次の文を読み、問いに答えよ。A君(5歳)は父親(40歳)、母親(38歳)と兄(10歳)の4人家族である。A君は生後6か月のときに白血病〈leukemia〉と診断され化学療法で寛解し、退院後は幼稚園に登園していた。4歳になって再発し、兄を骨髄ドナーとした造血幹細胞移植を受けた。
A 君の造血幹細胞移植は無事に終了したが、終了後6か月で2度目の再発をし、 化学療法が行われたが寛解しなかった。医師から両親にA 君が終末期にあること、 余命2か月程度であることが伝えられた。両親は「2度目の再発と聞いて覚悟をし ていた。延命するための治療はしなくてよいと考えています。在宅療養に切り替え てA と家で過ごしたいが、できることと、できないことを教えてほしいです」と話 した。 両親への看護師の返答で適切なのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・3
解説
終末期にあり、余命2か月程度と告げられた5歳男児について、在宅療養に切り替えたいと希望する両親への返答を2つ選ぶ。「幼稚園に登園できます」と「食べ物の制限はありません」である。
この問題で問われていること
終末期における「できること」を、生活の質の観点から判断できるか。
しくみから理解する
終末期の子どもへの関わりの目標は、延命ではなく、残された時間をその子らしく過ごせるようにすることになる。幼稚園への登園は、友達と会い、遊び、日常を続けるという、子どもにとって大きな意味を持つ。体調と感染の状況に応じて、時間を短くする、人数の少ない時間帯を選ぶといった調整をすれば実現できる。食事制限は治療目標と本人の希望を踏まえて見直すが、嚥下機能、症状、代謝異常、薬剤との相互作用など安全上必要な条件は残る。食べられるものを無理のない量で楽しめるよう個別に調整する。「できないこと」ではなく「できること」を伝えることが、この場面での看護になる。
選択肢ごとの確認
「遊園地には行けません」と断定することは適切でない。体調が許すなら、外出も可能になる。移動の手段、時間の長さ、休息の場所、そして緊急時の対応を準備すれば、実現できることは多い。終末期だからといって、一律に諦めるのではなく、どうすればできるかを一緒に考える。
「自宅では痛みを和らげる治療はできません」も誤りになる。在宅でも、医療用麻薬を含む疼痛の緩和は可能になる。ただし体制が要る。小児の在宅緩和ケアに対応できる訪問診療医と訪問看護、24時間つながる連絡の体制、小児に用いる医療用麻薬を調剤できる薬局、そして急変時に受け入れる医療機関を、あらかじめ整えたうえで移行する。これらが揃えば、病院と遜色のない疼痛の緩和を自宅で続けられる。むしろ、住み慣れた自宅で過ごせることが、苦痛の緩和にもつながる。この誤解を残せば、家族は在宅療養を諦めることになる。
「お兄ちゃんとの接触をできるだけ制限してください」も適切でない。この時期に必要なのは、感染対策よりも、家族が一緒に過ごす時間になる。兄は骨髄のドナーでもあり、弟との関係は特別なものになる。基本的な感染対策(手洗い、体調が悪いときは距離をとる)を行いながら、一緒に過ごせるようにする。
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混同しやすいポイント
誤肢は、すべて「できない」「制限する」という方向になっている。終末期の看護では、この方向が最も避けるべきものになる。残された時間が限られているからこそ、制限を減らし、本人と家族が望むことを実現する方向で考える。安全と、その人らしい生活のどちらを優先するかという場面で、この時期は後者に大きく傾く。
理解を深める
小児の終末期ケアを整理する。原則=①子ども本人の意思を、年齢と発達に応じて尊重する(5歳でも、好きなこと、嫌なこと、してほしいことを表現できる)、②痛みと苦痛を確実に緩和する、③日常を続ける(遊び、学校、友達、家族との時間)、④家族全体を支える(両親、きょうだい、祖父母)、⑤どこで過ごすかを選べるようにする(病院、自宅、そして両方を行き来する形)。在宅での体制=訪問診療、訪問看護(小児に対応できる事業所)、訪問薬剤師、そして必要に応じて訪問リハビリテーションと福祉のサービス。24時間の連絡先を明確にし、急変時にどうするかを、あらかじめ家族と話し合っておく。疼痛の緩和=小児でも、医療用麻薬を用いた疼痛の管理は可能で、体重に応じて用量を決める。痛みの評価には、フェイススケール、数値評価スケール、そして行動の観察を用いる。きょうだいへの支援=この事例の兄は、ドナーであり、「自分の骨髄では治せなかった」という罪責感を抱く可能性がある。その気持ちに気づき、「あなたのせいではない」と繰り返し伝えることが必要になる。看取りの後も、家族への支援は続く。遺族へのケア(グリーフケア)、きょうだいの学校との連携、そして命日や誕生日といった節目での関わりが、家族の回復を支える。
間違えやすい考え方
返答を2つ選ぶ型で、誤肢がすべて「できない」「制限する」方向である。できることを伝える方向で切る。
5分で振り返る
①終末期の目標は延命ではなく、残された時間をその子らしく過ごせるようにすること。②幼稚園への登園は、体調と感染の状況に応じて調整すれば実現できる。友達と会い遊ぶことに大きな意味がある。③食事の制限は不要になる。好きなものを食べられる量だけ食べられることが喜びと関わりの機会になる。④外出も、移動・時間・休息・緊急時の準備をすれば可能。一律に諦めない。⑤在宅でも医療用麻薬を含む疼痛の緩和は可能。訪問診療と訪問看護で体制を整える。⑥きょうだいとの接触を制限せず、基本的な感染対策をしながら一緒に過ごせるようにする。⑦ドナーとなった兄は罪責感を抱きうる。「あなたのせいではない」と繰り返し伝える。
1分チェック
- 終末期の在宅療養では。→ 幼稚園に登園できる/食べ物の制限はない(できることを伝える)。
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