成人の気管支喘息〈bronchial asthma〉に対する副腎皮質ステロイド薬の吸入で正しいのはどれか。
公式正答:4
解説
成人の気管支喘息に対する副腎皮質ステロイド薬の吸入で正しいものを問う。吸入後は含嗽を促す、である。
この問題で問われていること
吸入という経路の特徴と、局所の副作用を説明できるか。
しくみから理解する
吸入ステロイド薬は、薬剤を気道へ直接届けることで、少ない量で高い抗炎症の効果を得られる。全身への吸収が少ないため、全身性の副作用は経口投与に比べて格段に少ない。一方、口腔と咽頭に付着した薬剤により、局所の副作用が生じる。口腔カンジダ症(白色の苔状の付着物、疼痛)、嗄声、そして咽頭の刺激感になる。これを防ぐため、吸入の後は必ず含嗽(うがい)を行い、口腔と咽頭に残った薬剤を洗い流す。含嗽ができない場合は、飲食で流す方法もとられる。
選択肢ごとの確認
糖尿病の患者への投与は禁忌ではない。吸入ステロイドは全身への吸収が少なく、血糖への影響はほとんどない。全身性の副腎皮質ステロイド(経口、注射)では血糖が上がるため注意を要するが、吸入では問題にならない。むしろ、喘息の管理が不十分だと発作時に全身性のステロイドを要することになり、そのほうが血糖への影響が大きい。
副作用に不整脈はない。不整脈は、β2刺激薬(発作時に用いる短時間作用性の吸入薬や、長時間作用性の吸入薬)や、テオフィリンで生じうる。ステロイドの吸入では起こらない。
重積発作の際に使用するものではない。吸入ステロイドは、発作を予防するための長期管理薬(コントローラー)であり、効果が現れるまでに時間がかかる。発作時に用いるのは、短時間作用性β2刺激薬(発作治療薬=リリーバー)と、重症では全身性のステロイドになる。この区別は、患者指導で最も重要な点の一つになる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、選択肢3の「長期管理薬と発作治療薬の取り違え」が、実務でも最も重大な誤りになる。発作時に吸入ステロイドを吸っても効かず、対応が遅れる。逆に、症状がないからと長期管理薬をやめると、炎症が持続して発作を繰り返す。「毎日使う薬」と「苦しいときに使う薬」を、患者が区別できるよう指導することが看護の役割になる。ただし、ブデソニド・ホルモテロール配合剤のように、長期管理に用いながら発作時にも同じ吸入器を追加使用する用法が認められた薬剤もあり、その場合は両者が同一になる。処方の内容を確かめ、その患者の処方どおりの使い方を一緒に確認する。
理解を深める
気管支喘息の管理を整理する。病態=気道の慢性の炎症を基盤として、気道が過敏になり、可逆性の気流の制限(発作性の呼吸困難、喘鳴、咳)を繰り返す。炎症が続くと、気道の構造が変化して(リモデリング)、可逆性が失われる。長期管理薬(コントローラー)=吸入ステロイド(基本)、長時間作用性β2刺激薬(吸入ステロイドとの配合剤)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、長時間作用性抗コリン薬、テオフィリン徐放製剤、そして重症例では生物学的製剤。発作治療薬(リリーバー)=短時間作用性β2刺激薬、全身性ステロイド。加えて、ブデソニド・ホルモテロール配合剤には、長期管理薬として毎日使いながら発作時にも追加使用する用法が国内で承認されている(維持療法兼発作治療)。吸入の手技=定量噴霧式吸入器では、息を吐いてから、噴霧と同時にゆっくり深く吸い、5〜10秒息を止める。スペーサーを用いると、口腔内への付着が減り、同調も不要になる。ドライパウダー式では、素早く強く吸う。手技の確認は、受診のたびに行う(誤った手技のまま続けている患者は少なくない)。患者指導=毎日の使用の継続、発作時の対応(アクションプラン)、ピークフローの測定、増悪の誘因(アレルゲン、感染、運動、天候、ストレス、喫煙、薬剤)の把握と回避、禁煙、そして受診の目安。喘息死の多くは、発作の重症度の過小評価と、受診の遅れによる。
間違えやすい考え方
薬の使い方を問う型で、誤肢が禁忌の誤り・別の薬の副作用・長期管理薬と発作治療薬の取り違えである。
5分で振り返る
①吸入ステロイドは気道へ直接届き、少量で高い抗炎症効果を得る。全身への吸収は少ない。②局所の副作用=口腔カンジダ症、嗄声、咽頭の刺激感。吸入後の含嗽で防ぐ。③糖尿病の患者にも使える(血糖への影響はほとんどない)。④不整脈はβ2刺激薬とテオフィリンの副作用。⑤吸入ステロイド単剤は長期管理薬(コントローラー)で、発作時には効かない。発作時は短時間作用性β2刺激薬。ただしブデソニド・ホルモテロール配合剤には、長期管理に加えて発作時にも追加使用する用法があり、その患者では処方どおりの使い方を確認する。⑥定量噴霧式では、噴霧と同時にゆっくり深く吸い、5〜10秒息を止める。スペーサーが有用。⑦手技の確認は受診のたびに行う。喘息死の多くは重症度の過小評価と受診の遅れによる。
1分チェック
- 吸入ステロイドの後は。→ 含嗽(口腔カンジダ症と嗄声を防ぐ)。
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