薬物血中濃度モニタリング〈TDM〉の実施が必要な薬物はどれか。2つ選べ。
公式正答:3・4
解説
薬物血中濃度モニタリング(TDM)の実施が必要な薬物を2つ選ぶ。ジギタリスと炭酸リチウムである。
この問題で問われていること
モニタリングが必要になる薬の条件を説明できるか。
しくみから理解する
血中濃度を測定して用量を調整するのは、①有効な濃度の範囲が狭く、中毒域と近い、②効果と副作用を、臨床の所見だけでは判断しにくい、③個人差が大きい、④血中濃度と効果・毒性がよく相関する、という条件を満たす薬になる。ジギタリス(ジゴキシン)と炭酸リチウムは、いずれもこれに当てはまる。ジゴキシンの中毒では、悪心・嘔吐、食欲不振、視覚の異常(黄視、光がにじむ)、徐脈、そして不整脈が現れる。リチウムの中毒では、振戦、下痢、嘔吐、運動失調、傾眠、そして重症ではけいれんと意識障害をきたす。
選択肢ごとの確認
ヘパリンは、血中濃度ではなく、凝固の検査値(活性化部分トロンボプラスチン時間)で効果を評価する。作用そのものを測る指標があるため、濃度の測定は不要になる。低分子ヘパリンでは、抗第Ⅹa因子活性を測ることがある。
インスリンも、血中濃度ではなく血糖値で効果を評価する。作用の結果が直接測れるためになる。
ニトログリセリンも、血中濃度の測定は行わない。効果は症状(胸痛の消失)と血圧で判断する。半減期が短く、経路も多様であるため、濃度の測定は実用的でない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
「作用の結果を直接測れる薬は、濃度を測らない」という視点が有効になる。ヘパリンは凝固の検査、インスリンは血糖、ニトログリセリンは症状と血圧で評価できる。一方、ジゴキシンとリチウムは、効きすぎているかどうかを、症状が出るまで判断しにくいため、濃度を測る必要がある。対象となる薬の代表を覚えておく。
理解を深める
治療薬物モニタリングの実際を整理する。主な対象=ジゴキシン、テオフィリン、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、炭酸リチウム、バンコマイシン、アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン、アミカシン)、免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン)、そしてメトトレキサート(大量療法)。採血の時点=トラフ値(次回投与の直前の最低値)を測るものが多い。タクロリムスはトラフ値で管理する。バンコマイシンは、重篤なメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症について、曝露量(AUC)にもとづく設計と監視が国内の指針で推奨されており、トラフ値のみによる管理は改められた。実際の採血は、AUCを推定するためにトラフ値と、必要に応じてピーク値を測る形で行う。アミノグリコシド系でも、ピーク値とトラフ値の両方を測ることがある。採血の時間を守らなければ、値の解釈ができないため、記録と連携が重要になる。中毒を招く要因=腎機能と肝機能の低下、脱水、電解質の異常(ジゴキシンでは低カリウム血症が中毒を起こしやすくする)、相互作用のある薬剤の併用、高齢、そして自己判断による増量。看護=①採血の時間の厳守と、投与時刻の正確な記録、②中毒の徴候の観察、③患者への指導(症状が出たら連絡する、市販薬とサプリメントを使う前に相談する、水分を十分にとる、自己判断で増減しない)。リチウムでは、脱水、発熱、下痢、嘔吐、そして塩分の制限が血中濃度を上げるため、これらの場面では注意が要る。夏場の脱水と、非ステロイド性抗炎症薬の併用も、濃度を上げる要因になる。
間違えやすい考え方
対象の薬を2つ選ぶ型で、誤肢が作用の結果を直接測れる薬である。濃度を測る条件で切る。
5分で振り返る
①血中濃度を測るのは、有効域が狭く中毒域と近い、臨床の所見だけでは判断しにくい、個人差が大きい、濃度と効果がよく相関する薬。②ジゴキシンの中毒=悪心・嘔吐、食欲不振、視覚の異常(黄視)、徐脈、不整脈。低カリウム血症で起こりやすくなる。③リチウムの中毒=振戦、下痢、嘔吐、運動失調、傾眠、けいれん。脱水、発熱、下痢、塩分制限で濃度が上がる。④ヘパリンは活性化部分トロンボプラスチン時間、インスリンは血糖、ニトログリセリンは症状と血圧で評価する。⑤主な対象=ジゴキシン、テオフィリン、抗てんかん薬、リチウム、バンコマイシン、アミノグリコシド系、免疫抑制薬。⑥多くはトラフ値(次回投与の直前)を測る。⑦採血の時間を守らなければ値の解釈ができない。
1分チェック
- 血中濃度を測るのは。→ ジギタリスと炭酸リチウム(有効域が狭く中毒域と近い)。
この問題に対応する教材の確認中です。