臨死期にある患者の家族から「のどがゴロゴロと鳴っていて苦しんでいます。こ の苦痛をとってあげたい」と相談された。看護師が、呼吸音を聴取すると咽頭に雑 音を認めた。 患者の苦痛を緩和するための対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
臨死期にある患者の咽頭の雑音について、家族から苦痛を取り除きたいと相談された際の対応を問う。顔を横に向けることである。
この問題で問われていること
死前喘鳴の機序と、患者にとっての意味を理解しているか。
しくみから理解する
死前喘鳴は、意識が低下して嚥下と咳の反射が弱まり、唾液と気道の分泌物が咽頭に貯留して、呼吸のたびにゴロゴロと音を立てる状態になる。死が近づいた患者の多くにみられる。顔を横に向ける(あるいは側臥位、または上体を挙上して顔を横に向ける)と、重力によって分泌物が口腔の外へ流れやすくなり、音が和らぐことが多い。体位の工夫は、侵襲がなく、直ちに実施でき、患者に苦痛を与えない対応であるため、最初に行う。あわせて、家族に、この音が必ずしも本人の苦痛を意味するものではないことを説明する。
選択肢ごとの確認
気管支拡張薬は、気管支の攣縮による喘鳴(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患)に用いるもので、分泌物の貯留による死前喘鳴には効果がない。分泌を減らす目的では、抗コリン薬(ブチルスコポラミンなど)が用いられることがある。
口腔内をガーゼで拭くことは、口腔ケアとして意味があり、乾燥の緩和にもなる。ただし、雑音の原因である咽頭の分泌物には届かないため、この症状への対応としては十分でない。並行して行う。
雑音が消失するまで吸引することは適切でない。咽頭の深部まで繰り返し吸引すると、粘膜を傷つけ、出血、嘔吐反射、そして苦痛を招く。また、吸引しても分泌物は再び貯留するため、根本的な解決にならない。吸引は、口腔内の見える範囲にとどめ、必要最小限とする。
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混同しやすいポイント
「侵襲の少ない方法から」「患者の苦痛を増やさない」という2つの原則で判断する。誤肢のうち、吸引は最も避けたい対応で、家族の「何かしてあげたい」という気持ちに応えようとして行われがちだが、患者の負担になる。終末期の対応では、「何かをすること」より「害を与えないこと」が優先される場面がある。
理解を深める
終末期の症状への対応を整理する。死前喘鳴=体位(顔を横に向ける、側臥位、上体の挙上)、輸液の減量(過剰な輸液は分泌を増やす)、抗コリン薬(早期に使用すると効果が得られやすいとされる)、そして口腔ケア。吸引は必要最小限にとどめる。家族への説明が最も重要な対応の一つになる。「本人は苦しくないことが多い」「これは死が近いことのしるしで、自然な経過である」「音を消すために無理な処置をすると、かえって負担になる」と伝えることで、家族の不安が和らぐ。呼吸困難=オピオイド(呼吸困難の感覚を和らげる)、送風(顔に風を当てると、酸素化にかかわらず呼吸困難が和らぐ)、体位(起坐位、前傾)、環境(換気、室温)、そして不安への対応。酸素は、低酸素血症がある場合と、実際に投与して本人の呼吸困難が和らぐことを確認できた場合に用いる。低酸素血症のない終末期の呼吸困難では、対照試験で室内気との差が示されておらず、動きの制限と口渇という負担だけが残ることがある。疼痛=オピオイドを中心とした薬物療法と、体位、罨法、マッサージ、そして環境の調整。せん妄=原因の是正(脱水、薬剤、便秘、尿閉、疼痛)、環境の調整、そして必要に応じた薬物療法。口渇=口腔ケア、氷片、保湿。輸液を増やしても口渇は改善しないことが多い。倦怠感=休息と活動の調整、環境の整備。家族へのケア=いま起きていることの説明、できることを一緒に行う(口腔ケア、手を握る、清拭)、休息の確保、そして気持ちを話せる場。「何もしてあげられない」という無力感が家族を苦しめるため、「そばにいることが最も大切なケアである」と伝えることにも意味がある。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が効果のない薬・不十分な対応・苦痛を招く処置である。侵襲の少ない方法からで切る。
5分で振り返る
①死前喘鳴=意識の低下により嚥下と咳の反射が弱まり、唾液と分泌物が咽頭に貯留して音を立てる状態。②顔を横に向ける、側臥位、上体の挙上により、重力で分泌物が流れて音が和らぐ。③気管支拡張薬は気管支の攣縮に用いるもので、この症状には効果がない。分泌を減らすには抗コリン薬。④咽頭深部の繰り返す吸引は、粘膜の損傷、出血、嘔吐反射、苦痛を招く。口腔内の見える範囲にとどめる。⑤過剰な輸液は分泌を増やすため減量を検討する。⑥家族に「本人は苦しくないことが多い」「自然な経過である」と説明することが重要な対応になる。⑦呼吸困難にはオピオイド、送風、体位が有効。酸素は、低酸素血症がある場合と、投与して呼吸困難が和らぐことを確認できた場合に用いる。
1分チェック
- 死前喘鳴には。→ 顔を横に向ける(重力で分泌物を流す)。吸引は必要最小限に。
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