次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(53歳、女性)は休日に公園を散歩中、階段から落ちて頭部を強打し、意識を消失した状態で病院に救急搬送された。病院到着時のAさんは開眼せず、声は発しているが理解不能である。痛み刺激には逃れようとする動作がみられる。
開頭手術後2日、A さんの全身状態は良好で、硬膜外ドレーンの排液も異常所 見はなく経過している。看護師が訪室するとA さんは仰臥位で開眼し、「目が覚め たら病院にいて手術も終えていたので驚きました。今は気分もよいが、寝てばかり で背中が痛くなってきたので体勢を変えたい」と話す。 看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
開頭手術後2日、全身状態が良好で、背中の痛みのため体位を変えたいと訴える患者への対応を問う。頭側を30度挙上することである。
この問題で問われていること
頭蓋内圧の管理という観点から、体位を選べるか。
しくみから理解する
開頭手術後は、頭蓋内圧の管理が重要になる。頭側を30度程度挙上すると、頸静脈からの還流が促され、頭蓋内の静脈血が心臓へ戻りやすくなるため、頭蓋内圧が下がる。一方、挙上が大きすぎる(60度以上)と、頸部が屈曲したり、体がずり落ちて姿勢が崩れたりして、かえって静脈の還流を妨げる。また、脳灌流圧(平均動脈圧から頭蓋内圧を引いた値)が下がる危険もある。したがって、15〜30度程度の挙上が推奨される。この事例では、体位を変えたいという訴えに応えつつ、頭蓋内圧の管理も満たす選択になる。
選択肢ごとの確認
仰臥位を保持することは、訴えに応えていない。また、水平の体位では静脈の還流が促されず、頭蓋内圧の管理という点でも30度挙上に劣る。背中の痛みも続く。
頭側を60度挙上することは大きすぎる。姿勢が崩れやすく、頸部の屈曲と、体のずり落ちによる仙骨部への圧の集中を招く。頭蓋内圧の管理という点でも、30度が目安になる。
頭側を90度挙上することは、坐位に近い。同様に大きすぎ、また術後2日の患者には循環の面でも負担になる。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
「30度」という数値を、根拠とともに覚える。頸静脈からの還流を促し、かつ姿勢が崩れない角度になる。誤肢は、水平(訴えに応えない、還流を促さない)と、過度の挙上(姿勢の崩れ、灌流圧の低下)になる。あわせて、頸部を屈曲・回旋させないこと、そして頭部と体幹を一直線に保つこともポイントになる。
理解を深める
開頭術後の看護を整理する。観察=意識レベル、瞳孔と対光反射、麻痺と筋力、バイタルサイン(とくにクッシング現象)、けいれん、頭痛と嘔吐、そしてドレーンの排液の量・色・性状。硬膜外ドレーンは、血腫の再貯留を防ぐために留置され、通常は術後1〜2日で抜去される。排液が急に増える、鮮血性になる、あるいは髄液様(淡血性から透明)になる場合は報告する。体位=頭側15〜30度挙上、頸部を屈曲・回旋させない、頭部と体幹を一直線に保つ。頭蓋内圧を上げる要因を避ける=怒責(便秘の管理)、咳嗽、吸引の刺激(必要最小限に、短時間で)、発熱(脳の代謝を上げる)、低酸素と高二酸化炭素(血管を拡張させる)、疼痛と不穏、そして頸部の圧迫(気管切開のひも、頸部の屈曲)。合併症=出血、脳浮腫、感染(髄膜炎、創部)、けいれん、水頭症、髄液漏、そして深部静脈血栓症。術後の早期離床は、状態が安定していれば進めるが、頭蓋内圧の管理と、起立性の変化に注意しながら段階的に行う。回復期には、高次脳機能障害(記憶、注意、遂行機能、社会的行動)の評価と支援が課題になる。外見では分かりにくいため、家族と職場の理解を得ることも支援の一部になる。
間違えやすい考え方
体位を問う型で、誤肢が水平と過度の挙上である。頸静脈の還流を促す30度という根拠で切る。
5分で振り返る
①頭側を15〜30度挙上すると、頸静脈からの還流が促され、頭蓋内圧が下がる。②60度以上では、頸部の屈曲と姿勢の崩れにより、かえって還流を妨げ、脳灌流圧も下がる。③仰臥位(水平)では還流が促されない。④頸部を屈曲・回旋させず、頭部と体幹を一直線に保つ。⑤頭蓋内圧を上げる要因=怒責、咳嗽、吸引の刺激、発熱、低酸素と高二酸化炭素、疼痛と不穏、頸部の圧迫。⑥硬膜外ドレーンは通常1〜2日で抜去。排液が急増する、鮮血性、髄液様になれば報告する。⑦回復期には高次脳機能障害の評価と支援が課題になる。
1分チェック
- 開頭術後の体位は。→ 頭側を30度挙上(頸静脈の還流を促し頭蓋内圧を下げる)。
この問題に対応する教材の確認中です。