次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(58歳、男性)は、年金の給付を受けて生活している父親(82歳)と2人暮らしで、母親は2年前に亡くなっている。20歳のときに統合失調症schizophreniaと診断された。20歳代で何回か仕事に就いたが長続きはしなかった。40歳からは無職で、デイケアへ通所していた。1年前にデイケアを中断してからは、ほとんどの時間を自宅で過ごしているが、月1回の外来通院は継続している。Aさんが飲まなかった薬がたくさん残っていることを父親が発見し、主治医に相談した。この相談をきっかけに、週1回の精神科訪問看護を導入することになった。初回訪問時にAさんは「薬は飲み忘れたんです。心配かけてごめんなさい」と父親と訪問看護師に話した。
初回訪問から6か月、A さんの状態は安定し、デイケアへ週3回程度は通所で きるようになった。一方で、父親は「A は食事も作れないし、家のことができない ので、自分が死んだ後のことを考えると1人で生きていけるのかが心配だ。どうし たらよいか」と訪問看護師に相談した。それを聞いたA さんも「父が死んだ後の生 活が心配だ」と話した。 現時点でA さんと父親へ提案する社会資源で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
父親の死後の生活を心配する統合失調症の患者と父親へ提案する社会資源を問う。グループホーム(共同生活援助)である。
この問題で問われていること
住まいと生活の支援という課題に、対応する資源を選べるか。
しくみから理解する
共同生活援助(グループホーム)は、障害者総合支援法にもとづくサービスで、障害のある人が共同生活を営む住居において、相談、食事と入浴の介助、その他の日常生活上の援助を受けられる仕組みになる。この事例の課題は、①父親が亡くなった後の住まい、②食事と家事の支援、の2つになり、グループホームはこの両方に対応する。加えて、支援を受けながら地域で暮らす経験を、父親が元気なうちから始められる点にも意味がある。本人も「父が死んだ後の生活が心配だ」と述べており、本人の意思にも沿う。
選択肢ごとの確認
生活保護は、経済的な困窮に対する制度になる。この事例では、父親が年金を受給しており、また経済的な困窮についての記載もない。将来的に必要になる可能性はあるが、現時点で提案する資源としては課題と合わない。
地域移行支援は、障害者支援施設に入所している人、または精神科病院に入院している人が、地域での生活へ移るための支援になる。住居の確保、外出の同行、そして関係機関との調整を行う。この事例の患者は在宅で生活しており、対象に当てはまらない。
障害者権利擁護センター(都道府県障害者権利擁護センター)は、障害者虐待の防止と、養護者への支援に関する法律にもとづき設置され、虐待の通報の受理、相談、そして情報提供を行う。この事例では虐待の状況になく、課題と合わない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも実在する制度だが、対象と目的が異なる。生活保護=経済的困窮。地域移行支援=施設・病院からの移行。権利擁護センター=虐待への対応。「何に困っているか」を特定して、それに対応する資源を選ぶ、という考え方になる。この事例では、住まいと生活の支援が課題になる。
理解を深める
精神障害者の地域生活を支える資源を整理する。住まい=共同生活援助(グループホーム。世話人が配置され、日常生活の援助を受ける。介護が必要な場合は介護サービス包括型がある)、自立生活援助(一人暮らしへ移行した人への定期的な訪問と随時の対応)、宿泊型自立訓練、そして一般の賃貸住宅(居住支援法人と居住支援協議会による入居の支援)。日中の活動=生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センター、そして精神科デイケア。訪問=精神科訪問看護、居宅介護(ホームヘルプ)。相談=相談支援事業所(サービス等利用計画の作成)、基幹相談支援センター、精神保健福祉センター、保健所。金銭と権利=障害年金、生活保護、成年後見制度、日常生活自立支援事業(福祉サービスの利用の援助、日常的な金銭の管理)。「親亡き後」の課題=住まい、生活の支援、金銭の管理、そして相談できる人の確保。これらを、親が元気なうちから少しずつ整えることが重要になる。急に必要になってから動くのでは、本人の負担が大きい。この事例のように、本人と家族の双方から不安が語られた時点が、支援を始める好機になる。まずは相談支援専門員につなぎ、サービス等利用計画の中で、段階的に体制を整えていく。
間違えやすい考え方
資源を選ぶ型で、誤肢が対象と目的の異なる制度である。何に困っているかを特定して切る。
5分で振り返る
①共同生活援助(グループホーム)=障害者総合支援法にもとづき、共同生活の住居で、相談、食事と入浴の介助、日常生活上の援助を受ける。②この事例の課題(住まいと、食事・家事の支援)の両方に対応する。③父親が元気なうちから始められる点にも意味がある。④生活保護は経済的困窮への制度で、この事例の課題と合わない。⑤地域移行支援は、施設に入所中または精神科病院に入院中の人が対象。⑥障害者権利擁護センターは虐待への対応。⑦「親亡き後」の課題=住まい、生活の支援、金銭の管理、相談できる人。親が元気なうちから段階的に整える。
1分チェック
- 親亡き後の住まいと生活の支援には。→ グループホーム(共同生活援助)。
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