次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(53歳、女性)は休日に公園を散歩中、階段から落ちて頭部を強打し、意識を消失した状態で病院に救急搬送された。病院到着時のAさんは開眼せず、声は発しているが理解不能である。痛み刺激には逃れようとする動作がみられる。
A さんは右側の急性硬膜外血腫〈acute epidural hematoma〉と 診断され、緊急開頭手術を受けることになった。術前のバイタルサインは、体温37.2 ℃、呼吸数14/分、脈拍74/分、整。血圧 は、搬送時の134/84 mmHg から174/66 mmHg に上昇し、痛み刺激に対する反応 が消失している。 このときのA さんの瞳孔の状態はどれか。
公式正答:1 または 3
「または」で区切った組のいずれかと一致すれば正解です。解説
右側の急性硬膜外血腫で、血圧が134/84mmHgから174/66mmHgへ上昇し、痛み刺激への反応が消失した患者の瞳孔の状態を図から選ぶ。公式正答は、採点上の取扱いにより1と3のいずれでも正解とされた。
この問題で問われていること
頭蓋内圧の亢進が進むと、瞳孔に何が起こるかを説明できるか。
しくみから理解する
血腫が増大して頭蓋内圧が上がると、脳が押されて、側頭葉の内側(鉤)がテント切痕へ入り込む(鉤ヘルニア)。ここには動眼神経が走っており、圧迫を受ける。動眼神経は、副交感神経の線維を含み、瞳孔を縮める働きを担うため、圧迫されるとその作用が失われて、患側(この事例では右)の瞳孔が散大し、対光反射が消失する。これが瞳孔不同になる。さらに進行すると、反対側の瞳孔も散大し、最終的には両側散大となって固定する。血圧の上昇と脈圧の増大(134/84から174/66へ)、そして意識レベルの低下も、頭蓋内圧の亢進を示す所見になる。
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混同しやすいポイント
「頭蓋内圧の亢進→鉤ヘルニア→動眼神経の圧迫→患側の瞳孔散大と対光反射の消失」という一本の流れで導ける。あわせて、クッシング現象(血圧の上昇と脈圧の増大、徐脈)も頭蓋内圧の亢進の徴候になる。この事例では、収縮期血圧が上がり拡張期血圧が下がって脈圧が増大しており、これに合致する。瞳孔の所見と血圧の変化は、いずれも緊急の手術を要する状態を示す。
理解を深める
頭蓋内圧亢進の理解を整理する。徴候=①頭痛(早朝に強い)、②嘔吐(噴出性、悪心を伴わないことがある)、③うっ血乳頭(眼底所見)=三徴。加えて、意識レベルの低下、瞳孔不同と対光反射の消失、クッシング現象(血圧の上昇、脈圧の増大、徐脈)、呼吸の異常(チェーン・ストークス呼吸、中枢神経性過呼吸、失調性呼吸)、そして麻痺と姿勢の異常(除皮質硬直、除脳硬直)。脳ヘルニアの型=帯状回ヘルニア、鉤ヘルニア(テント切痕ヘルニア。動眼神経の圧迫による瞳孔不同)、そして大孔ヘルニア(小脳扁桃が大孔へ嵌入し、延髄を圧迫して呼吸と循環が停止する)。対応=①緊急の画像検査と手術(血腫の除去)、②頭蓋内圧の管理(浸透圧利尿薬、頭部の30度挙上、頸部の屈曲と回旋を避ける、鎮静と鎮痛、そして換気の管理)、③二次的な損傷の防止(低血圧、低酸素、発熱、高血糖、けいれんを避ける)。急性硬膜外血腫=多くは頭蓋骨骨折に伴う中硬膜動脈の損傷による。受傷直後は意識があり、その後に意識レベルが低下する経過(意識清明期=ルシッドインターバル)をとることがあり、これが特徴になる。動脈性の出血のため急速に増大し、早期の手術で予後が良好なことが多い。看護では、意識、瞳孔、麻痺、バイタルサインを継続して観察し、変化を直ちに報告することが最も重要になる。
間違えやすい考え方
図から瞳孔を選ぶ型で、動眼神経の圧迫という機序で判断できる。図中の状態は別冊で要確認。
5分で振り返る
①頭蓋内圧の亢進により鉤ヘルニアが起こり、動眼神経が圧迫される。②動眼神経は瞳孔を縮める副交感神経の線維を含むため、圧迫されると患側の瞳孔が散大し、対光反射が消失する。③さらに進行すると両側が散大して固定する。④クッシング現象=血圧の上昇、脈圧の増大、徐脈。頭蓋内圧の亢進を示す。⑤頭蓋内圧亢進の三徴=頭痛(早朝に強い)、嘔吐、うっ血乳頭。⑥脳ヘルニアの型=帯状回、鉤(テント切痕)、大孔(延髄の圧迫で呼吸と循環が停止)。⑦急性硬膜外血腫は中硬膜動脈の損傷が多く、意識清明期を経て急速に悪化する。早期の手術で予後は良好なことが多い。
1分チェック
- 右の血腫で意識が低下したときの瞳孔は。→ 右(患側)の散大と対光反射の消失。
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