次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(20歳、女性)は境界性人格〈パーソナリティ〉障害borderlinepersonalitydisorderの診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。
A さんは救急外来で治療を受け会話ができるまでに回復した。 A さんへの看護師の最初の対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
境界性パーソナリティ障害の20歳女性が、睡眠薬の過量服薬で搬送され、会話ができるまで回復した際の最初の対応を問う。現在の希死念慮の有無について確認することである。
この問題で問われていること
自殺企図の直後に、まず何を確かめるかを判断できるか。
しくみから理解する
自殺企図の後は、再企図の危険が最も高い時期になる。したがって、身体的な治療が一段落し、会話ができるようになった時点で、まず確認すべきは、いま死にたい気持ちがあるかどうかになる。希死念慮の有無、その強さ、具体的な計画の有無、そして手段への接近可能性を確かめることで、必要な観察の程度と、環境の安全の確保、そして今後の治療の方針が決まる。自殺について直接尋ねることは、自殺を促さないことが知られており、むしろ本人が気持ちを話す機会になる。この確認を経ずに他の関わりへ進むと、危険を見落とすことになる。
選択肢ごとの確認
過量服薬した場面の振り返りを促すことは、この時点では早すぎる。まだ薬の影響が残っている可能性があり、また心理的にも整理されていない。振り返りは、安全が確保され、関係ができてから、治療の中で行う。
残していた理由を追及することは、詰問になる。本人を責める形になり、信頼関係を損なう。また、「なぜ全部飲まなかったのか」という問いは、死への意図の強さを測るためのものだとしても、この場面での尋ね方として不適切になる。
「二度と過量服薬しない」と約束することも適切でない。約束は、破られたときに本人の罪悪感と、看護師への不信を生む。また、約束が安全を保証するわけではない。近年は、こうした約束(no-suicide contract)ではなく、危機の際にどう対処するかを一緒に決める安全計画を作る方法が推奨されている。
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混同しやすいポイント
誤肢は、時期が早すぎるもの、詰問になるもの、そして効果がなく害もありうるものになる。いずれも、本人の現在の状態を確かめないまま、次の段階へ進もうとしている。まず「いま危険があるか」を確かめる、という順序が要点になる。境界性パーソナリティ障害では、自傷と自殺企図を繰り返すことがあり、医療者の側に「またか」という感情が生じやすい。しかし、繰り返すことと、危険が低いことは別であり、毎回同じ手順で危険を評価する必要がある。
理解を深める
境界性パーソナリティ障害への関わりを整理する。特徴=見捨てられることへの強い不安、不安定で激しい対人関係(理想化と こき下ろし が交代する)、同一性の混乱、衝動性(浪費、性行動、物質乱用、無謀な運転、過食)、自傷行為と自殺企図の繰り返し、感情の不安定さ、慢性的な空虚感、強い怒り、そしてストレス下での一過性の妄想様観念や解離。関わりの原則=①一貫した対応(チームで方針を共有し、担当者によって対応が変わらないようにする)、②枠組みを明確にする(面会の時間、できること・できないこと)、③操作的な言動に感情的に反応しない、④特定の職員だけが特別な関わりをしない(分裂=スプリッティングへの対応)、⑤自傷の後は、事実を確認し、必要な処置を淡々と行い、責めない、⑥できていることを認める、⑦医療者自身の感情を、カンファレンスやスーパービジョンで扱う。治療=弁証法的行動療法、メンタライゼーションに基づく治療などの精神療法が有効とされる。薬物療法は対症的に用いられ、とくに過量服薬のリスクを踏まえ、処方量と管理の方法を検討する。この事例では、処方されていた睡眠薬を用いており、処方の見直しと、家族による管理などの対応が必要になる。
間違えやすい考え方
最初の対応を問う型で、誤肢が時期尚早・詰問・効果のない約束である。まず危険を確かめるという順序で切る。
5分で振り返る
①自殺企図の後は再企図の危険が最も高い。まず希死念慮の有無、強さ、計画、手段への接近可能性を確かめる。②自殺について直接尋ねることは自殺を促さない。むしろ話す機会になる。③振り返りは、安全が確保され関係ができてから治療の中で行う。④選択肢3が問うているのは、過量服薬に至る前に大量の薬を手元に持っていた経緯である。これは処方量と管理の見直しにつながる大切な情報だが、いまこの場面で本人へ問えば詰問になり信頼を損なう。まず希死念慮を確かめる。⑤「二度としない」という約束は、破られたときに罪悪感と不信を生み、安全も保証しない。危機の際の対処を一緒に決める安全計画を作る。⑥繰り返すことと危険が低いことは別。毎回同じ手順で評価する。⑦処方薬による過量服薬では、処方量と管理の方法を見直す。
1分チェック
- 自殺企図の直後は。→ 現在の希死念慮の有無を確認する。
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