭は児の口腔の奥に位置する。乳汁の移送は主に口腔内の陰圧による。深い吸着では乳頭が歯茎に挟まれてこすられないため、摩擦による痛みと損傷が生じにくい。③確認項目=口が大きく開く、下唇が外向き、顎が乳房に密着、鼻がふさがれていない、乳輪は下側が多く入る、頬にえくぼがない、嚥下の音が聞こえる。④授乳後に乳頭がつぶれていないかを見る。⑤姿勢=母親が楽に、児の耳・肩・腰を一直線に、児を乳房へ近づける。⑥対応=吸着の修正が第一。姿勢を変える、痛みの少ない側から始める、授乳後に乳汁を塗って自然乾燥。⑦亀裂が深い、白斑や水疱がある、痛みが強い場合は専門的な支援につなぐ。
1分チェック
- 乳頭痛と発赤があるときは。→ ラッチオン(吸着)の状態を確認する。
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