次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(61歳、男性、会社員)はデスクワーク中心の仕事をしている。今朝、職場へ出勤したが、自分の机の位置や同僚の名前が分からない等の見当識障害があり、同僚に付き添われ救急外来を受診した。頭痛、嘔吐、めまいはない。現病歴:4年前に2型糖尿病〈diabetesmellitus〉と診断され、経口糖尿病薬が開始された。1年前から受type2診を自己判断で中断している。身体所見:身長170cm、体重100kg。体温38.6℃、呼吸数22/分、脈拍112/分、整、血圧108/64mmHg。対光反射(+)、瞳孔不同(-)。歩行可能。右第1趾に発赤、腫脹、異臭がある。検査所見:白血球19,200/μL、血糖904mg/dL、Na131mEq/L、K3.4mEq/L、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉9.2%、アンモニア49μg/dL、CRP22mg/dL。動脈血液ガス分析pH7.32。血漿浸透圧394mOsm/L。尿ケトン体(±)。
A さんの糖尿病足病変の悪化を防ぐ目的で看護師が行う指導で正しいのはどれ か。2つ選べ。
公式正答:1・3
解説
糖尿病足病変の悪化を防ぐ目的の指導を2つ選ぶ。「靴下を履きましょう」と「暖房器具に足を近づけないでください」である。
この問題で問われていること
神経障害による感覚の低下から、必要な指導を導けるか。
しくみから理解する
糖尿病の末梢神経障害では、足の感覚が鈍くなる。そのため、小さな傷、靴ずれ、そして熱による損傷に気づかない。靴下を履くことは、①足を保護して外傷を防ぐ、②靴との摩擦を減らす、③保温する、という3つの意味を持つ。素材は、吸湿性があり、締めつけず、縫い目が当たらないものを選び、毎日交換する。白い靴下を勧めることもあり、出血や滲出液に気づきやすくなるためになる。暖房器具に足を近づけないことも重要で、感覚が鈍いために、熱いと感じないまま低温熱傷を起こす。湯たんぽ、電気毛布、こたつ、ストーブ、そしてカイロが原因になる。
選択肢ごとの確認
足の観察は月に1回ではなく、毎日行う。傷、水疱、発赤、腫脹、色の変化、爪の状態、そして足の間の皮膚まで確認する。見えにくい部分は、鏡を使うか、家族に見てもらう。感覚が鈍いため、痛みではなく目で見て気づくことが唯一の方法になる。
痛みが出てから受診するのでは遅い。神経障害があると、傷が深くなっても痛みを感じないことがあり、痛みを待てば、感染が進み、壊疽と切断に至る。小さな傷でも、見つけた時点で受診する。
鶏眼(うおのめ)や胼胝(たこ)を自分で削ることは危険になる。深く削って傷を作り、そこから感染することがある。市販の角質を除去する薬剤も、皮膚を傷めるため用いない。医療者(医師、看護師、そして専門のフットケア外来)に処置してもらう。
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混同しやすいポイント
誤肢は、観察の頻度、受診の目安、そして自己処置という3点で誤っている。いずれも、「痛みを感じない」という神経障害の特徴を踏まえていない。健常な人の感覚を基準にすると、これらは妥当に見えるが、糖尿病の患者では通用しない。感覚が鈍いことを前提に、目で見る、毎日確認する、小さな異常でも受診する、という形に変える。
理解を深める
糖尿病足病変の予防を整理する。背景の3要素=①神経障害(感覚の低下、自律神経障害による発汗の減少と乾燥、そして運動神経の障害による足の変形)、②末梢動脈疾患(血流の低下により、傷が治りにくく、感染も広がりやすい)、③易感染性(高血糖により白血球の機能が落ちる)。この3つが重なることで、小さな傷が壊疽へ進み、下肢の切断に至る。フットケアの指導=①毎日足を観察する(鏡を使う、家族に見てもらう)、②毎日洗い、指の間まで拭いて乾かす、③保湿する(ただし指の間は避ける。湿ると白癬と浸軟を招く)、④爪はまっすぐに切り、深爪しない(角を切り落とさない=スクエアオフ)、⑤靴下を履く、⑥裸足で歩かない(屋内でも)、⑦靴は足に合うものを選び、履く前に中に異物がないか確認する、⑧新しい靴は少しずつ慣らす、⑨熱源に近づけない。湯温は温度計で確かめる(神経障害は下肢から始まるが、進行すると上肢にも及ぶため、手の感覚も当てにならないことがある。温度計がなければ、感覚の保たれた家族に確かめてもらう)、⑩鶏眼と胼胝を自分で削らない、⑪禁煙(血流をさらに悪くする)、⑫血糖の管理。定期的な観察=足背動脈と後脛骨動脈の触知、足関節上腕血圧比、モノフィラメントによる触覚の検査、そして振動覚と腱反射。看護師が行うフットケアは、傷を防ぐだけでなく、足に触れることで患者が自分の足に関心を向ける機会にもなる。
間違えやすい考え方
指導を2つ選ぶ型で、誤肢が頻度・受診の目安・自己処置で誤っている。感覚が鈍いことを前提にして切る。
5分で振り返る
①神経障害により足の感覚が鈍くなり、傷、靴ずれ、熱傷に気づかない。②靴下は、保護、摩擦の軽減、保温の3つの意味を持つ。締めつけず、縫い目が当たらないものを毎日交換する。③暖房器具(湯たんぽ、電気毛布、こたつ、ストーブ、カイロ)で低温熱傷を起こす。④足の観察は毎日行う。鏡を使い、指の間まで見る。⑤痛みを待たず、小さな傷でも見つけた時点で受診する。⑥鶏眼と胼胝を自分で削らない。市販の角質除去薬も使わない。⑦背景の3要素=神経障害、末梢動脈疾患、易感染性。爪はスクエアオフに切り、裸足で歩かない。
1分チェック
- 糖尿病足病変の予防は。→ 靴下を履く/暖房器具に足を近づけない(感覚が鈍く低温熱傷を起こす)。
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