A さん(58 歳、男性)は外国籍の妻(40 歳)と10 年前に結婚し、2人で暮らして いる。虚血性心疾患〈ischemic heart disease〉と 診断され、外来看護師による生活指導を妻と一緒に受けることになった。初回の面談で、A さんは「10 年間で体重が10 kg 増えました。妻の母 国の習慣で味が濃いおかずや揚げ物とご飯を1日に何度も食べています。最近、2 人とも運動をしなくなりました」と話した。 このときの外来看護師のA さんと妻への最初の対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
外国籍の妻と暮らす虚血性心疾患の58歳男性への、初回の面談での最初の対応を問う。生活習慣の改善についてAさんと妻に考えを聞くことである。
この問題で問われていること
指導の前に何をするかを判断できるか。
しくみから理解する
生活習慣の改善は、本人と家族が実行できてはじめて意味を持つ。何をどう変えられるかは、その人の生活、価値観、文化、そして家族の関係によって異なる。とくにこの事例では、食習慣が妻の母国の文化に根ざしており、それを一方的に否定すれば、妻の文化とアイデンティティを否定することになり、協力も得られない。したがって、まず2人がどう考えているか、何を大切にしているか、そして何なら変えられそうかを聴くことから始める。この過程そのものが、行動の変容への動機づけにもなる。
選択肢ごとの確認
食事を1日3回までにするよう指導することは、聴く前に指示を与えることになる。また、回数だけを制限しても、1回の量と内容が変わらなければ効果は限られる。この事例では「1日に何度も食べている」とあり、回数の見直しは検討の対象になるが、最初の対応としては早い。
毎日1時間のウォーキングの提案も、同様に一方的になる。運動をしなくなったという情報はあるが、なぜしなくなったのか、どのくらいなら続けられそうかを聞かずに目標を設定すれば、実行されないか、続かない。
料理教室に通うことを勧めることは、妻の文化的な背景への配慮を欠く。また、時間、費用、言語の壁といった実行の条件も確認していない。日本の家庭料理を学ぶこと自体が目的ではなく、この夫婦が続けられる食事の形を見つけることが目的になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、すべて「聴く前に提案する」形になっている。しかも、いずれも一般には妥当に見える提案であるため、選びやすい。しかし、初回の面談で最初にすべきことは、情報を得ることと、関係をつくることになる。異文化を背景に持つ家族への支援では、この姿勢がとくに重要になる。
理解を深める
異文化を背景に持つ人への看護を整理する。基本の姿勢=①自分の文化を基準にしない(自文化中心主義に陥らない)、②相手の文化を尊重する、③しかし健康に関わる事実は正確に伝える、④「その文化だからこうだ」と決めつけない(同じ国の出身でも個人差がある)、⑤本人と家族に、何が大切かを尋ねる。食事の支援=その文化の食事の中で、変えられる部分(調理法、調味料の量、油の使い方、主食の量、野菜の増やし方)を一緒に探す。「その料理をやめる」ではなく、「その料理をどう作り変えるか」を考える。言語=通訳(医療通訳)の活用、やさしい日本語、多言語の資料、そして家族に通訳を頼むことの限界(内容が正確に伝わらない、本人が話しにくい、子どもに負担がかかる)を理解する。制度=在留資格と医療保険の加入の状況、そして利用できる制度を確認する。無保険の場合は、費用の相談と、利用可能な支援につなぐ。宗教=食事の禁忌(豚肉、アルコール、牛肉など)、祈りの時間と場所、そして同性の医療者による対応の希望などに配慮する。日本で暮らす外国人は増えており、こうした配慮は特別なことではなく、日常の看護の一部になりつつある。
間違えやすい考え方
最初の対応を問う型で、誤肢がすべて聴く前の提案である。初回はまず情報と関係づくりで切る。
5分で振り返る
①生活習慣の改善は、本人と家族が実行できてはじめて意味を持つ。②何をどう変えられるかは、生活、価値観、文化、家族の関係によって異なる。まず聴く。③この事例では食習慣が妻の文化に根ざしており、一方的な否定は協力を失わせる。④「その料理をやめる」ではなく「どう作り変えるか」を一緒に考える。⑤異文化を背景に持つ人への姿勢=自文化を基準にしない、尊重する、事実は正確に伝える、決めつけない、本人に尋ねる。⑥言語の支援=医療通訳、やさしい日本語、多言語資料。家族に通訳を頼むことには限界がある。⑦在留資格と医療保険の状況、宗教上の禁忌にも配慮する。
1分チェック
- 初回の生活指導では、まず。→ 本人と家族の考えを聴く。
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