血液透析について正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
血液透析について正しいものを問う。導入初期には不均衡症候群が起こる、である。
この問題で問われていること
透析の原理から、初期に起こる現象を導けるか。
しくみから理解する
不均衡症候群は、透析の導入初期に起こる、頭痛、悪心・嘔吐、血圧の変動、そして重症では意識障害とけいれんをきたす状態になる。機序は、透析によって血中の尿素窒素などが急速に除去される一方、脳内の濃度は血液脳関門のためにすぐには下がらず、脳と血液の間に浸透圧の差が生じることによる。その結果、水が脳へ移動して脳浮腫を起こす。予防のため、導入時は、透析の時間を短くし、血流量を落とし、小さめのダイアライザを用いて、緩やかに始める。回数を重ねるにつれて起こりにくくなる。
選択肢ごとの確認
腹膜炎が多いのは、血液透析ではなく腹膜透析になる。腹膜透析では、カテーテルを介して腹腔内へ透析液を出し入れするため、細菌が入って腹膜炎を起こすリスクがある。腹痛、排液の混濁、発熱が徴候になる。血液透析の主な合併症は、透析中の血圧低下、不均衡症候群、こむら返り、そして長期にはシャントの トラブル、貧血、二次性副甲状腺機能亢進症、アミロイドーシス、心血管の合併症になる。
食事でカルシウムを制限するのではない。透析患者では、活性型ビタミンDの産生が減ってカルシウムの吸収が落ち、また高リン血症も加わって、低カルシウム血症になりやすい。そのため食事でカルシウムを制限することはせず、制限するのはリン、カリウム、塩分、そして水分になる。ただし薬剤で一律に補うわけではない。血清カルシウム、リン、副甲状腺ホルモンをそれぞれの目標範囲に保つことが管理の目的で、高カルシウム血症を避け、カルシウムを含むリン吸着薬による負荷を抑えることが血管石灰化の予防として重視される。活性型ビタミンD製剤やカルシウムを含まないリン吸着薬の選択を含め、検査値に応じて個別に調整する。
導入の原因疾患で最も多いのは、IgA腎症ではなく糖尿病性腎症になる。近年の導入患者では、次いで腎硬化症、慢性糸球体腎炎(IgA腎症を含む)と続く。腎硬化症は増え続け、導入患者では慢性糸球体腎炎を上回った。なお全透析患者(有病)で見ると慢性糸球体腎炎の割合はなお高く、導入患者の順位とは異なる。順位は年次で動くため、受験年の統計で確かめる。
透析に用いる半透膜は、蛋白質を通過させない。孔の大きさにより、水、電解質、尿素窒素、クレアチニンといった小分子は通すが、アルブミンなどの蛋白質と血球は通さない。これにより、老廃物を除去しながら、必要な成分を保つ。
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混同しやすいポイント
誤肢は、腹膜透析との取り違え、食事制限の方向、原因疾患の順位、そして半透膜の性質という4点で誤っている。血液透析と腹膜透析の対比、そして食事療法の内容(何を制限し、何を補うか)が要点になる。
理解を深める
透析療法を整理する。血液透析=週3回、1回4時間程度。バスキュラーアクセス(内シャント)が必要。管理は医療機関で行われ、確実な除去が得られるが、通院の負担と、透析中の血圧変動がある。腹膜透析=自宅で毎日行う(1日4回程度の交換、または夜間の自動腹膜透析)。腹膜を透析膜として用いる。通院は月1〜2回程度で、生活の自由度が高く、残存する腎機能も保たれやすい。合併症に腹膜炎と被囊性腹膜硬化症がある。腹膜の機能が落ちるため、継続できる期間には限りがある(おおむね5〜8年)。内シャントの管理=シャント側で血圧を測らない、採血しない、点滴しない、腕時計と締めつける衣類を避ける、重い物を持たない、シャント側を下にして寝ない。毎日、シャント音(ザーザーという連続音)とスリル(拍動性の振動)を確認し、消失していれば直ちに受診する。食事=蛋白質は適量(制限しすぎると低栄養になる)、リン、カリウム、塩分、水分を制限する。カリウムを減らすため、野菜と芋は茹でこぼす、果物を控える。水分は、体重の増加を目安に管理する(中2日で6%以内、中1日で3%以内が目安)。看護=透析中のバイタルサインと症状の観察、除水量の管理、そして長期の療養を支える心理的な支援になる。
間違えやすい考え方
透析の理解を問う型で、誤肢が腹膜透析との取り違え・食事の方向・順位・膜の性質である。原理から導く。
5分で振り返る
①不均衡症候群=導入初期に、血中の尿素窒素が急速に除去され、脳との間に浸透圧の差が生じて脳浮腫を起こす。頭痛、悪心・嘔吐、重症では意識障害とけいれん。②予防は、時間を短く、血流量を落とし、緩やかに始めること。回数を重ねると起こりにくくなる。③腹膜炎が多いのは腹膜透析。血液透析の主な合併症は血圧低下、こむら返り、シャントのトラブル。④制限するのはリン、カリウム、塩分、水分。カルシウムは食事で制限しないが、補う方向と一律に決めるものでもない。血清カルシウム、リン、副甲状腺ホルモンをそれぞれの目標範囲に保つことが目的で、高カルシウム血症とカルシウムを含むリン吸着薬による負荷は血管石灰化につながるため抑える。検査値に応じて個別に調整する。⑤透析導入患者の原因疾患は糖尿病性腎症が最多で、近年は腎硬化症が慢性糸球体腎炎を上回っている。全透析患者(有病)の順位とは並びが異なるため、導入と有病を分けて見る。⑥半透膜は小分子を通し、蛋白質と血球は通さない。⑦シャント側では血圧測定・採血・点滴をしない。毎日シャント音とスリルを確認する。
1分チェック
- 導入初期に起こるのは。→ 不均衡症候群(急速な除去による脳浮腫)。
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