次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(50歳、男性、自営業)は妻(48歳)、長男(23歳、会社員)と3人で暮らしている。3年前から歩行時のふらつきを自覚していたが、日常生活動作〈ADL〉は自立していた。最近、転倒が多くなり医療機関を受診して頭部CT検査を受けたところ、小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症〈spinocerebellardegeneration〉と診断された。Aさんは「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と看護師に質問した。
A さんは仕事を辞め、妻が自営業を続け1年が経過した。A さんは歩行器で室 内を移動し、日中は1人で過ごしていた。転倒したことをきっかけに、訪問看護を 週1回利用することになった。初回の訪問時に、A さんは「妻が仕事を続けてくれ て感謝しています。妻に迷惑はかけられない。妻が食卓に準備してくれた昼食を食 べようと起き上がって歩行器に移ろうとしたら、立ちくらみを起こして転んでし まった」と訪問看護師に話した。 訪問看護師のA さんへの対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
脊髄小脳変性症の50歳男性が、起き上がって歩行器へ移ろうとして立ちくらみを起こし転倒した際の対応を問う。室内の移動を車椅子に変更することを提案することである。
この問題で問われていること
疾患の進行と転倒のリスクから、安全な方法を選べるか。
しくみから理解する
歩行失調、立ちくらみ、独居時間、転倒歴から再転倒リスクは高い。起立性低血圧は臥位・起立時血圧や薬剤、脱水等を評価して確認し、歩行器を継続するか車椅子を併用・変更するかは、理学療法士等による移動能力と住環境の評価、本人の希望を踏まえて決める。一律に診断や用具変更を確定しない。
選択肢ごとの確認
ベッド上で食事を摂るよう説明することは、生活の質を大きく下げる。食卓で食べることは、日常の営みとして意味があり、また座位を保つことは廃用の予防にもなる。移動の方法を変えれば、食卓での食事は続けられる。
移乗の介助を妻に依頼するよう勧めることは、この事例の状況と合わない。妻は自営業を続けており、日中は不在になる。また、この患者は「妻に迷惑はかけられない」と述べており、負担を増やす提案は受け入れられにくい。日中に一人で安全に移動できる方法を考える必要がある。
立位でのリハビリテーションを指導することは、転倒の危険を高める。起立性低血圧があり、既に転倒している状況では、まず安全を確保することが優先される。リハビリテーションは必要だが、理学療法士と相談し、安全な環境で、段階的に行う。
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混同しやすいポイント
誤肢は、生活を狭める、他者の負担を増やす、そして危険を高める、の3つになる。この設問の核心は、「安全と生活の両立」にある。危険だからと活動を制限するのではなく、方法を変えることで、安全を確保しながら生活を続けられるようにする。この考え方は、在宅看護の全体を貫く原則になる。
理解を深める
起立性低血圧と転倒の予防を整理する。起立性低血圧=起立後3分以内に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する状態。症状は、立ちくらみ、めまい、視界のかすみ、頸部と肩の痛み、そして失神。原因は、自律神経の障害(パーキンソン病、多系統萎縮症、糖尿病)、脱水、貧血、薬剤(降圧薬、利尿薬、抗うつ薬、前立腺肥大症の薬)、長期の臥床、そして加齢。対応=①ゆっくり起き上がる(臥位→坐位→立位の間に時間を置く)、②起立の前に足首を動かす、③弾性ストッキングと腹帯、④水分と塩分の摂取(心腎機能に問題がなければ)、⑤食後低血圧への注意(食後は臥床を避け、少量頻回にする)、⑥入浴時の注意(長湯を避ける、急に立たない)、⑦薬剤の見直し、⑧必要に応じた薬物療法。転倒の予防=環境(段差、じゅうたん、コード、照明、手すり、床の滑り)、履物、そして移動の手段の見直し。福祉用具=介護保険(40〜64歳でも、脊髄小脳変性症は特定疾病に含まれるため、要介護認定を受けて利用できる)による車椅子の貸与、手すり、そして住宅改修が使える。この患者は50歳で、第2号被保険者として介護保険を利用できる点も、支援の設計に関わる。
間違えやすい考え方
対応を問う型で、誤肢が生活を狭める・負担を増やす・危険を高めるものである。安全と生活の両立で切る。
5分で振り返る
①脊髄小脳変性症では、歩行の失調に加え、自律神経の障害による起立性低血圧を伴うことがある。②日中一人で、既に転倒している状況では、歩行器の継続は骨折と頭部外傷の危険が高い。③車椅子は座位で移動でき、立ちくらみによる転倒を避けられる。活動も保てる。④ベッド上での食事は生活の質を下げ、廃用も招く。⑤妻は日中不在で、本人も負担をかけたくないと述べている。⑥立位のリハビリテーションは、まず安全の確保が優先。理学療法士と相談し段階的に行う。⑦脊髄小脳変性症は介護保険の特定疾病に含まれ、40〜64歳でも要介護認定を受けて福祉用具と住宅改修を利用できる。
1分チェック
- 起立性低血圧で転倒したら。→ 移動の方法を車椅子に変える(安全を確保しつつ生活を続ける)。
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