A さん(80 歳、女性)は脳梗塞〈cerebral infarction〉の後遺 症のため要介護5と認定され、治療を終えて退院することになった。A さんの息子の妻が「義母が退院したら同居して、私が 初めて介護することになります」と不安そうに看護師に話しかけてきた。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
要介護5の義母と同居して初めて介護することになり、不安を訴える息子の妻への対応を問う。「介護についてどのような思いがありますか」である。
この問題で問われていること
不安の訴えに、まず何をするかを判断できるか。
しくみから理解する
不安を訴える人に対しては、まずその内容を聴くことから始まる。何が不安なのか(技術か、時間か、体力か、家族関係か、仕事か、経済か、それとも本人との関係そのものか)が分からなければ、必要な支援も決められない。「どのような思いがありますか」という問いかけは、相手が自分の言葉で語れる形(開かれた質問)であり、話す内容と順序を本人に委ねている。語ることで気持ちが整理されることもあり、また、看護師が関心を向けているという姿勢も伝わる。
選択肢ごとの確認
「介護は楽しいですよ」は、相手の不安を否定する言葉になる。介護が楽しいと感じる場面はあるが、それは本人が見出すものであり、これから始める人に押しつけるものではない。
「介護にはすぐに慣れますよ」も、根拠のない保証になる。要介護5は最も重い区分であり、全面的な介助を要する。「すぐに慣れる」という言葉は、実情と合わず、また不安を軽く扱うことになる。
「家族で介護できるよう頑張りましょう」は、家族が介護することを前提として、努力を求める言葉になる。介護の負担が一人に集中する構造そのものを問い直す視点が欠けており、また、サービスの活用という選択肢を示していない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、否定、根拠のない保証、そして努力の要求になる。いずれも、話を聴かずに結論を与えている点が共通する。看護過程に照らせば、この場面はまだ情報収集の段階になる。「まず聴く」という原則は、多くの場面で正答につながるが、その理由(対応を決めるには情報が要る、語ること自体に意味がある)を理解しておくことが重要になる。
理解を深める
介護を始める家族への支援を整理する。把握すること=①介護を担う人の状況(健康、就労、他の家族の世話、経験)、②介護される人の状態(要介護度、必要な介助の内容と量、医療的な処置の有無、認知機能)、③家族の関係(誰が何を担うか、意思決定の仕方、これまでの関係性)、④住環境(間取り、段差、トイレと浴室、寝室の位置)、⑤経済状況、⑥利用できるサービスと、本人・家族の希望。支援の内容=①介護技術の指導(移乗、食事、排泄、清潔、体位変換)、②サービスの調整(訪問介護、訪問看護、通所介護、短期入所、福祉用具、住宅改修)、③相談先の明示(介護支援専門員、地域包括支援センター)、④休息の確保(短期入所、レスパイト)、⑤家族会と介護者の集まりの紹介、⑥急変時の対応の取り決め。とくに、要介護5では、介護の負担が非常に大きく、一人で担うことは現実的でない場面が多い。「頑張る」ことを前提とせず、無理なく続けられる形を一緒に設計することが、結果として在宅療養を長く続けることにつながる。介護者が倒れれば、療養そのものが成り立たなくなる。介護者もまた支援の対象である、という視点を保つ。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が否定・根拠のない保証・努力の要求である。まず聴くという原則で切る。
5分で振り返る
①不安の訴えには、まずその内容を聴く。何が不安か分からなければ支援も決められない。②開かれた質問により、本人が自分の言葉で語れるようにする。語ること自体に整理の意味がある。③「楽しい」「すぐ慣れる」は不安の否定と根拠のない保証になる。④「家族で頑張りましょう」は、負担が一人に集中する構造を問い直す視点を欠く。⑤把握すること=介護者の状況、被介護者の状態、家族の関係、住環境、経済、希望。⑥支援=技術の指導、サービスの調整、相談先の明示、休息の確保、家族会の紹介、急変時の取り決め。⑦介護者が倒れれば療養が成り立たない。介護者も支援の対象になる。
1分チェック
- 介護への不安を訴える家族には。→ まずどのような思いがあるかを聴く。
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