次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、自営業)は妻(48歳)、長男(23歳、会社員)と3人で暮らしている。3年前から歩行時のふらつきを自覚していたが、日常生活動作〈ADL〉は自立していた。最近、転倒が多くなり医療機関を受診して頭部CT検査を受けたところ、小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症〈spinocerebellardegeneration〉と診断された。Aさんは「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と看護師に質問した。
A さんから保健師に伝える内容で優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
遺伝性の脊髄小脳変性症と診断され、難病の医療費助成を申請する50歳男性が保健師に伝える内容で、優先度が高いものを問う。Aさんの経済状況である。
この問題で問われていること
申請の場面で、支援に直結する情報を選べるか。
しくみから理解する
指定難病の医療費助成では、自己負担の上限額が、患者と同一の世帯の所得に応じて階層的に定められる。したがって、経済状況を伝えることは、制度上必要であり、かつ本人の負担額に直接関わる。加えて、この患者は自営業であり、疾患の進行に伴って就労の継続が難しくなることが予想される。収入の見通し、家族の就労、そして生活費と療養費の見込みを共有することで、保健師が他の制度(障害年金、身体障害者手帳、介護保険、そして生活の支援)も含めて助言できる。したがって、この場面で最も優先度の高い情報になる。
選択肢ごとの確認
長男の仕事内容は、申請の判定に直接関わらない。ただし、同一世帯であれば所得の合算の対象になるため、世帯の構成と所得としては関係する。しかし、「仕事内容」そのものが必要なわけではない。
母親の病状の経過は、遺伝性の疾患である以上、参考にはなる。ただし、医療費助成の申請という場面で、保健師に伝える優先度としては下がる。診療の場面では、家族歴として重要な情報になる。
妹の遺伝子診断の予定は、妹自身の個人情報になる。本人の同意なく、他者が第三者へ伝えるべきものではない。遺伝情報は、極めて機微な情報であり、取り扱いには慎重さが求められる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、妹の遺伝子診断の予定は、個人情報の取り扱いという点で明確に不適切になる。他の2つは、有用な情報ではあるが、この場面(医療費助成の申請)での優先度が下がる。「その場面で、何のために、どの情報が必要か」を考えることが要点になる。
理解を深める
指定難病の医療費助成を整理する。根拠=難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法。2015年施行)。対象=指定難病(発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病で、長期の療養を必要とし、患者数が一定の人数に達せず、客観的な診断基準が確立しているもの)。2024年時点で341疾病が指定されている。認定の要件=①重症度分類等に照らして病状の程度が一定以上であること、または②軽症でも、医療費の総額が一定額を超える月が年間に一定回数以上あること(軽症高額該当)。手続き=指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、都道府県または指定都市へ申請する(保健所が窓口になることが多い)。認定されると特定医療費受給者証が交付され、指定医療機関での医療について、自己負担が2割かつ所得に応じた月額上限までとなる。加えて、難病相談支援センターによる相談、就労の支援、そして患者会の紹介が行われる。看護の役割=①制度の情報を提供し、申請の手続きを支える、②本人と家族の不安を聞く、③疾患の経過に応じて、必要な支援を見直す、④遺伝性の疾患では、遺伝カウンセリングにつなぐ。脊髄小脳変性症=小脳と脳幹の変性により、歩行の失調、構音障害、そして眼球運動の障害をきたす。進行速度、症状、必要な支援は病型と個人で大きく異なる。歩行器や車椅子などは機能評価と本人の生活目標に応じて選び、全員が同じ順序で全介助へ進むとは限らない。遺伝性のものと孤発性のものがあり、遺伝性では家族への影響も課題になる。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢に個人情報の問題を含むものがある。その場面で何のために必要かで切る。
5分で振り返る
①指定難病の医療費助成では、自己負担の上限額が世帯の所得に応じて階層的に定められる。②経済状況を伝えることは制度上必要で、負担額に直接関わる。③自営業で就労の継続が難しくなる見通しもあり、他の制度(障害年金、身体障害者手帳、介護保険)の助言にもつながる。④妹の遺伝子診断の予定は、本人の同意なく第三者へ伝えるべき情報ではない。遺伝情報は極めて機微な情報になる。⑤根拠は難病法(2015年施行)。⑥認定の要件=重症度が一定以上、または軽症高額該当。⑦指定医が作成する臨床調査個人票を添えて申請し、特定医療費受給者証が交付される。
1分チェック
- 難病の医療費助成の申請では。→ 本人の経済状況を伝える(自己負担の上限が所得により決まる)。
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