次の文を読み、問いに答えよ。午前10時、A県内で大規模災害が発生した。A県内の救命救急センターに、家屋等の倒壊現場から救助された傷病者の受け入れ要請があり病院に搬送された。直ちにトリアージが行われた。搬送されてきたBさん(45歳、男性)には頻呼吸が認められ、胸部と背部の痛みを訴え、吸気時に胸郭が陥没し、呼気時には膨隆している。
B さんに考えられる状態はどれか。
公式正答:4
解説
災害で救助された45歳男性が、頻呼吸、胸部と背部の痛みを訴え、吸気時に胸郭が陥没し呼気時に膨隆している状態を問う。フレイルチェスト(胸壁動揺)である。
この問題で問われていること
呼吸に伴う胸郭の動きの異常から、病態を特定できるか。
しくみから理解する
通常、吸気では胸郭が広がり、呼気では戻る。フレイルチェストでは、連続する3本以上の肋骨が、それぞれ2か所以上で骨折することにより、その部分の胸壁が肋骨との連続性を失って浮遊する。その結果、吸気で胸腔内が陰圧になると、浮遊した部分だけが内側へ陥没し、呼気で陽圧になると外側へ膨隆する。この、他の部分と逆の動きを奇異呼吸(奇異性運動)という。設問文の「吸気時に胸郭が陥没し、呼気時には膨隆している」という記述が、まさにこれを示している。
選択肢ごとの確認
過換気症候群では、不安と過度の呼吸により、二酸化炭素が減って呼吸性アルカローシスをきたす。手足のしびれ、テタニー、めまい、そして胸部の不快感が生じるが、胸郭の奇異な運動はみられない。
虚血性心疾患では、胸部の圧迫感と絞扼感が主症状になる。胸郭の変形と奇異な運動は伴わない。
腰椎圧迫骨折では、腰背部の痛みが生じるが、胸郭の運動には影響しない。高齢者の骨粗鬆症を背景に、尻もちなどで生じることが多い。
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混同しやすいポイント
「吸気で陥没、呼気で膨隆」という記述が、フレイルチェストを一意に示している。誤肢は、いずれも胸部または背部の症状をきたす病態だが、胸郭の奇異な運動は伴わない。外傷の設問では、受傷の機転(家屋の倒壊による圧迫)と、身体所見を結びつけて考える。
理解を深める
胸部外傷を整理する。フレイルチェスト=連続する3本以上の肋骨が、それぞれ2か所以上で骨折して生じる。奇異呼吸により有効な換気が得られず、また多くは肺挫傷を伴うため、呼吸不全に至る。治療は、酸素投与、疼痛の管理(呼吸を妨げないため極めて重要。硬膜外麻酔や神経ブロックも用いる)、そして陽圧換気(内固定の効果もある)。重症例では観血的な固定術も行われる。緊張性気胸=胸腔内に空気が溜まり続け、縦隔が反対側へ偏位して、静脈還流が妨げられる。呼吸困難、患側の呼吸音の消失と鼓音、頸静脈の怒張、気管の偏位、そして血圧の低下(閉塞性ショック)をきたす。直ちに脱気(穿刺)が必要な、緊急の病態になる。開放性気胸では胸壁開放創を適切な通気孔付き閉鎖材で覆い、緊張性気胸への移行を監視しながら速やかに専門治療へつなぐ。三辺テーピングを状況を問わない固定手技として教えない。大量血胸=胸腔内に大量の出血が起こる。ドレナージと止血が必要になる。心タンポナーデ=心膜腔に液体が溜まり、心臓が拡張できない。ベックの三徴(血圧の低下、頸静脈の怒張、心音の減弱)。心膜穿刺を行う。これらは、外傷初期診療において、直ちに生命を脅かす病態として、最初に検索される。看護では、気道、呼吸、循環の順に評価し、異常があれば直ちに介入する。トリアージでは、呼吸の異常がある傷病者は、最優先治療群(赤)となる。
間違えやすい考え方
所見から病態を特定する型で、誤肢が胸郭の奇異な運動を伴わない病態である。呼吸に伴う動きで切る。
5分で振り返る
①フレイルチェスト=連続する3本以上の肋骨が、それぞれ2か所以上で骨折し、その部分が浮遊する状態。②吸気で陥没し、呼気で膨隆する(奇異呼吸)。他の部分と逆の動きになる。③有効な換気が得られず、多くは肺挫傷を伴い呼吸不全に至る。④治療=酸素投与、疼痛の管理(呼吸を妨げないため極めて重要)、陽圧換気、重症例では観血的固定術。⑤緊張性気胸=呼吸音の消失、鼓音、頸静脈の怒張、気管の偏位、血圧低下。直ちに脱気する。⑥心タンポナーデのベックの三徴=血圧低下、頸静脈怒張、心音の減弱。⑦外傷では気道・呼吸・循環の順に評価する。呼吸の異常は最優先治療群(赤)になる。
1分チェック
- 吸気で陥没、呼気で膨隆する胸郭は。→ フレイルチェスト(奇異呼吸)。
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