A さん(63 歳、男性)は妻と2人暮らしで、肺癌〈lung cancer〉の終末期で在宅医療を受けて医 療用麻薬を使用中である。看護師が訪問したとき、A さんは椅子に座って咳をし ながら苦痛に耐えている様子であった。妻は「レスキュー薬が効くまでは苦しそう なので、何か私にできることはありますか」と訪問看護師に尋ねた。 このときの訪問看護師の妻への対応で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
在宅で医療用麻薬を使用中の肺癌終末期の患者について、レスキュー薬が効くまでの間に家族ができることを尋ねられた際の対応を問う。背中をさすりながら傍にいるよう勧めることである。
この問題で問われていること
薬が効くまでの時間に、家族ができることを示せるか。
しくみから理解する
レスキュー薬(速放性のオピオイド)は、内服では効果が現れるまでにおよそ20〜30分かかる。その間、患者は苦痛に耐えることになる。この時間に家族ができることとして、背中をさする、手を握る、そばにいる、体位を整える、送風する、といった関わりがある。これらは、身体への直接の作用に加えて、「一人ではない」という安心をもたらし、痛みと苦痛の感じ方そのものを和らげる。また、家族にとっても、「何もできない」という無力感を減らし、役割を持てることに意味がある。
選択肢ごとの確認
救急車を要請することは、この場面では適切でない。予測されている症状であり、レスキュー薬という対処の手段も用意されている。移動そのものが強い負担になるうえ、いま必要なのは搬送ではなく、手元にある薬とそばでの関わりになる。症状が予測を超えて悪化した場合には、まず訪問看護と主治医へ連絡する。
仰臥位にすることは、呼吸を楽にする方向と逆になる。この患者は椅子に座って咳をしており、呼吸が苦しい可能性がある。仰臥位では横隔膜が押し上げられ、また分泌物も貯留しやすい。呼吸が苦しいときは、坐位または起坐位(前傾して肘をつく姿勢)が楽になる。本人が楽な姿勢をとれるよう支えることが対応になる。
一度に2倍量のレスキュー薬を服用することは、自己判断で行ってはならない。1回量と、次の投与までの間隔は、あらかじめ医師の指示で決められている。効果が不十分であれば、その事実を医師へ伝えて、量と間隔、そして定期の薬の見直しを相談する。自己判断での増量は、過量投与による呼吸抑制と過鎮静を招く。
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混同しやすいポイント
誤肢は、過剰な対応(救急要請)、逆方向の体位、そして自己判断での増量になる。この場面で問われているのは、「家族ができること」であり、専門的な処置ではない。手当てという言葉が示すように、触れること、そばにいることには、それ自体に意味がある。家族の「何かしたい」という気持ちに、実際にできる形を示すことが、看護の役割になる。
理解を深める
在宅での疼痛管理を整理する。薬=定期の薬(徐放性の製剤、貼付剤)で持続する痛みを抑え、突出痛にはレスキュー薬(速放性の製剤)を用いる。レスキュー薬の1回量は、1日量のおよそ6分の1から8分の1が目安になる。使用の記録(時刻、量、効果)をつけてもらうと、定期の薬の調整の根拠になる。家族への指導=①レスキュー薬を我慢させない(痛みを我慢することに利点はない)、②効果が現れるまでの時間を伝える、③使った回数を記録する、④効果が不十分なときは連絡する、⑤便秘の管理を続ける、⑥眠気と悪心は数日で軽減することが多い、⑦呼吸が浅く回数が減る、著しい眠気があれば連絡する。誤解を解く=「麻薬を使うと中毒になる」「早く使うと最後に効かなくなる」「寿命が縮む」といった誤解は根強い。がん疼痛に対する適切な使用で、精神依存(いわゆる中毒)が生じることは稀であり、寿命が縮むこともない。一方、身体依存と耐性は、長期に使えば生じうる正常な薬理学的な反応になる。これがあること自体は問題ではなく、耐性が現れれば用量を調整し、中止するときは漸減して離脱を避けるというように管理できる。そのうえで、痛みを我慢することで、食事、睡眠、活動、そして気力が損なわれることを伝える。薬以外の方法=体位、罨法、マッサージ、環境の調整、気分転換、そしてそばにいること。これらは薬の効果を補い、家族が参加できるケアにもなる。看取りに向けては、予測される変化と、そのときの連絡先を、あらかじめ具体的に伝えておく。
間違えやすい考え方
家族への対応を問う型で、誤肢が過剰な対応・逆方向の体位・自己判断の増量である。家族ができることで切る。
5分で振り返る
①内服のレスキュー薬は効果が現れるまでおよそ20〜30分かかる。②その間、背中をさする、手を握る、そばにいる、体位を整える、送風するといった関わりが有効になる。③これらは苦痛の感じ方を和らげ、家族の無力感も減らす。④予測されている症状で、レスキュー薬という対処が用意されている。症状が予測を超えて悪化した場合は、まず訪問看護と主治医へ連絡する経路がある。⑤呼吸が苦しいときは坐位または起坐位が楽で、仰臥位は逆になる。⑥レスキュー薬の自己判断での増量は、呼吸抑制と過鎮静を招く。効果が不十分なら医師へ伝える。⑦レスキュー薬の1回量は1日量の6分の1から8分の1が目安。使用の記録が定期の薬の調整の根拠になる。
1分チェック
- レスキュー薬が効くまでの間、家族ができるのは。→ 背中をさすり、そばにいること。
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