次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(20歳、女性)は境界性人格〈パーソナリティ〉障害borderlinepersonalitydisorderの診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。
入院1週、A さんは看護師ごとに言動や態度を変えることが多く、病棟ではA さんに対して共感を示す看護師と、拒否的な態度を示す看護師に分かれてしまっ た。そのため、病棟の看護師はチームでの対応についてカンファレンスを行った。 A さんへの看護師のチームとしての対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
看護師ごとに言動を変える患者に対し、病棟の看護師が共感を示す者と拒否的な者に分かれた状況での、チームとしての対応を問う。患者の行動が患者と看護師の関係にもたらす影響について評価することである。
この問題で問われていること
分断が起きたとき、何を検討の対象にするかを判断できるか。
しくみから理解する
看護師が二分されているという事態そのものを、患者の病理と、それに対する自分たちの反応の結果として捉え、評価の対象にすることが必要になる。境界性パーソナリティ障害では、対人関係のパターン(理想化と こき下ろし、見捨てられ不安、試す行動)が、そのまま治療の場でも再現される。看護師の側に生じる感情(この人を守りたい、この人は面倒だ)は、そのパターンに巻き込まれた結果であることが多い。それを個人の資質の問題としてではなく、関係の中で起きている現象として、チームで言語化し、評価する。そこから、統一した方針と、それぞれの役割が決まる。
選択肢ごとの確認
関わる頻度を減らすことは、患者を遠ざけることになり、見捨てられ不安を強める。また、問題の先送りになる。必要なのは、関わりの量を減らすことではなく、関わり方を揃えることになる。
共感を示す看護師に担当を固定することも適切でない。特定の職員だけが関わる形は、その職員の負担を大きくし、また分裂を固定する。その職員が不在のときに患者が不安定になり、他の職員との関係もさらに悪くなる。チーム全体が同じ方針で関わることが原則になる。
患者に対する感情を看護師同士で表出しないように統一することは、逆効果になる。陰性感情を抑え込むと、それが態度に表れたり、燃え尽きを招いたりする。カンファレンスやスーパービジョンの場で、率直に共有することが、対応を安定させる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、回避(頻度を減らす)、固定(特定の担当)、そして抑圧(感情を出さない)になる。いずれも、起きている現象を扱わずに済ませようとする方向になる。チーム医療の設問では、「起きていることを、チームで言語化して共有する」という方向が、多くの場合に正答になる。とくに精神看護では、医療者自身の感情の動きが、看護の質に直接影響するため、それを扱うことが実務そのものになる。
理解を深める
精神科看護におけるチームの働きを整理する。カンファレンスの目的=①情報の共有、②アセスメントのすり合わせ、③方針の統一、④役割の分担、⑤スタッフの感情の共有と支援、⑥方針の見直し。逆転移=患者に対して医療者の側に生じる感情の動きを指す。過度な保護、いらだち、無力感、そして特別扱いしたい気持ちなどが含まれる。これを自覚し、共有することで、感情に基づく対応を避けられる。スーパービジョン=経験のある指導者から、事例について助言を受ける仕組み。自分では気づけない関わりの偏りを、外の視点から捉えられる。燃え尽き=情緒的な消耗、脱人格化(患者を物のように扱う)、そして個人的達成感の低下を特徴とする。精神科看護では、感情労働の負担が大きく、これが起こりやすい。予防には、業務量の調整、支援的な職場の関係、役割の明確化、そして感情を話せる場が有効になる。この事例では、看護師が二分されている段階であり、まだ修復できる。この時点でカンファレンスを開いたことは適切な判断であり、そこで何を検討するかが問われている。個人の対応の善し悪しを裁く場にせず、現象を理解する場にすることが、チームを立て直す道になる。
間違えやすい考え方
チームの対応を問う型で、誤肢が回避・固定・抑圧である。起きていることをチームで言語化する方向で切る。
5分で振り返る
①看護師の二分は、患者の対人関係のパターンが治療の場で再現された結果として捉える。②看護師に生じる感情は、そのパターンに巻き込まれた結果であることが多い。個人の資質の問題にしない。③関わる頻度を減らすことは見捨てられ不安を強め、問題を先送りする。④特定の担当に固定すると、その職員の負担が増え、分裂が固定される。⑤陰性感情を抑え込むと態度に表れ、燃え尽きも招く。カンファレンスで率直に共有する。⑥逆転移=患者に対して医療者に生じる感情の動き。自覚し共有することで対応の偏りを防ぐ。⑦燃え尽き=情緒的消耗、脱人格化、個人的達成感の低下。
1分チェック
- 看護師が二分されたら。→ 患者の行動が関係にもたらす影響をチームで評価する。
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