次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(34歳、初産婦)は妊娠39週6日に3,000gの女児を出産した。分娩後の母児の経過は順調である。出生後12時間、看護師がAさんの児の観察を行った。児は活気がありバイタルサインは安定しており、排便が認められた。直接授乳を開始している。出生後の排尿回数は4回、排便回数は3回である。
日齢4。看護師がA さんの児を観察したところ、バイタルサインは、体温(直腸 温)37.3 ℃、呼吸数55/分、心拍数134/分。経皮ビリルビン20.0 mg/dL であっ た。 A さんの児の状態で医師に報告が必要なのはどれか。
公式正答:1
解説
日齢4の新生児で、体温37.3℃(直腸温)、呼吸数55/分、心拍数134/分、経皮ビリルビン20.0mg/dLという所見のうち、医師に報告が必要なものを問う。経皮ビリルビン値である。
この問題で問われていること
新生児のバイタルサインと検査値の基準を、正確に持っているか。
しくみから理解する
新生児の生理的黄疸は、生後2〜3日から出現し、4〜5日頃にピークとなり、7〜10日頃に消退する。ピーク時の血清総ビリルビン値は、通常12〜15mg/dL程度までにとどまる。経皮ビリルビン値20.0mg/dLは、この範囲を大きく超えている。ただし経皮値はスクリーニングの指標で、光線療法の適応は血清総ビリルビン値により、生後時間と在胎週数・危険因子に応じた基準で判断する。高値域では経皮値が血清値を過小評価することも知られる。したがって、直ちに医師へ報告して血清値を確認する必要がある。ビリルビンが高値のまま経過すると、脂溶性の間接ビリルビンが血液脳関門を越えて大脳基底核に沈着し、核黄疸(ビリルビン脳症)を起こす。これは、嗜眠、筋緊張の低下、哺乳力の低下から始まり、後弓反張、けいれん、そして不可逆的な後遺症(アテトーゼ型脳性麻痺、難聴、眼球運動障害、知的障害)を残す。したがって、直ちに医師へ報告する必要がある。
選択肢ごとの確認
呼吸数55回/分は正常範囲内になる。新生児の呼吸数は40〜60回/分が基準で、腹式呼吸、そして周期性呼吸(数秒の休止を挟む不規則な呼吸)がみられるのも生理的になる。60回/分以上が持続する場合は多呼吸として注意を要する。
心拍数134回/分も正常範囲内になる。新生児の心拍数は120〜160回/分が基準になる。啼泣時にはさらに上がり、睡眠時には下がる。
体温37.3℃(直腸温)も正常範囲内になる。新生児の体温は36.5〜37.5℃程度が基準で、直腸温は腋窩温より0.5℃程度高くなる。
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混同しやすいポイント
4つの値のうち3つが正常範囲内で、ビリルビンだけが逸脱している。新生児の基準値(呼吸数40〜60、心拍数120〜160、体温36.5〜37.5℃)を正確に持っていることが前提になる。成人の基準をそのまま当てはめると、呼吸数55回/分と心拍数134回/分を異常と判断してしまう。年齢によって基準が変わることを押さえる。
理解を深める
新生児黄疸の管理を整理する。生理的黄疸の機序=①胎児期の多血が出生後に不要となり、赤血球が大量に壊される、②新生児の赤血球の寿命が短い(約90日)、③肝の抱合能(グルクロン酸抱合)が未熟、④腸肝循環が亢進している。病的黄疸を疑う所見=①生後24時間以内の出現(早発黄疸)、②急速な上昇(1日あたり5mg/dL以上)、③高値(治療の基準を超える)、④遷延(生後2週間を超えて続く)、⑤直接ビリルビンの上昇(1〜2mg/dL以上。胆道閉鎖症などを疑う)。原因=血液型不適合(ABO式、Rh式)、感染、頭血腫や皮下出血、多血症、母乳性黄疸、代謝性疾患、そして胆道閉鎖症。治療=光線療法(波長460nm前後の光により、間接ビリルビンを水溶性の異性体に変えて排泄させる)。実施中は、眼を保護(アイマスク)し、性腺を覆い、体位を定期的に変え、体温、脱水、そして便の性状(緑色の下痢便になる)を観察する。効果が不十分な場合や、著しい高値では交換輸血を行う。看護では、黄疸の程度を、クラマーの法則(黄疸が頭部から足へ広がる)や経皮ビリルビン測定で継続的に評価する。これらはスクリーニングであり、治療の適応は血清総ビリルビン値を、生後時間と在胎週数・危険因子に応じた基準に当てはめて判断する。あわせて、あわせて哺乳量、体重、排泄、そして活気を観察する。哺乳が十分であれば、便からのビリルビンの排泄が進み、黄疸も軽減する。
間違えやすい考え方
報告の要否を問う型で、誤肢がすべて新生児の正常範囲である。成人の基準を当てはめないことが要点になる。
5分で振り返る
①新生児の生理的黄疸は生後2〜3日に出現し4〜5日でピーク、7〜10日で消退する。ピークは通常12〜15mg/dL程度まで。②経皮ビリルビン値20.0mg/dLは明らかな高値だが、経皮値はスクリーニングで、治療の適応は血清総ビリルビン値を生後時間と在胎週数・危険因子の基準に当てはめて判断する。高値域では経皮値が血清値を過小評価することもある。③核黄疸(ビリルビン脳症)=嗜眠、筋緊張の低下、哺乳力の低下から後弓反張、けいれんへ。後遺症はアテトーゼ型脳性麻痺、難聴、知的障害。④新生児の基準=呼吸数40〜60回/分、心拍数120〜160回/分、体温36.5〜37.5℃。直腸温は腋窩温より0.5℃程度高い。⑤病的黄疸を疑う所見=24時間以内の出現、急速な上昇、高値、2週間を超える遷延、直接ビリルビンの上昇。⑥光線療法では眼と性腺を保護し、体温・脱水・便の性状を観察する。⑦哺乳が十分であれば便からの排泄が進み黄疸も軽減する。
1分チェック
- 経皮ビリルビン20.0mg/dLは。→ 直ちに医師へ報告(光線療法の適応と核黄疸の危険)。
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