次の文を読み、問いに答えよ。A君(5歳)は父親(40歳)、母親(38歳)と兄(10歳)の4人家族である。A君は生後6か月のときに白血病〈leukemia〉と診断され化学療法で寛解し、退院後は幼稚園に登園していた。4歳になって再発し、兄を骨髄ドナーとした造血幹細胞移植を受けた。
数日後、両親から「A が亡くなることをA の兄にどのように説明したらよいで しょうか。私たちでは、うまく説明できません」と相談があった。 看護師の両親への対応で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
弟が亡くなることを兄にどう説明したらよいか分からないと相談された両親への対応を問う。「看護師も同席してお兄ちゃんに説明する機会を設けることができます」である。
この問題で問われていること
家族が困っていることに、どう応えるかを判断できるか。
しくみから理解する
両親は「私たちでは、うまく説明できません」と述べており、説明が必要だと理解したうえで、その方法に困っている。この場合、看護師が同席するという提案は、①専門的な知識をもって年齢に応じた説明ができる、②両親が言葉に詰まったときに支えられる、③兄の反応を専門職の目で捉えられる、④その後の継続的な支援につなげられる、という4つの意味で有効になる。両親に代わって説明するのではなく、一緒に伝える形をとることで、家族としての営みを保ちながら支えられる。
選択肢ごとの確認
兄が尋ねてくるのを待つことは適切でない。子どもは、家族の様子から何かが起きていると察していても、聞いてはいけないと感じて尋ねないことがある。待っているうちに時間が過ぎ、別れの準備ができないまま最期を迎えることになりかねない。
「治る」と説明することは、事実に反する。後で真実を知ったとき、大人への不信を残し、また「自分は嘘をつかれるほど信頼されていなかった」という感覚を持つことになる。子どもの年齢と理解に応じた形で、事実を伝えることが原則になる。
ドナーになった兄ががっかりするから説明しないでおく、という考え方は、兄を守っているようで、むしろ傷つける。何も知らされないまま弟が亡くなれば、混乱と、後からの深い悲しみ、そして「自分の骨髄が役に立たなかった」という罪責感を、一人で抱えることになる。説明の場を持つことで、その気持ちを受け止め、「あなたのせいではない」と伝えられる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、待つ、嘘をつく、そして隠すという3つになる。いずれも、子どもを守ろうとする気持ちから出る対応だが、結果として子どもを孤立させる。子どもは、周囲が思うよりも状況を察しており、また事実を知らされないことのほうが不安を強めることが分かっている。年齢に応じて、正直に、そして支えとともに伝えることが原則になる。
理解を深める
子どもへの死の説明を整理する。年齢による死の理解=乳幼児期(3歳頃まで)=死を分離として捉え、永続性は理解しない。幼児期(3〜6歳)=死を一時的なもの、眠りのようなものと考える。魔術的思考により「自分が悪いことをしたから」と結びつけることがある。学童期(6〜12歳)=死の不可逆性、普遍性、そして機能の停止を理解するようになる。9〜10歳頃には、ほぼ大人と同じ理解に達する。思春期以降=抽象的に、また自分自身の死としても考えるようになる。伝え方の原則=①正直に、ただし年齢に応じた言葉で、②曖昧な表現を避ける(「眠る」「いなくなる」は誤解を招く。「死ぬ」「体が動かなくなって、もう会えなくなる」と具体的に)、③「あなたのせいではない」と明確に伝える、④質問に答える、答えられないことは「分からない」と正直に言う、⑤感情を出してよいと伝える、⑥一度で終わらせず、繰り返し話せるようにする、⑦最期に会うかどうかを本人に選ばせる。上の年齢の区分は目安で、理解の進み方には幅がある。病気の家族とともに過ごした経験のある子どもでは、早く進むこともある。この事例の兄は10歳で、多くはこの頃までに死の不可逆性を理解するが、実際にこの子が何をどこまで知り、何を思っているかは、本人の言葉から確かめる。ドナーであったという特別な立場も踏まえ、罪責感への配慮がとくに必要になる。看護師は、説明の場に同席するだけでなく、その後の兄の様子を家族と共有し、学校との連携も含めて継続的に支える。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が待つ・嘘をつく・隠すである。子どもを孤立させないという原則で切る。
5分で振り返る
①両親は説明の必要を理解したうえで方法に困っている。同席の提案は、年齢に応じた説明、両親の支え、子どもの反応の把握、継続的な支援につながる。②尋ねてくるのを待つと、別れの準備ができないまま最期を迎えかねない。子どもは察していても聞けないことがある。③「治る」という嘘は、後で大人への不信を残す。④隠すことは、混乱と罪責感を一人で抱えさせる。⑤年齢による死の理解=幼児期は一時的なものと考え魔術的思考を伴う、学童期(6〜12歳)で不可逆性と普遍性を理解し、9〜10歳頃にほぼ大人と同じになる。⑥伝え方=正直に、曖昧な表現を避け、「あなたのせいではない」と明確に、繰り返し話せるようにする。⑦最期に会うかどうかは本人に選ばせる。
1分チェック
- きょうだいへの説明に困っている家族には。→ 看護師が同席して説明する場を設けると提案する。
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