次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(28歳、初産婦)は妊娠38週1日、順調な経過で経腟分娩した。産後は夫が育児休業を取得し、自宅で夫と2人で子育てをする予定である。産褥1日、バイタルサインは、体温36.7℃、脈拍70/分、整、血圧118/68mmHg、Hb12.0g/dL。子宮底は臍下2横指のところに硬く触れている。悪露は赤色で中等量、凝血の混入はない。Aさんは授乳時に後陣痛を訴えている。会陰縫合部に腫脹や発赤はなく、痛みは自制内である。尿意の自覚があり、残尿感や排尿困難感はない。
産褥5日、子宮収縮は臍恥中央、褐色悪露が少量、歩行時に会陰部痛がある。授 乳は母乳のみで行っている。A さんは「この子の世話が大変で、次の妊娠はしばら く考えられません。結婚前は経口避妊薬を服用していましたが、産後の避妊はどう したらよいか教えてください」と看護師に話した。 A さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
産褥5日、母乳のみで授乳しており、産後の避妊について尋ねた褥婦への説明を問う。「性交再開時からコンドームを使用しましょう」である。
この問題で問われていること
産後の各避妊法の適否を、時期と授乳の有無から判断できるか。
しくみから理解する
コンドームは、産後の早い時期から使用でき、授乳への影響もなく、性感染症の予防にもなるため、産後の避妊法として第一に勧められる。産後の排卵の再開は個人差が大きく、授乳をしていても排卵が起こることがある。また、月経の再開より先に排卵が起こるため、「月経が来ていないから大丈夫」とは言えない。したがって、性交を再開する時点から避妊を始める必要がある。性交の再開の時期は、産褥1か月健診で子宮の回復と会陰の治癒を確認してからが目安になる。
選択肢ごとの確認
基礎体温法は、産後には適さない。授乳による覚醒、夜間の授乳による睡眠の分断、そして排卵の再開が不安定であることから、基礎体温が安定せず、排卵の時期を推定できない。月経周期が規則的に戻ってからでなければ用いられない。
経口避妊薬(配合剤)は、産後1か月から服用できるとは言えない。エストロゲンを含む配合剤は、①血栓症のリスクが産後に高まること、②乳汁の分泌を抑える可能性があることから、授乳中は原則として避ける。授乳をしていない場合でも、血栓症のリスクを考慮して、産後21日以降(あるいは42日以降)とされる。授乳中に薬剤による避妊を希望する場合は、エストロゲンを含まない製剤が検討される。
母乳を与えている間は妊娠の心配がない、というのは誤りになる。授乳は排卵を抑える方向に働くが、確実な避妊法ではない。授乳のみで避妊効果が期待できるのは、①完全に母乳のみ、②産後6か月未満、③無月経、という3つの条件をすべて満たす場合に限られ、それでも100%ではない。3つの条件をすべて満たすものは授乳性無月経法と呼ばれ、避妊法として認められている。誤りなのは、条件を示さずに「母乳を与えている間は妊娠の心配はない」と広く保証する点になる。この事例では月経の再開の有無が不明で、条件の成立を確認できない。また、いずれかの条件が終わる時点(月経の再開、産後6か月、母乳以外を与え始めたとき)で、他の避妊法へ移る必要がある。あわせて、この方法では性感染症を防げない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、産後の身体の状態を踏まえていない選択になる。基礎体温=安定しない。経口避妊薬=血栓症と授乳への影響。授乳=確実な避妊法ではない。産後の避妊では、時期、授乳の有無、そして血栓症のリスクの3つを踏まえて選ぶ。コンドームは、これらの制約を受けないため、まず勧められる方法になる。
理解を深める
産後の家族計画を整理する。避妊法の選択=①コンドーム(産後すぐから使用でき、性感染症も予防できる。確実に使うことが前提になる)、②子宮内避妊具(産後4週以降、子宮の回復を確認してから挿入する。授乳への影響がなく、長期に有効)、③ホルモン剤(エストロゲンを含まない製剤は授乳中でも使用できる。配合剤は授乳中を避ける)、④不妊手術(母体保護法にもとづく。今後の妊娠を望まないことが明確な場合に、本人と配偶者の同意を得て行う)。説明の要点=①排卵は月経の再開より先に起こる、②授乳は確実な避妊法ではない、③性交の再開は産褥1か月健診の後を目安に、④次の妊娠までの間隔(前回の出産から18〜24か月程度あけることが、母子の健康にとって望ましいとされる)、⑤パートナーと一緒に考えることの大切さ。産後の性生活=会陰の治癒、疼痛、腟の乾燥(エストロゲンの低下による)、疲労、そして育児による余裕のなさから、再開が難しいことも多い。これは自然なことであり、無理をしないこと、潤滑剤を用いること、そしてパートナーと話し合うことを伝える。看護師から話題にすることで、相談しやすくなる。この事例のように、褥婦から質問があった場合は、正確な情報を、選択肢とともに提供する。
間違えやすい考え方
避妊法を問う型で、誤肢が産後の身体の状態を踏まえていない選択である。時期・授乳・血栓症の3点で切る。
5分で振り返る
①コンドームは産後すぐから使用でき、授乳への影響もなく、性感染症も予防できる。②排卵は月経の再開より先に起こるため、「月経が来ていないから大丈夫」とは言えない。③基礎体温法は、産後は覚醒と睡眠の分断により安定せず適さない。④エストロゲンを含む経口避妊薬は、血栓症のリスクと乳汁分泌への影響から授乳中は避ける。⑤「母乳を与えている間は妊娠しない」という広い保証は誤り。3条件(完全母乳・産後6か月未満・無月経)をすべて満たす場合に限り、授乳性無月経法として避妊効果が期待できる。いずれかの条件が終われば他の方法へ移る。性感染症は防げない。⑥子宮内避妊具は産後4週以降に挿入でき、授乳への影響がない。⑦性交の再開は産褥1か月健診で回復を確認してからが目安。次の妊娠までは18〜24か月程度あけることが望ましいとされる。
1分チェック
- 産後の避妊は。→ 性交の再開時からコンドームを使用する。
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