A さん(25 歳、女性)は統合失調症 schizophrenia と診断され、入院2か月が経過した。食事や 水分の摂取、トイレ歩行は1人でできる。歯磨き、入浴への関心はあまりない。幻 聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけている。日中はホールで過ごし、自 分から他の患者と交流はしない。 A さんのセルフケアのアセスメントで優先度が高いのはどれか。
公式正答:3
解説
統合失調症の25歳女性について、幻聴が聞こえると突然走り出して壁に頭をぶつける状況での、セルフケアのアセスメントで優先度が高いものを問う。安全を保つ能力である。
この問題で問われていること
複数の課題があるとき、何を優先するかを判断できるか。
しくみから理解する
壁に頭をぶつけるという行為は、頭部外傷、頭蓋内出血、そして脳挫傷につながりうる、生命に関わる危険になる。他の課題(個人衛生への関心の低さ、他の患者と交流しないこと)も支援の対象だが、生命と身体の安全に直結する課題が最も優先される。したがって、安全を保つ能力のアセスメントが優先度の高い項目になる。具体的には、いつ、どのような幻聴が聞こえたときに起こるのか、前駆する徴候はあるか、どこで起こるか、自分で止められるか、そして本人はそれをどう認識しているかを把握する。
選択肢ごとの確認
排泄について事例文にあるのは「トイレ歩行は1人でできる」という移動についての記述だけになる。尿意・便意の自覚、衣服の着脱、後始末、失禁の有無といった要素は評価されておらず、排泄というセルフケアの領域が自立しているとまでは言えない。ただし、壁に頭をぶつけているという記述があるため、いま優先されるのは安全を保つ能力になる。
個人衛生(歯磨き、入浴への関心が低い)は、支援の対象になる。統合失調症では、陰性症状として意欲の低下がみられ、清潔行動が保てなくなることがある。ただし、生命の危険には直結しないため、安全より優先度は下がる。
活動と休息のバランスについては、日中はホールで過ごしているとあり、著しい問題を示す記述はない。
孤独と付き合いのバランスについては、自分から他の患者と交流しないとあり、支援の対象になる。ただし、これも安全より優先度は下がる。
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混同しやすいポイント
「生命と身体の安全が最優先」という原則で判断できる。誤肢のうち、個人衛生と対人関係は、いずれも実際に課題として存在するため選びやすい。しかし、優先度を問う設問では、「放置したときに最も重大な結果を招くもの」を選ぶ。マズローの欲求の階層でいえば、生理的欲求と安全の欲求が、所属と愛の欲求より下位(基礎)にある、という考え方にも対応する。
理解を深める
オレム・アンダーウッドのセルフケア理論を整理する。精神科看護では、この枠組みが広く用いられる。6つの領域=①空気・水・食物(呼吸、水分、栄養の摂取)、②排泄(排泄の自立、便秘、月経)、③個人衛生(入浴、更衣、洗面、口腔ケア、環境の整頓)、④活動と休息のバランス(睡眠、日中の活動、余暇)、⑤孤独と付き合いのバランス(対人関係、社会との関わり、一人で過ごす時間)、⑥安全を保つ能力(自傷、他害、自殺、暴力、事故、服薬の管理、症状への対処)。各領域について、①全介助、②部分介助、③指導・声かけ、④教育・指導、⑤自立、といった段階で援助の程度を判断する。この枠組みの利点は、症状ではなく生活の側から患者を捉えられること、そして援助の程度を段階的に示せることにある。統合失調症の看護=陽性症状(幻覚、妄想、まとまりのない思考と行動)への対応(否定も肯定もせず、本人の体験としては現実であることを理解し、安全を確保する)、陰性症状(意欲の低下、感情の平板化、社会的な引きこもり)への対応(できることから、無理のない範囲で、繰り返し声をかける)、認知機能の障害への対応(情報を整理して、具体的に、短く伝える)、そして服薬の継続の支援になる。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢がいずれも実際の課題である。生命と身体の安全が最優先という原則で切る。
5分で振り返る
①壁に頭をぶつける行為は、頭部外傷と頭蓋内出血につながる生命に関わる危険。安全が最優先になる。②把握すること=いつ、どのような幻聴のときに起こるか、前駆する徴候、場所、自分で止められるか、本人の認識。③個人衛生と対人関係も課題だが、生命の危険には直結しないため優先度は下がる。④オレム・アンダーウッドのセルフケアの6領域=空気・水・食物、排泄、個人衛生、活動と休息のバランス、孤独と付き合いのバランス、安全を保つ能力。⑤各領域について援助の程度を段階的に判断する。⑥症状ではなく生活の側から患者を捉えられる点が、この枠組みの利点になる。⑦幻覚には否定も肯定もせず、本人の体験として理解し、安全を確保する。
1分チェック
- 壁に頭をぶつける行為があるときは。→ 安全を保つ能力を最優先でアセスメントする。
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