仰臥位で手術を受けた患者が術後に上肢の薬指と小指のしびれを訴えた。 しびれの原因として考えられるのはどれか。
公式正答:3
解説
仰臥位で手術を受けた患者が、術後に上肢の薬指と小指のしびれを訴えた場合の原因を問う。肩関節の内旋である。
この問題で問われていること
しびれの部位から、どの神経が障害されたかを特定できるか。
しくみから理解する
薬指の尺側半分と小指の感覚は、尺骨神経が担う。尺骨神経は、上腕の内側を下り、肘の内側(肘部管、上腕骨内側上顆の後方)を通って前腕へ入る。この部位は皮下が浅く、外部からの圧迫を受けやすい。手術中に上肢を体側に置き、肩関節が内旋した状態になると、前腕が回内して肘の内側が下(手術台)に接し、尺骨神経が圧迫される。長時間の手術では、これによりしびれと運動障害を生じる。予防には、上肢を手掌が上を向く(回外位)ように置き、肘の内側が圧迫されないようにする、あるいは適切なパッドで保護することが有効になる。
選択肢ごとの確認
頸部の伸展は、頸髄と腕神経叢への負担にはなるが、薬指と小指に限局したしびれの原因としては説明しにくい。過度の伸展は、頸椎症のある患者で脊髄症状を招くことがある。
前腕の回内は、肘の内側が下を向く状態を作るため、尺骨神経の圧迫に関わる。ただし、この設問では「肩関節の内旋」が正答とされており、上肢全体の肢位を決める要因として、より根本にある。回内は内旋に伴って生じる。
肘関節の伸展は、尺骨神経の圧迫を強めるものではない。むしろ、肘を過度に屈曲すると、肘部管で尺骨神経が伸展・圧迫されやすくなる。
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混同しやすいポイント
「しびれの部位→担当する神経→その神経が圧迫される部位→そこに圧をかける肢位」という順にたどる。薬指と小指=尺骨神経=肘の内側=肩の内旋と前腕の回内、という道筋になる。他の神経の分布も対で覚える。正中神経=母指、示指、中指、薬指の橈側半分の掌側。橈骨神経=手背の橈側と、手関節の背屈(下垂手)。腕神経叢の障害では、上肢全体に及ぶ。
理解を深める
手術体位による合併症を整理する。神経障害=①腕神経叢(上肢の過度の外転、90度を超える外転、頭部の反対側への回旋。側臥位での下側の腋窩の圧迫)、②尺骨神経(肘の内側の圧迫)、③橈骨神経(上腕の外側の圧迫、手術台の縁)、④総腓骨神経(腓骨頭の圧迫。側臥位、砕石位。下垂足を生じる)、⑤大腿神経と閉鎖神経(砕石位での過度の股関節の屈曲と外転)。褥瘡=長時間の同一体位、圧迫、そして手術中の低体温と低灌流により生じやすい。仙骨部、踵、後頭部、肩甲骨部が好発する。除圧のためのマットとパッドを用いる。循環=砕石位からの体位の戻しで血圧が下がる。腹臥位では腹部の圧迫により静脈還流が減る。呼吸=腹臥位、砕石位、頭低位では横隔膜が挙上し、換気が制限される。眼=腹臥位での眼球の圧迫は、失明の原因になりうる。予防=①体位の固定は複数人で行い、関節の可動域を超えない、②骨突出部と神経の走行部にパッドを当てる、③手術中も定期的に確認する、④長時間の手術では、可能な範囲で体位を微調整する、⑤術前に、可動域の制限、しびれ、関節の疾患を確認しておく。術後は、しびれ、疼痛、運動の障害、皮膚の発赤を観察し、早期に発見する。
間違えやすい考え方
しびれの部位から原因を問う型で、誤肢が別の部位への負担になる肢位である。神経の走行と圧迫部位で切る。
5分で振り返る
①薬指の尺側半分と小指の感覚は尺骨神経が担う。②尺骨神経は肘の内側(肘部管、上腕骨内側上顆の後方)を通り、皮下が浅く圧迫を受けやすい。③肩関節が内旋すると前腕が回内し、肘の内側が手術台に接して圧迫される。④予防は、上肢を回外位に置き、肘の内側を圧迫しないようにパッドで保護する。⑤正中神経=母指・示指・中指・薬指橈側の掌側。橈骨神経=手背の橈側と手関節の背屈。⑥腕神経叢は上肢の過度の外転(90度を超える)で障害される。⑦総腓骨神経は腓骨頭の圧迫で障害され、下垂足を生じる。
1分チェック
- 薬指と小指のしびれは。→ 尺骨神経の障害(肩の内旋により肘の内側が圧迫される)。
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